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掲載日:2021/09/23

『日本企業の経営課題2021』 調査結果速報【第2弾】
新型コロナ感染拡大における事業や働き方への影響

新型コロナ感染拡大でビジネスモデルや事業形態を変更した企業が5割超「ストレスを抱える社員が増えた」「人材育成がしにくくなった」が半数近く

一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、企業が抱える経営課題を明らかにし、これからの経営指針となるテーマや施策の方向性を探ることを目的に、1979年から、企業経営者を対象に、「当面する企業経営課題に関する調査」を実施しています。今年は2021年7~8月に実施し、517社からの回答を得ました。
今回は第2弾として、昨年から続いている新型コロナウイルス感染拡大が事業や働き方にどのような影響を及ぼしているかについて、ご報告します。なお、KAIKA研究所所長の近田による「調査結果を受けてのコメント」(本調査のまとめ)を最後に掲載しています。

【トピック】

  1. 新型コロナ感染拡大の影響を踏まえて、ビジネスモデルや事業形態を変更した企業が5割超業種別では「宿泊・飲食・給食サービス」で8割超、「小売」「不動産」では6割を上回る
  2. 「柔軟な働き方や勤務形態の拡充」に取り組んだ企業が9割近くに達する「社内情報システムの強化・拡充」は8割以上、「営業手法の見直し」も7割以上
  3. 社員・職場への影響として、「ストレスを抱える社員が増えた」との回答が55.0%「社員同士の意思疎通が難しくなった」「人材育成がしにくくなった」も半数近くにのぼる
  4. 感染拡大収束後の在宅勤務:全体では「継続して実施」が4割、「縮小して実施」が3割大企業は「継続して実施」が51.6%、中小企業は「中止する・実施しない」が35.8% 


「2021年度(第42回)当面する企業経営課題に関する調査」概要​
調査時期 :2021年7月20日~8月20日
調査対象 :JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5,000社)
査方法 :郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)
回答数・回収率:回答数517社・回答率10.3%

<調査結果​>
1.新型コロナ感染拡大の影響を踏まえて、ビジネスモデルや事業形態を変更した企業が5割超業種別では「宿泊・飲食・給食サービス」で8割超、「小売」「不動産」では6割を上回る

  • 昨年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえて、ビジネスモデルや事業形態の変更に取り組んだかどうかを尋ねたところ、「変更した」との回答(大きく~少しの合計)が53.3%と、5割を超えました。
  • 回答数が10件以上あった業種について見ると、「宿泊・飲食・給食サービス」で8割超となり、「小売」「不動産」においても6割を上回っています。緊急事態宣言に伴う休業要請や外出自粛、在宅勤務導入によるオフィス利用の見直しの影響への対応が表れていると考えられます。


2.「柔軟な働き方や勤務形態の拡充」に取り組んだ企業が9割近くに達する
「社内情報システムの強化・拡充」は8割以上、「営業手法の見直し」も7割以上

  • 新型コロナウイルス感染拡大が事業活動に及ぼしたさまざまな影響への対応状況について尋ねたところ、「柔軟な働き方や勤務形態の拡充」に取り組んだとの回答(おおいに ~ ある程度 の合計)が9割近くに達しました。「おおいに取り組んだ」とする比率も28.4%と、突出して高くなっています。
  • 2番目に比率の高かった項目は「社内情報システムの強化・拡充」で、8割以上の企業が取り組んだと回答しています。「社内文書の電子化の推進」も73.1%となっており、多くの企業において、リモートワーク導入に伴う情報化への対応が進められた結果が表れています。
  • また、「営業手法の見直し」に取り組んだ企業も7割以上にのぼっています。オンラインミーティングツールによる商談や、ウェブセミナー等を活用した商品・サービスの紹介など、さまざまな取り組みが進んでいることがうかがえます。


3.社員・職場への影響として、「ストレスを抱える社員が増えた」との回答が55.0%
「社員同士の意思疎通が難しくなった」「人材育成がしにくくなった」も半数近くにのぼる

