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人事サービス 人材育成・研修
掲載日:2022/02/09

2021年度 教育研修費用の実態調査

2020年度教育研修費は1人当たり2万4,841円
前年比1.1万円の減少、コロナ禍の影響大

労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、このたび「2021年度(第45回)教育研修費用の実態調査」を実施しました。本調査は1976(昭和51)年より実施しており、今回で45回目となります。

本調査は、企業の教育研修費総額と正社員1人当たりの教育研修費用を調査している。2021年度調査では、2020年度の予算と実績額、および2021年度の予算額、それを従業員数で除した1人当たり教育研修費用額を回答してもらった。それによると、2020年度の1人当たりの教育研修費用は24,841円で、前回調査に比べて10,787円、率にして30.3%減少した。1人当たり額が3万円を切ったのは、本調査では1999年以来。新型コロナウイルスの影響によるものと考えられる。

<主なポイント>
(1)教育研修費用総額と従業員1人当たりの教育研修費用

  • 教育研修費用総額の実績額は4,625万円、前回調査と比較すると、1,974万円の減少。
  • 従業員1人当たりの2020年度実績額は24,841円で、前回調査より10,787円減少。

(2)予算を策定する際の優先基準

  • 「前年度の実績額」が4割、「ゼロベース」が3割。

(3)教育予算の増減状況と今後1~3年の方向性

  • 2020/2021年度で予算額を比較した場合に、「増加」35.4%、「減少」50.3%で、3年連続して減少が増加を上回る。
  • 教育研修費用総額の今後1~3年の見込みは、「かなり増加」「やや増加」の「増加計」割合が高まる。

(4)教育研修に対する新型コロナウイルス感染拡大の影響

  • 「おおいに影響があった」78.0%、「一部影響があった」19.6%。

(5)コロナ禍での新入社員研修の実施状況

  • 新入社員研修を「実施した」95.8%、「実施を予定していたが、中止した」2.3%、「実施しなかった」1.9%。

(6)2021年度の新入社員研修の実施動向

  • 「新たな形式・内容で実施予定」36.4%、「2020年度と同じ形式・内容で実施予定」34.0%、「コロナ禍前(2019年度)の形式・内容で実施予定」が21.1%。

<調査要領>
上場企業および当社会員企業から任意に抽出した約3,000社に対して、2021年6月に調査票を郵送で依頼し、215社の回答を得た。

<教育研修費用の実態調査 結果概要>
[1]教育研修費用総額と従業員1人当たりの教育研修費用

(1)1社当たりの教育研修費用総額
1社当たりの教育研修費用総額は、2020年度は予算額6,934万円(前回調査7,737万円)、同実績額4,625万円(同6,599万円)であり、2021年度は予算額6,603万円(同7,370万円)である。いずれも前年度より減少しており、とくに2020年度実績は、1,974万円、29.9%の減少となった。

(2)従業員1人当たりの教育研修費用
従業員1人当たりの教育研修費用は、2020年度の予算額42,446円(前回調査40,636円)、同実績額24,841円(同35,628円)、2021年度予算額39,682円(同39,860円)だった。実績額でみると、前回調査から10,787円、30.3%減少した。1人当たり額が3万円を下回ったのは、本調査では1999年度実績の29,925円以来。
2020年度実績額を規模別にみると、大企業(1,000人以上)24,329円(同31,397円)、中堅企業(300~999人)24,790円(同41,278円)、中小企業(299人以下)26,583円(同40,588円)となり、いずれも減少。なかでも中堅企業の減少が大きい。また、製造・非製造業別にみると、製造業は22,933円(同24,383円)、非製造業26,585円(同42,770円)と、非製造業の減少が大きい。


