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人事サービス 人材育成・研修
掲載日:2023/11/13

新人・若手の早期離職に関する実態調査

企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区代表取締役社長:山崎淳以下、当社)は、入社1~3年目(大学・大学院卒のみ)の正社員・正職員として勤務する435名、直近3年以内に新入社員(正社員)の育成担当者および上司915名に対し、「新人・若手の早期離職に関する実態調査」を実施し、「仕事の価値観」や「入社後の壁と助けになる関わり」など、調査結果から見える実態について公表しました。

【エグゼクティブサマリ】

  • 入社3年目以下社員の退職理由、1位は「労働環境・条件がよくない」(25.0%)
  • 新人・若手は「プライベートの時間が確保できる、さらに充実させる」(24.4%)ためなら、仕事で労力をかけてもよいと回答
  • 入社後1年目の壁、1位は「仕事に正解がなく、どうすればよいか分からないことが多かった」 (27.1%)
  • 悩みを話しやすい上司・先輩は「仕事ができて的確なアドバイスがもらえそうな人」(30.3%)が最多 


1. 調査担当研究員のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDサービス開発部 トレーニング開発グループ
研究員 武石 美有紀

近年、あらゆる業界・規模の企業から、新人・若手に対して「早期離職」の問題を抱えているという声をよく耳にします。
今回の調査の特徴として、過去3年以内に、自己都合で退職をしたことがある割合は、17.5%で、退職の理由を見てみると、労働時間や休日の取りやすさなどを示す「労働環境・条件」が悪いという理由が上位でした。また、離職を想起した経験をきくと、過半数以上がこれまでに会社を辞めたいと思ったことがあると回答しています。その理由は、「仕事にやりがい・意義を感じない」、「自分のやりたい仕事ができない」の現業務に関する選択肢が上位を占めています。
これらの結果は、個人の仕事観として、「プライペートの充実や、自分自身のやりがいを含めた自己の幸福追求がより叶いやすい職場」を選ぶ傾向が高まっていることが背景にあると考えられます。新人・若手は、幼少期から個性ややりがい重視の教育施策を受けたり、SNSが発展し日常的にさまざまな価値観に触れたりし、多様性がかつてよりも受け入れられる環境下に置かれていると言えるでしょう。

早期離職問題は、特定の条件を整えれば改善するような問題ではなく、社会の大きな変化やその中で醸成された、個人の仕事観や人生観と密接に関係してくる問題だということが見えてきました。このような大きなテーマにいかに向き合えばよいか、それを考えた際に、早期離職のなかでも焦点を当てるべきは、本人・企業の双方にとって“もったいない離職“です。“もったいない離職”とは、今の職場にいる意味が見つかる可能性があるにもかかわらず、早期に見切りをつけた離職です。「本人側のものの見方が狭く、社内の機会を認識できていない」、「組織が、社員を生かす制度を活用できていない」、「コミュニケーションの行き違いにより、社員同士の関係が上手くいかない」などの本人・企業要因が複合的に絡み合い、“もったいない離職”が生まれやすい環境になります。

そして、“もったいない離職”を防ぐための施策としては、以下が考えられます。まず、本人側への効果的な施策は、「ものの見方が広がる経験」と「成長・貢献実感を得られる経験」を促し、やりたいこと(WILL)とできること(CAN)を生むサイクルを回す後押しをすることです。また、企業側は、日々のメンバーとの接点の中で、組織目的とメンバーの意思を接続していくような「職場でのコミュニケーション」に関する施策や、組織ぐるみの育成や手あげ式の異動制度の検討のような「制度・仕組み」に関する施策など、組織の状況に合わせ、多様な価値観に対応していける柔軟な施策を複合的に検討していくことが重要です。

2. 調査の結果
● 過去3年以内に自己都合で退職をしたことがある割合は17.5%
・過去3年以内に自己都合で退職をしたことがある割合は17.5%、ない割合は82.5%だった。

● 退職理由は「労働環境・条件がよくない」(25.0%)が最多
・先ほどの質問で「ある」と回答した方に退職理由を尋ねたところ、「労働環境・条件がよくない(労働時間、休日のとりやすさなど)」(25.0%)、 「給与水準に満足できない」(18.4%) 、「職場の人間関係がよくない、合わない」(14.5%)が上位だった。

● 会社を辞めたいと「思ったことがある」(58.8%)が「思ったことがない」(41.2%)を上回った
・離職を想起した経験について尋ねたところ、会社を辞めたいと「思ったことがある」(58.8%)が「思ったことがない」(41.2%)を上回った 。

