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人事サービス 人材育成・研修
掲載日:2024/09/27

働く人の本音調査2024:人材開発施策

会社における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、従業員規模が50名以上の会社に勤める25歳~59歳の正社員8,376名に対し、「働く人の本音調査2024」を実施し、その分析結果第3弾を公開しました。

第3回となる本調査では、会社の「人事施策(人材開発施策)」の魅力や効果に焦点を当てています。人事施策を増やすと、従業員たちは「会社は社員の成長を支援してくれている」と感じるのでしょうか。このような人事担当者であれば誰もが気になる問いに向き合い分析結果をまとめています。

【エグゼクティブサマリ】
TOPIC1:従業員に人気のある研修は社会背景と関係がある
・「個人選択型研修」や「ITスキル取得支援」などがキャリア自律の背景から人気を集める
・「ITスキル取得支援」「語学海外留学支援」は若い人ほど魅力を感じる人が多い傾向に

TOPIC2: 人事施策の希望と実態の乖離
・最も実施されている「必修研修」でも実施率は半数以下
・従業員が多い会社ほど、人事施策を積極的に実施
・人気のある人事施策を実際に取り組んでいる会社は少ない

TOPIC3:人事施策は被支援感を高める傾向にあり、その結果会社へのエンゲージメントも高まる
・人事施策を積極的に実施する会社の従業員ほど、被支援感を実感する傾向にある
・従業員の被支援感が高まると、会社へのエンゲージメントも高まる傾向にある
・希望の多い人事施策を実施すると、被支援感や会社へのエンゲージメントが高まる可能性がある

参考: パーソナリティタイプによって魅力を感じる人事施策は変わってくる
・従業員の声に耳を傾けながら、自社の施策を充実させていくことが重要

本調査では、広く社会に本データを活用いただきたく、回答ローデータおよび各種属性別集計データなどをオープンデータとして開示しています。ご希望の方は、上記調査レポートからお問い合わせください。

■調査のポイント
【TOPIC1:従業員に人気のある研修は社会背景と関係がある】

●「個人選択型研修」や「ITスキル取得支援」などがキャリア自律の背景から人気を集める
魅力的と感じる人事施策を選んでもらった結果です。最も人気があったのは、「個人選択型研修(38.1%)」で、次いで多かったのは「ITスキル取得支援(39.4%)」でした。背景として、現代の日本ではキャリア自律が急速に広まっており、自分が身につけたいスキルを選択して受講する「個人選択型研修」へのニーズが高くなっていることが考えられます。また、DXやリスキリングなどの観点から、ITスキル取得に魅力を感じる人も多いようです。

●「ITスキル取得支援」「語学海外留学支援」は若い人ほど魅力を感じる人が多い傾向に
次に、魅力的な人事施策についての年代別の結果です。このデータからは、若手が対象の「OJTリーダー制度」はもちろん、若い人ほど「ITスキル取得支援」や「語学海外留学支援」を魅力的に感じていることが分かります。人生100年時代といわれるなかで、20代、30代はITスキルや語学といった汎用的スキルを若いうちに習得することに意欲的なのかもしれません。

【TOPIC2:人事施策の希望と実態の乖離】
次に人事施策の実施率を見ていきます。人事施策の実施率は全体的に高い結果ではありませんでした。

●最も実施されている「必修研修」でも実施率は半数以下
最も実施されている階層別研修などの「必修研修」であっても、実施率は半分以下の47.3%に留まっています。続いて「OJTリーダー制度」が34.2%、「個人選択型研修」は33.1%となっており、最も少ない「語学海外留学支援」や「MBA海外留学支援」はわずか5%程度にすぎませんでした。

●従業員が多い会社ほど、人事施策を積極的に実施
次に、従業員規模別に実施率を比較したグラフです。ここから、ほとんどの施策で共通して、従業員規模が大きいほど実施率が高くなる傾向にあることが分かります。背景として、従業員が多いほど人事部の予算も大きくなることが考えられるため、当然の結果なのかもしれません。

●人気のある人事施策を実際に実施している会社は少ない
各人事施策に「魅力を感じている」と回答した人のうち、その施策が会社で実施されて“いない”人の割合です。
このデータから、最初の結果で魅力的に感じる割合が高かった「個人選択型研修」が51.4%、「ITスキル取得支援」が65.8%と、実際はどちらも会社での実施率が高くないことがわかります。

【TOPIC3:人事施策は被支援感を高める傾向にあり、その結果会社へのエンゲージメントも高まる】
次に、従業員たちが「会社は自分の成長を支援してくれている」と感じているかどうかの被支援感に注目します。

