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掲載日:2022/12/27

新人社員の仕事に対する意識調査2022

育成の鍵は 「キャリアの見通し」 と 「自己効力感の醸成」ジョブ型雇用時代におけるZ世代の働く価値観を深掘る


株式会社日本能率協会マネジメントセンター(代表取締役社長:張士洛、東京都中央区、以下JMAM[ジェイマム])は、新入社員の意識と行動、指導者の指導と育成に関する調査報告書「イマドキ新入社員の仕事に対する意識調査2022」を公開しました。本調査は2021~2022年に入社した新入社員と、新入社員の育成に関わる上司・先輩社員の計2,300名を対象に2022年6月に実施されました。調査結果からイマドキ新入社員の育成の鍵は「キャリアの見通し」と「自己効力感の醸成」であることがわかりました。

 

《イマドキ新入社員に関する、調査結果・分析サマリー》

  • 新入社員の75%がジョブ型雇用を歓迎。希望する部署・職種で働けるかどうかが入社に影響する
  • 業務経験が不足し、キャリア形が描きづらいと感じている
  • テレワークは仕事がしやすいと感じる一方、約60%が対面でのコミュニケーションを求めている
  • 挑戦よりも失敗回避の傾向
  • 考えが合わない上司とは距離をとる
  • 仕事や職場への満足度が高い人は多くの支援者を獲得し、今後のキャリアの見通しを立てている
  • 仕事や職場への満足度が高い人は自己効力感・自己肯定感が高く、挑戦にも積極的
     

調査結果(一部抜粋)

■75%がジョブ型雇用を歓迎。希望する部署・職種で働けるかどうかが入社に影響する

近年、多くの日本企業で「ジョブ型雇用(企業があらかじめ定義した職務内容に基づいた働き方)」へ転換が進んでいます。「ジョブ型」に関する新入社員のホンネとしては、「ジョブ型への移行は歓迎である」が75%以上で、「自分が希望する部署や職種で働けるかどうかは、入社の意向に影響した」は60%以上でした。新入社員の半数以上が採用・配置・配属でジョブ型を志向していることがわかりました。
 

■【配属後の課題・不安】 業務経験が不足し、キャリア形成が描きづらい

配属1~3ヵ月後の課題・不安は「生活リズムがつかめない」が21年入社と比較して順位が大きく上昇しました(10位→1位)。2021年の順位が低いのは、配属後の時期が緊急事態宣言、まん延防止等重点措置期間にあたり、在宅勤務割合が高いことが要因の1つに挙げられます。また、コロナ禍前(2019年)と比較すると、仕事内容や業務手順が把握できていないため、業務を通じたキャリア形成や課題認識ができる状態にないことも明らかになりました。具体的には「仕事が自分にあっているか」「担当する業務の知識・手順がわからない」「何がわからないのかわからない」などの順位が上昇しています。
また、配属から6~12カ月の時期においては、コロナ禍前(2019年)と比較すると「わからないことを聞けない」など、関係性構築やキャリア形成に悩む姿が見受けられます。働く場所の自由度が増したことにより、新入社員が成長していく過程において重要な「学び」や「指導育成」の機会損失が生じて、自社や組織への適応がうまくいっていない様子がうかがえます。
 

■【Z世代の働く実態】 テレワークは仕事がしやすいと感じる一方、約60%が対面でのコミュニケーションを求めている

Z世代の働く実態としては、「仕事がしやすいのはテレワーク」という回答が年々上昇し過半数を超えた一方で、「コロナ禍以降はできる限り出社したい」「在宅勤務が増え、直接的なコミュニケーションが減ると困る」「報連相で有効なのは対面でのコミュニケーション」と回答した人が共に60%以上と、対面でのコミュニケーションの機会を求めているようです。
 

■【Z世代の成長意欲】 挑戦よりも失敗回避の傾向

Z世代の成長意欲としては、新入社員の70%が「失敗から学ぶことは多いので、恐れずに取り組むことが大切である」と回答している一方で、自身に仕事を任された際は「失敗したくないので、責任ある大きな仕事は任されたくない」と半数以上が思っています。また自身の成長については「成長のために挑戦するよりも、無理のない範囲で業務に取り組みたい」と半数以上が回答しており、挑戦よりも失敗回避の傾向が見られます。この結果はZ世代の入社が本格化し始めた2020年以降、増加傾向にあります。
 