  • 新型コロナウイルス感染拡大が社員や職場に及ぼした影響について尋ねたところ、「ストレスを抱える社員が増えた」について、「当てはまる」との回答(非常に ~ やや の合計)が55.0%と、最も高くなっています。
  • また、「社員同士の意思疎通が難しくなった」とする比率も半数近くにのぼっているほか、「上司と部下の意思疎通が難しくなった」との回答も42.2%となっています。さらに、「人材育成がしにくくなった」についても半数近くの企業が当てはまると回答しています。
  • 一方で、「社員が時間生産性を意識して仕事をするようになった」については、「当てはまる」とする比率が12.0%と低く、逆に「当てはまらない」(まったく ~ あまり の合計)との回答が5割を超えています。
  • コロナ禍に伴うリモートワークの広がりが、社員のストレスや職場コミュニケーション、人材育成等にマイナスの影響を及ぼしていることが浮き彫りとなりました。 


4.感染拡大収束後の在宅勤務:全体では「継続して実施」が4割、「縮小して実施」が3割
大企業は「継続して実施」が51.6%、中小企業は「中止する・実施しない」が35.8%

  • 新型コロナウイルス感染拡大収束後における在宅勤務実施に関する考え方について尋ねたところ、全体では「継続して実施する」との回答が約4割となりました。「縮小して実施する」との回答も約3割ありました。
  • 従業員規模別に比較すると、大企業では、「継続して実施する」が51.6%と、5割を超えた一方、中小企業では、「中止する・実施しない」の比率が35.8%と高めになっています。
  • なお、全体での回答結果を昨年の調査(2020年7-8月実施)と比べると、「継続して実施する」が61.3%から39.8%へと大幅に減少し、「縮小して実施する」が20.7%から31.9%へ、「中止する・実施しない」が13.7%から21.3%へと増加していることが分かります。
  • 前頁の調査結果のとおり、コロナ禍に伴うリモートワークの広がりによって、社員のストレスや職場のコミュニケーション、人材育成等にマイナスの影響が及んでいることが、今後の在宅勤務実施の考え方の変化に表れているものと考えられます。


■調査結果を受けてのコメント 一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田高志

今回は、日本能率協会が毎年実施している「経営課題調査」の2021年度の調査結果速報の第2弾として、昨年から続くコロナ禍が事業活動や社員・職場にどのような影響を及ぼしているかについて、ご紹介しています。

まず、事業への影響として、コロナ禍を踏まえてビジネスモデルや事業形態を変更したという企業が5割を超えるという結果を見ることができました。昨年の調査(2020年7-8月に実施)における同様の設問において、「変更する必要がある」との回答が7割を超えていましたが、実際に多くの企業が事業形態の見直しに取り組んだことになります。変革に取り組まれた企業においては、経営者と社員が一丸となり、必死になって、危機の克服に取り組まれたことでしょう。「経営環境の変化(Change)を成長の機会(Chance)に変えよう」ということは、言うは易しではありますが、あらためて自社の存在意義を問い直し、新たな成長に結び付けられたことと思います。

また、コロナ禍が企業のさまざまな事業活動や働き方にも影響を及ぼしていることも、あらためて、確認することができました。とりわけ、在宅勤務などの柔軟な働き方の導入、それに伴う情報システムの見直しなど、リモートワークに対応した就労環境の整備に注力されたことがうかがえました。一方で、そうした働き方が、社員のストレスやコミュニケーション、人材育成等にマイナスの影響をもたらしていることも浮き彫りとなりました。

オンラインによるコミュニケーションは、相互に一方通行となりがちで、相手がどの程度理解し、納得しているかが分かりにくいという側面もあります。今回の調査では、「縮小する」も含めると、全体で7割の企業が、感染拡大収束後も在宅勤務実施を継続すると答えていますが、コミュニケーションや人材育成における問題が広がらないよう、社員や管理職層に対するケアが一層重要になるといえるでしょう。

 

◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。

(一般社団法人日本能率協会 /9月15日発表・同社プレスリリースより転載)