ニュース
社会 教育・オピニオン
掲載日:2017/05/25

何らかの形で無期契約にしていく企業が、通算5年を超えないようにする企業を大きく上回る~『改正労働契約法とその特例への対応状況等に関するアンケート調査』:JILPT

労働政策研究・研修機構(JILPT)では、「改正労働契約法とその特例への対応状況等に関するアンケート調査」を実施しました。このほど、調査結果がまとまりましたので公表いたします。

 

【調査結果のポイント】

<何らかの形で無期契約にしていく企業が6割前後>
フルタイム契約労働者あるいはパートタイム契約労働者を雇用している企業を対象に、無期転換ルールにどのような対応を検討しているか尋ねると 、いずれも「通算5年を超える有期契約労働者から、申込みがなされた段階で無期契約に切り換えていく」(フル35.2%、パート40.0%)がもっとも多く、これに「対応方針は未定・分からない」や「有期契約労働者の適性を見ながら、5年を超える前に無期契約にしていく」等が続いた。今回初めて、これまでより小規模な企業も含めて調査したが、何らかの形(通算5年超から+5年を超える前に+雇入れの段階から)で無期契約にしていく企業が、フルタイム契約労働者で計62.9%、パートタイム契約労働者でも計58.9%にのぼり、「有期契約が更新を含めて通算5年を超えないように運用していく」企業(フル8.5%、パート8.0%)を大きく上回った。

 

<無期転換申込権の発生に係る周知は、半数超が「行う」が「未定・分からない」も3社に1社超>
上記で「通算5年を超える有期契約労働者から、申込みがなされた段階で無期契約に切り換えていく」と回答した企業を対象に、通算勤続年数が5年を超える有期契約労働者に対して、無期契約への転換申込権が発生する旨の周知を行う予定があるか尋ねると、「行う(既に行った含む)」とする企業が半数を超えた(55.1%)。明確に「行わない」とした企業は6.8%にとどまったものの、「未定・分からない」も3社に1社超(35.1%)となった。

 

<不合理な相違の禁止ルールに伴い「既に見直した・検討している」割合は6社に1社程度>
有期・無期契約労働者間の労働条件の不合理な相違を禁止するルールに対応するため、雇用管理上、何らかの見直しを行ったか尋ねると、フルタイム契約労働者あるいはパートタイム契約労働者を雇用している企業のうち、「既に見直しを行った」割合は5.7%で、「今後の見直しを検討している」(10.3%)とあわせても6社に1社程度にとどまった。一方、「見直し予定はない(現状通りで問題ない)」とする企業(39.5%)や「見直しを行うかどうかを含めて方針未定」の企業(41.5%)が各4割程度みられ、あわせて8割を超えた。対応方針を決める上でネックになっていることとしては(複数回答)、「法の詳細(どのような労働条件の相違が不合理と認められるか等)が分からないこと」がもっとも多く(44.2%)、これに「労働条件の不合理な相違の有無の点検・精査」(40.0%)等が続いた。

※本資料は、無期転換ルールの効力が本格的に発揮されてくるであろう平成30年4月以降へ向けて、先般、発表した「インタビュー調査」結果(資料シリーズNo.195)に続き、「アンケート調査」結果についても該当部分を先行して紹介するものである。

 

○ 調査の概要

1.調査の趣旨・目的
平成25年4月より改正労働契約法が全面的に施行され、有期契約労働者が安心して働き続けられるよう、「雇止め法理」が法定化される(第19条)とともに、新たに反復更新で通算5年を超えた場合の無期契約への転換(第18条)や、有期・無期契約労働者の間の不合理な労働条件の相違の禁止(第20条)等が規定された。

その後、大学等及び研究開発法人の研究者や教員等については、無期転換申込権の発生までの期間を10年とする、特例が設けられた(平成26年4月より施行)。また、(1)高度専門職で年収が1,075万円以上の有期契約労働者や、(2)定年後、同一の使用者に継続して雇用される高齢者についても、その特性に応じた雇用管理に係る特別の措置が講じられる場合、(1)5年を超える一定の期間内に完了する業務(プロジェクト)に従事する期間(10年上限)、あるいは(2)定年後、引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権が発生しないこととする特例が設けられた(平成27年4月より施行)。

本調査は、そうした一連の労働法制の見直しに対する企業の対応状況を明らかにするため、厚生労働省労働基準局の要請に基づき実施したものである。

また今後、通算5年を超えた有期契約労働者が無期契約へ転換すること等を通じて、職務や勤務地、労働時間等を限定した無期契約労働者(いわゆる「多様な正社員」)も増加し、結果として正規―非正規の二極化の緩和や優秀な人材の定着、ワーク・ライフ・バランスの確保等に資することが期待されている。そこで、本調査では併せて、「多様な正社員」の活用状況や今後の導入ニーズ、雇用管理上の課題等についても把握した。

 

◆ 本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。

(独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/ /5月23日発表・同機構プレスリリースより転載)