[2]予算を策定する際の優先基準
教育予算を策定する際に最も優先する基準としては、「前年度の実績額」が44.1%(前回調査55.0%)で最も多かった。次いで、「毎年の必要額をゼロベースで積み上げる」が25.1%(同19.5%)、「前年度の予算額」が17.1%(同13.4%)など。規模別でみると、大企業で「毎年の必要額をゼロベースで積み上げる」(32.6%、前回20.0%)がやや多くなっている。


[3]教育予算の増減状況と今後1~3年の方向性

(1)2020年度/2021年度予算額の増減状況
各回答企業の2020年度と2021年度予算を比較してみると、予算が増加した企業は35.4%(前回調査41.9%)、減少した企業は50.3%(同45.7%)、増減なしの企業は14.4%(12.4%)と、3年連続で「減少」企業が「増加」企業を上回った。「減少」が多いのは、上記でみたように、予算策定にあたり、前年度の実績を優先しているからだと思われる。

(2)教育研修費用の今後の方向性
教育研修費用総額の今後1~3年の見通しについては、「かなり増加」が6.6%(前回4.0%)、「やや増加」が36.5%(同24.8%)に対し、「現状維持」が39.3%(同45.0%)、「やや減少」12.8%(同16.8%)、「かなり減少」4.7%(同9.4%)となっている。
これを「増加計」(「かなり増加」+「やや増加」)、「減少計」(「かなり減少」+「やや減少」)、「現状維持」の3項目にまとめたうえで前回調査を比較すると、増加計43.1%(同28.8%)、減少計17.5%(同26.2%)、現状維持39.3%(同45.0%)となり、増加傾向がみてとれた。コロナ禍により休止、あるいは延期された研修の再開や、海外派遣を含めたグローバル人材育成の再開、コロナ禍を機に導入・活用が加速したデジタル化を担う人材の育成等、積極的な教育投資がうかがえる。
 

[4]教育研修に対する新型コロナウイルス感染拡大の影響
今回の調査では、新型コロナウイルスの感染拡大が教育研修にもたらした影響について調べた。
2020年度教育研修における新型コロナウイルス感染拡大の影響については、97.6%とほぼすべての企業が「影響があった(おおいに影響あり78.0%+一部影響があった19.6%)」と回答している。規模別にみると、規模が大きいほど「おおいに影響があった」とする割合は高く、大企業87.5%、中堅企業80.5%、中小企業51.2%となっている。


[5]コロナ禍での新入社員研修の実施状況
2020年度の新入社員研修の実施状況をみると、新入社員研修を「実施した」企業は95.8%と高く、「実施を予定していたが、中止した」はわずか2.3%、「実施しなかった」1.9%だった。
次に、「実施した」企業に対して、2019年度と比べて2020年度の新入社員研修で変更した内容についてたずねた(複数回答)。それによると、「オンラインを活用した」が65.0%と最も高く、次いで「研修日数(時間)」が53.2%、「講座数」44.8%、「場所」25.6%、「時期」24.1%、「1回の参加人数」16.3%などとなっている。「変更したことはない」は10.3%だった。

[6]2021年度の新入社員研修の実施動向
最後に、2021年6月末時点での2021年度の新入社員研修の実施形態についてたずねた。
「新たな形式・内容で実施予定」36.4%、「2020年度と同じ形式・内容で実施予定」34.0%、「コロナ禍前(2019年度)の形式・内容で実施予定」が21.1%という結果だった。「新たな形式・内容」がなにを指すのかは、この調査ではたずねていないのでわからないが、「対面とオンラインのハイブリッド型」、もしくは2020年度に実施した「オンライン研修をさらに推し進める」といった意味合いがあると思われる。

※ 詳細データは 「企業と人材」2021年10月号(No1104)にて掲載しています。



本リリースに関する取材などのお問い合わせ
株式会社産労総合研究所「企業と人材」編集部 担当:伊関、片上
TEL 03(5860)9795 MAIL edt-e@sanro.co.jp

◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。

(株式会社 産労総合研究所/1月31日発表・同社プレスリリースより転載)