ハラスメントと育成キャンセルに関する意識調査
管理職の6割が陥る「育成キャンセル」の真相
若手の約8割は「率直な指導」を希望
実はズレていない「ハラスメントの境界線」と人事が打つべき3つの処方箋
企業の人材育成ソリューションを提供する株式会社ライトワークス(本社:東京都千代田区、代表取締役:江口夏郎、以下ライトワークス)は、全国の20代若手社員および30〜50代の管理職(計886名)を対象に「ハラスメントと育成キャンセルに関する意識調査」を実施しました。
調査の結果、ハラスメントを恐れて必要な指導を避けてしまう「育成キャンセル」に管理職の6割以上(61.2%)が直面している実態が判明しました。
一方で、若手社員の約8割(78.2%)は「ハラスメントに当たらない範囲での率直な指導」を求めており、両者の間でハラスメントに対する境界線(1対1での指導はOK、人前での叱責はNGなど)もほぼ共通していることが明らかになりました。
1. 調査の背景:職場で蔓延する「育成キャンセル」という静かな危機
働き方改革やハラスメント防止意識の高まりが進む中、現場の管理職は「適切な指導」と「パワハラ」の境界線に強く悩み、疲弊しています。
「厳しく指導してハラスメントだと訴えられたらどうしよう」という懸念から、管理職が部下への必要な指導やフィードバックを無意識に、あるいは意図的に避けてしまう「育成キャンセル」が職場で表面化しています。
この指導の放棄・抑止は、管理職のストレスを高めるだけでなく、若手社員の成長機会を奪い、組織全体の生産性や競争力の低下を招く重大なリスクとなっています。
2. 主な調査結果
■ 管理職の6割超が指導を躊躇・「育成キャンセル」を経験
- 過去1年間で「ハラスメントと受け取られるかもしれない」という懸念から、本来行うべき指導や注意を躊躇した経験がある管理職は63.3%に達しました。
- 部下への指導をやり過ごす「育成キャンセル」について、18.1%が「意識的に行った」、43.1%が「気づけばそうなっていた」と回答しており、6割以上の管理職が当事者となっています。
- 指導を遠慮・断念する最大の理由は「何度指導しても改善が見込めず効果がないと感じた」(55.4%)で、次いで「ハラスメントと受け取られるリスクが高いと感じた」(34.0%)となっています。
■ 若手の6割が「上司の遠慮」を察知。短期的には快適も深まる成長不安
- 若手社員の63.6%が「上司が気を遣って自分への必要な指導や厳しいアドバイスを避けている」と実感しています。
- 指導を避けられた際の心境として、若手の45.7%が「直接指導されるのが苦手なので、このままで良い」、27.9%が「ダメ出しがなくて快適」と答え、短期的には上司の「指導控え」を歓迎する傾向が見られます。
- しかし同時に、「同世代の他社メンバーと比べてスキルの差が開いてしまう」(40.3%)、「自分の改善点や弱点が客観的に把握できない」(37.2%)、「市場価値が上がらない」(28.3%)といった強い成長不安とキャリア不安を抱えています。
■ 「厳しさを拒否」ではない:若手の約8割が率直なフィードバックを希望
- 「ハラスメントに当たらない範囲での率直な指導・フィードバックを求めているか」という設問に対し、若手社員の33.8%が「積極的に求めている」、44.4%が「どちらかといえば求めている」と回答しました。
- 合計78.2%の若手社員が、成長のための率直なアドバイスや指導を本音では求めていることが判明しました。
■ ハラスメントの境界線、若手と管理職の意識差は「ほぼゼロ」
- 「1対1で落ち着いた口調で指摘する」行動に対し、若手の56.6%、管理職の58.9%が「指導の範囲」と認識しており、意識のズレはありません。
- 一方で、「人前でミスを指摘する」(若手44.1%/管理職54.1%がハラスメントと認識)や「感情的に声を荒げて怒鳴る」(若手57.6%/管理職64.4%がハラスメントと認識)といった行動は、双方ともにハラスメントと捉えています。
- 若手が拒絶しているのは指導そのものではなく、「感情的な言葉遣い」や「人前での叱責」といった「不適切な伝え方・環境」に過ぎないことが裏付けられました。
3. 人事・人材育成担当者が今すぐ打つべき3つの具体策
現場の管理職に精神論で「恐れずに指導しろ」と求めるだけでは問題は解決しません。組織として以下の環境・制度設計を急速に進めることが不可欠です。
① 実践的な「OK/NG境界線ガイドライン」の策定
抽象的なハラスメント研修ではなく、管理職の47.5%が求めている「自社の具体的業務に即した判断ガイドライン・事例集」を作成・配布します。「ここまでは指導としてOK/ここからはNG」という明確なラインと、明日から使える具体フレーズを提示することが有効です。
② 人事とは別の「第三者相談窓口・壁打ち環境」の設置
管理職の38.1%が専門相談窓口の設置・拡充を望んでいます。評価権を持つ人事部には相談しづらいため、外部の相談窓口や匿名で指導方法を壁打ちできる専用チャットツールを整え、孤立を防ぐサポートを行います。
③ 若手に「フィードバック獲得スキル」を身につけさせる
管理職が指導を躊躇する背景には「人間関係悪化への懸念」(34.8%)があります。若手に対して「自ら上司にフィードバックを求めに行く姿勢やスキル」を教育し、組織全体で「アドバイスを求めることが成長につながる」というカルチャーを人事が主導して構築していきましょう。
【調査概要】
- 調査対象(1):勤務先で「上司」の指示を受けて仕事をしている20代男女 443名
- 調査対象(2):部下の育成・指導を担当している30代〜50代男女 443名
- 調査期間:2026年6月11日〜6月15日
- 調査方法:インターネット調査(株式会社ジャストシステムへ委託)
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社ライトワークス /8月6日発表・同社プレスリリースより転載)