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掲載日:2015/07/02

JILPT、「企業内キャリア・コンサルティングとその日本的特質
-自由記述調査およびインタビュー調査結果-」発表

最近、「日本再興戦略改訂2014-未来への挑戦-」等において、キャリア・コンサルティングの体制整備の重要性や必要性について言及がなされており、特に、企業内におけるキャリア・コンサルティングの重要性の認識が示されている。このような中、労働政策研究・研修機構では、(1)キャリア・コンサルタント43名による100,000字に及ぶ自由記述データ、(2)大企業で働くキャリア・コンサルタント(フリーのキャリア・コンサルタント含む)約20名に対するインタビュー結果を分析し、現在の日本における企業内キャリア・コンサルティングの実態、またその運営体制、および個々の従業員の支援と組織全体への支援などについてとりまとめましたので、公表いたします。

 

【調査結果のポイント】

Ⅰ 日本の企業内キャリア・コンサルティングの展開は目覚ましく、広がりと深まりを見せていた。特に、この20年で、企業内キャリア・コンサルティングのノウハウは蓄積され、組織内における役割や機能が明確化している。具体的には、(a)リテンション機能、(b)関係調整・対話促進機能、(c)意味付与・価値提供機能といった日本型とも言うべき特徴がみられた。

Ⅱ 企業内キャリア・コンサルティングの運営と体制については、現在、人事部門や他の様々な従業員支援の部門と連携して従業員サービスを提供している例が多い。また、キャリア研修その他のキャリア形成支援施策と密接に連携させて相談を行っている場合が多い。さらに「上司部下の関係調整→組織開発」も重要な仕事となっていた。

Ⅲ 企業内キャリア・コンサルティングによる個々の従業員(クライエント)への対応も収斂している。相談内容としては、おおむね、(a)異動や昇進に伴う仕事内容の変化、(b)モチベーションの低下、(c)キャリアアップ、(d)時短勤務・有期契約で働く女性の問題、(e)メンタルヘルスと関連するキャリア問題、(f)その他があり、相談の過程としては、(a)導入段階(聴く、質問する)、(b)整理段階(整理する、説明する、リファーする)、(c)展開段階(確認する、掘り下げる、働きかける)といったプロセスがある。

Ⅳ 企業内キャリア・コンサルティングの「組織開発」に対する効果は、おおむね、個々の職場内のインフォーマルな関係構築から組織適応・組織定着、上司部下の関係調整、経営層への情報提供と進む。キャリア・コンサルティングの導入当初は、個別面談のみが行われるが、個人の支援のために上司との関係改善の必要性が認識される。さらに、職場や組織全体の影響も見えてくる。結果的に、支援や介入の対象は、導入時から次第にレベルをより上位へと組織の中心へとシフトさせていく。

 

◆ 本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。

(独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/ /6月18日発表・同機構プレスリリースより転載)