■【新入社員による上司・先輩との関わり方】 考えが合わない上司とは距離をとる

新入社員による上司・先輩との関わり方について、新人の約60%が「叱られた後、必死で食らいつこうと思う」と考えている一方で、価値観が合わない上司・先輩に対しては約60%が「自分から歩み寄ろうとは思わない」と回答しています。
また、「仕事に行き詰った際は、その状況を察してもらい、上司・先輩から話しかけてほしい」と過半数が考えており、指導者側への期待が大きく「他者への働きかけ」は他世代よりも低い結果となりました。
 

■【仕事や職場への満足度が高い人の特徴①】 多くの支援者を獲得し、今後のキャリアの見通しを立てている

Z世代のキャリア観について、「仕事や職場への満足度が高い人(※)」を弊社独自で定義づけをおこない、その特徴を明らかにしました。その結果、 Z世代のうち「仕事や職場への満足度が高い人」はZ世代全体の回答者結果と比較して「キャリアに対する意識や行動」は最大1.4倍となり、また、「多くの支援者や人脈を獲得し、自律的に行動できているかどうか」も20%以上高い回答割合となりました。
※仕事への取り組みや職場への満足度などを測る設問において「①今の職場では自分の持ち味を発揮できている」「②やりたい仕事に関われている」「③仕事の成果が出ている」すべてが上位回答(かなり当てはまる、当てはまる)であった者
 

■【仕事や職場への満足度が高い人の特徴②】 自己効力感・自己肯定感が高く、挑戦にも積極的

「仕事や職場への満足度が高い人」は全体と比較して、「自己効力感・自己肯定感」が30%以上、「強みの理解」が20%以上高い回答割合となりました。また、「成長し続けるために、他者からのフィードバックを求め内省している」「現在の仕事以外の領域にも挑戦し、継続的に学習している」など越境学習に関わる意識についても20%以上高い回答割合となりました。
 

調査担当員からのコメント ~ Z世代育成の4つのポイント ~

コロナ禍以降、新入社員の成長において「人間関係構築」や「今後のキャリアの見通し」といった課題が大きくなっていることが調査より明らかになりました。一方、「仕事や職場への満足度が高い人」は全体と比べ「多くの支援者を獲得し、今後のキャリアの見通しをたてている」という結果も明らかになりました。つまり、「仕事や職場の満足度が高い人」は組織に適応し、組織の中で自らの持ち味を発揮し、成果を出しているということです。
これらのことから、ジョブ型雇用時代において、今後、雇用が流動化し転職・副業(兼業)が進んだとしても、新入社員にとって、初めて入社した会社に適応し、仕事を進めるための基盤を整えていくことの重要性は変わらないといえます。
「仕事や職場への満足度が高い人」の結果から、イマドキの新入社員育成において、以下の4つのポイントが重要であると考えられます。

① 目的・目標を決める
・新入社員自身が、ありたい姿を描き、キャリアプランを設定できるような機会の創出や、支援体制の構築
・アセスメントの受検機会の提供や上司や先輩から期待する姿を共有し、新入社員自身の強みと課題を明らかにする

② 周囲のサポートを得ていく
・職場の支援者やキャリアカウンセラーを紹介するなど、新入社員自身の仕事や今後のキャリアについて相談できる状況を創出する

③ 実践的な経験から学ぶ
・現在の仕事以外の領域への挑戦を歓迎し、継続的に学習できる環境を整備する
・小さな成功体験を積ませるためにスモールステップの成長計画を立て、周囲に認めてもらえているという安心感を持たせることで自己肯定感や自己効力感を高めさせる

④ 振り返る
・設定目標の結果やプロセスを定期的に振り返る機会(場)を設定させる

これらの要素は、新入社員の成長に必要な3つの「しこう(志向・思考・試行)力」を高めながら、成功循環サイクル(経験学習サイクル)を回し続けるためにも重要です。
この成功循環サイクルを回し続けることが、「わからない」ことを先輩や上司に質問したり、キャリア形成に必要な業務経験を自ら開拓したりする成長意欲にもつながっていきます。とはいえ、これらの要素は短期間で一気に獲得できるものではありません。その実現のためにはこれまで以上に、職場ぐるみで新人・若手が育つ仕組みを構築し、段階的・継続的な成長支援策をおこなうことが求められるといえるでしょう。
 

調査概要
調査方法: インターネット調査
調査地域: 全国
有効回答: 2,300名
(2021~2022年に入社した新入社員671名、新入社員の育成に関わる上司・先輩社員1629名)
調査時期: 2022年6月

 


◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社日本能率協会マネジメントセンター/12月16日発表・同社プレスリリースより転載)