社会人の学習実態や企業のデジタルリスキリングの現状などに関する調査
企業の約7割がデジタル人材育成を導入、一方で参加社員は2割未満
GLOBIS 学び放題調査から見るリスキリング現状の課題と対策
株式会社グロービス(東京都千代田区、代表取締役:堀義人)が提供する定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」は、社会人の学習実態や企業のデジタルリスキリングの現状などについて調査を実施し、結果を本日発表しました。
■調査実施の背景
急速なテクノロジーの進展、DX推進の必要性や人的資本の重要性の高まりなどを受け、多くの企業にとって従業員へのリスキリングは重要課題となっています。また、個々の社会人にとっても、変化する環境の中で自身の価値を高めていくため、新たなスキルや知識の獲得が求められています。
いま、社会で働く個人は学習に対してどのような意識を持っているのか、企業はその従業員の学習に対してどのように考えているのか、その実態を明らかにするため、GLOBIS 学び放題は調査を実施しました。昨年に続き2回目となる今回の調査では、特に「学習者と非学習者の比較分析、ベテラン非管理職社員(40・50代)、デジタル人材育成」に注目し、調査を実施しました。
■調査結果
<調査結果サマリー>
①社会人の学習実態と促進要因:
社会人の約6割が学習習慣を持っていない。また、約3割は学習の必要性を感じていない。学習をしていない人(非学習層)は学習をしている人(学習実施層)に比べ「仕事やキャリアの振り返り頻度」が低い傾向がみられた。
②企業のデジタルリスキリングに関する実態:
自社でデジタル人材育成に取り組んでいると答えたのは、人事育成・研修担当者全体の68%だった。一方、デジタル人材育成研修に参加したことがある社員は、全体の17%にとどまった。
③ベテラン非管理職社員の実態:
ベテラン非管理職社員(以下、ベテラン社員)の73%は学習習慣を持っていない。管理職や若手・中堅社員と比べて、「仕事への意欲」「学習頻度」などが低く、「キャリア目標がある」と答えた人が少なかった。また、人事がベテラン社員に学んでほしいことと、ベテラン社員が学びたいことにはギャップがある。
<①社会人学習の実態と促進要因>
今回の調査対象とした20代から50代の社会人のうち、63%が「学習は行っていない」と答えました。さらに「学習の必要性を感じる」かと聞いたところ、28%は「学習を行っておらず、必要性も感じていない」ということが明らかになりました。
「学習を行っておらず、必要性も感じていない人」(学習なし・必要性認識なし層)について詳しく調べたところ、81%がキャリア目標を持っておらず、と、「学習を行っていないが、必要性は感じている人」(学習なし・必要性認識あり層)の28%に比べ、顕著に高いことがわかりました。また、学習なし・必要性認識なし層は、半数以上が仕事やキャリアの振り返りを行っていないことが明らかになりました。
回答を分析したところ、学習なし・必要性認識あり層は、学習なし・必要性認識なし層に比べ、「上司との1on1を定期的に実施している」「社内のキャリアパスが明確である」などの特徴が見られました。社内の人事制度やキャリアに関する仕組みが、個々の社員における学習の必要性の認識に影響を与えていることがわかります。
<②企業のデジタルリスキリングに関する実態>
従業員数100人以上の企業に所属する人材育成・研修担当者に聞いたところ、自社でデジタル人材育成に取り組んでいると答えたのは、68%でした。企業規模別に見ると、規模が大きいほど取り組んでいると答えた割合は高く、デジタル人材育成に積極的であることがうかがえます。
一方、自社のデジタル人材育成の研修に自主的に参加したことがある社員は、全体の17%にとどまりました。また、24%は自社でデジタル領域の研修があるかどうかわからないという答えでした。ここから、デジタル人材育成について、企業と社員の間に意識のギャップがあることがうかがえます。
<③ベテラン非管理職社員の実態>
学習の必要性を感じると答えたベテラン社員は58%と、管理職の76%、若手・中堅社員の78%と比べて、約2割少ないという結果になりました。また、実際に学習を行っている人の割合も、管理職が50%、若手・中堅社員が35%に対して、ベテラン社員は27%と低く、7割以上が学習習慣を持っていないことが明らかになりました。
さらに、ベテラン社員のうち「仕事上の課題がある」と答えた人の割合や、「キャリア目標がある」と答えた人の割合も、他の役職に比べて低いという結果になりました。
仕事上の課題があると答えたベテラン社員から、課題として最も多く挙げられたのは「論理的思考力」でした。さらに、「Excelなどのビジネスツールを使った資料作成や分析」「同僚や上司とのコミュニケーション」が続きました。一方、人事・育成担当者がベテラン社員に学んでほしいことの上位は、「マネジメント」や「部下とのコミュニケーション・部下の育成」に関するものでした。
■GLOBIS 学び放題編集長コメント
越田 愛佳 (GLOBIS 学び放題編集長 兼 学習サービス事業 統括ディレクター)
昨年度調査に続く今回は、 「学習者と非学習者の比較分析、ベテラン非管理職社員(40・50代)、デジタル人材育成」に焦点を当て、より詳細に調査を行いました。
日本において学習に取り組む社会人は、他国と比較して少ないと言われています。今回の調査でも、学習を取り組んでいない社会人が約6割という結果でした。「どうやったら社員が自律的に学ぶようになるのか?」ということは、多くの人事担当者や経営者が持つ悩みでしょう。
社員の自律的な学習を促すには、「社員が学びの必要性を感じられるようにする」「学習内容を明確にする」「 継続的に学ぶ仕掛けをつくる」という3ステップが重要であると考えます。
ただし、現在学んでいない理由、学ぶために必要なことは、社員によって大きく異なります。一律の解決策をあてはめるのではなく、自社の状況、社員のタイプを見極め、有効な施策を実行することが必要です。
社員の学習・人材育成において、近年企業は特にデジタル領域に力を入れています。一方今回の調査では、人事担当者をはじめとする企業側の意識と従業員の意識にギャップがあることが明らかになりました。また、少子高齢化に伴い労働人口におけるベテラン社員(40・50代)の構成比が高くなる中、ベテラン社員のリスキリングにも注目が集まっています。
こうした状況から、どうやって社員を巻き込み、組織として変わっていくかは、経営リーダーにとって大きな課題であると言えるでしょう。レポートでは、人材育成のポイント、実践企業の事例などを紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
■調査概要
インターネットによるアンケート調査
調査期間: 2024年4月26日~2024年4月28日
調査対象・回答人数: 20歳~59歳の正社員 (営業職、事務職など) 1032人、従業員数100名以上の企業に所属する人事・育成担当者 412人
調査エリア: 全国
調査方法: インターネットによるアンケート
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社グロービス /11月7日発表・同社プレスリリースより転載)