●人事施策を積極的に実施する会社の従業員ほど、被支援感を実感する傾向にある
次に、人材開発施策の10施策の実施数ごとに、「あなたの会社は、従業員の成長の支援をしてくれていますか」という問いに対し、「あてはまらない」を1点、「どちらかといえばあてはまらない」を2点、「どちらともいえない」を3点、「どちらかといえばあてはまる」を4点、「あてはまる」を5点とした回答結果の平均値グラフです。ここから分かるのは、「人事施策の実施数が多い会社の従業員ほど、会社が自分たちの成長を支援していることを実感している」ということです。

●従業員の被支援感が高まると、会社へのエンゲージメントも高まる傾向にある
被支援感に関する回答得点別に、会社へのエンゲージメントの平均値を並べたグラフです。この結果から、「会社から成長支援されていると感じている従業員ほど、会社へのエンゲージメントが高い傾向」がみえてきます。
つまり、先ほどの結果とあわせて考えると、人事施策は被支援感を高める傾向があり、被支援感が高まると、会社へのエンゲージメントも高まる傾向が想定されます。
本調査における「会社へのエンゲージメント」とは、“今の会社の理念やビジョンに共感している”“今の会社で働き続けたいと思う”“今の会社は魅力的な文化・風土を築いていくことができると思う”“今の会社は成長・発展していくことができると思う”という4つの設問に対し、「あてはまらない」を1点、「どちらかといえばあてはまらない」を2点、「どちらともいえない」を3点、「どちらかといえばあてはまる」を4点、「あてはまる」を5点とした回答の合計値です。

●希望の多い人事施策を実施すると、被支援感や会社へのエンゲージメントが高まる可能性がある
人事施策ごとに被支援感や会社へのエンゲージメントとの相関係数を算出したものです。
このグラフから「個人選択型研修(0.26、0.17)」「必須研修(0.25、0.16)」「ITスキル取得支援(0.21、0.14)」は、被支援感や会社へのエンゲージメントと相対的に関連が強いことがわかります。
特に「個人選択型研修」や「ITスキル取得支援」は、従業員人気が高く(図表1)、まだ実施していない会社も多いため(図表5)、新たに実施する上で狙い目の人事施策かもしれません。

調査担当研究員のコメント
今回の調査では、会社において働く人の能力開発を支援する、人材開発施策にスポットを当てています。現代のビジネス環境は、変化が激しく、獲得したスキルの陳腐化も早く、働く人には、新たなスキルの獲得や、継続的に学ぶ姿勢が求められるようになっています。一方で、変化の激しい環境下だからこそ、働く人だけの力で自律的にキャリアを切り拓いていくこともまた、難しくなってきていると思います。会社は働く人をどのように支援していくとよいのでしょうか。

調査で分かったことを簡単に整理します。
❶働く人にとっての魅力的な人材開発施策や会社における実施実態
・個人で主体的に選択できる研修やIT・語学等の汎用的なスキル獲得を支援する制度が人気で、若手においては特に顕著な傾向。
・一方で、会社の人材開発施策としてはあまり実施されていない現状がある。

❷人材開発施策の実施が働く人や会社に与える影響
・人材開発施策の実施数が多いほど、働く人は会社から支援されていると感じる
・会社から支援されていると感じているほど、会社へのエンゲージメントが高まる

❸年代やパーソナリティといった属性による魅力を感じやすい施策の違い
・属性の違いにより、魅力的に感じる人事施策にも違いがある

今回の調査を通じて、会社における人材開発施策は、働く人の能力開発を促進すると同時に、会社へのエンゲージメントや満足度を高めうる組織開発的な側面をもつ施策であることを再認識しました。働く個人と会社が持続的に成長をしていく上で、今後益々重要性が高まりそうです。会社は、働く個人の声に耳を傾けながら、改めて自社の人材開発施策に目を向けてみてもよいのかもしれません。個人と会社、双方がよりよい関係性を築いていくうえで、本調査が何かしらの示唆を与えられていれば幸いです。


【調査概要】
調査名:働く人の本音調査2024
調査目的:働く人の人材マネジメントに対する希望とその実態、それらとエンゲージメント・意識・特性の関係を明らかにするため
調査対象:従業員規模50名以上の企業で働いている25~59歳の正社員
・大卒もしくは大学院卒
・一部業種を除外、役員以上の役職者を除外
調査方法:インターネット調査
項目数:189問
実施時期:2024年3月19日~29日
有効回答数:スクリーニング調査:10,117名 本調査:8,376名

 

本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。

(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ/ 9月18日発表・同社プレスリリースより転載)