● 会社を辞めたいと思った理由は「仕事にやりがい・意義を感じない」(27.0%)が最多
・会社を辞めたいと思った理由について尋ねたところ、「仕事にやりがい・意義を感じない」(27.0%)、「給与水準が満足できない」(19.0%)、「自分のやりたい仕事ができない」(12.8%)が上位だった。

→ 図表2の退職理由を見てみると、労働時間や休日の取りやすさなどを示す「労働環境・条件」が悪いという理由が上位だった。また、図表4の離職を想起した理由は、「仕事にやりがい・意義を感じない」という理由が上位だった。これらは、個人の仕事観として、自己実現や自己の幸福追求が、より叶いやすい組織を選ぶ傾向があることが背景にあると考えられる。

● 会社を辞めずに働き続けている理由は「転職も検討しているが、リスクもあると感じる」(21.3%)が最多
・会社を辞めずに働き続けている理由を尋ねたところ、「転職も検討しているが、リスクもあると感じる」(21.3%)、「会社がつぶれる心配がない」 (18.0%)、「転職も検討しているが、条件に合うものが見つかっていない」(14.2%)が上位だった。
・中位で「職場の人間関係がよい、合っている」(13.3%)、「一緒に働きたいと思う人がいる」(10.4%)という職場の人間関係の選択肢も選ばれている。

→ 現職に留まりながらも、現職に残る大きな理由が無かったり、在籍しながら離職を検討していたりするケースも存在すると考えられる。転職自体が当たり前の時代となり、かつオンライン面談などの手法も可能になった昨今、転職することへの心理的ハードルのみではなく、転職活動自体の物理的ハードルも下がってきていると言える。離職を踏み留まる理由として、給与や福利厚生などの制度以外の理由では、人間関係の選択率も高い。組織の人間関係を向上させることも、離職を踏み留まらせる理由になる可能性がある。

● 上司・育成担当者と比べると、新人・若手の方がプライベートを重視する傾向がある
・仕事とプライベートの理想の割合を尋ねたところ、「仕事0:プライベート10」を選択した割合は新人・若手が5.7%、上司・育成担当者が2.7%、「仕事3:プライベート7」を選択した割合は新人・若手が28.5%、上司・育成担当者が20.2%で、新人・若手の方が相対的に見るとプライベートを重視する傾向がある。
・新人・若手が、ワークライフバランスを大切にしていたとしても、それがイコール仕事にやる気がないというわけではない。いかに、プライベートも大切にしつつ、仕事も前向きに取り組めるかという観点でのフォローが重要となる。

● 労力をかけて得たいものは「プライベートの時間が確保できる、さらに充実させる」(24.4%)が最多
・労力をかけて得たいものを尋ねたところ、「プライベートの時間が確保できる、さらに充実させる」 (24.4%)、「高い収入を得る」(23.0%)、「自分のやりたいことができる」(16.8%)が上位だった。

→ 全体傾向として、新人・若手は上司・育成担当者より、ややプライベート重視であると考えられる。
また、離職を想起する理由の問いでは、「やりがい・意義」の選択率が最も高かったが、仕事の中で労力をかけて得たいものの問いでは、 「やりがい・意義」の選択率よりも「プライベートへの充実」の選択率の方が高い結果となった。この結果は、若手世代が、職場以外にもコミュニティの選択肢を多数持っているため(副業やSNSの繋がりなど)、職場に対して求めること自体が相対的に下がっていることが背景にあると考えている。仕事以外でも居場所は存在し、そこで楽しみや成長実感を味わえている可能性が高い。

● 入社後1年目の壁は「仕事に正解がなく、どうすればよいか分からないことが多かった」 (27.1%)が最多
・入社後1年目の壁について尋ねたところ、「仕事に正解がなく、どうすればよいか分からないことが多かった」(27.1%)、「与えられた仕事の意味ややりがいが感じられず、やる気が出なかった」 (21.1%)、「仕事が忙しく、プライベートに割ける時間が少なかった」(19.3%)が上位だった。

→ 入社後1年目の壁として、仕事の難しさの選択肢を選ぶ人が多かった。これは、新人・若手が、社会人になるまでに、仕事で必要なスキルを積みにくくなっていることが背景にあると予想できる。さらに、近年、VUCA的仕事環境と言われるように、仕事自体の難度も上がっている。両者のギャップが拡大したことにより、仕事をこなせるようになる難しさはかつてより上がっていると言える。

● 悩みを話しやすい上司・先輩像は「仕事ができて的確なアドバイスがもらえそうな人」(30.3%)が最多
・悩みを話しやすい上司・先輩像について尋ねたところ、「仕事ができて的確なアドバイスがもらえそうな人」(30.3%)、「普段から自分の人間性や価値観を認めてくれていると感じる人」(25.5%)、「押し付けがましくなく、自分の話や気持ちを受け止めてくれると感じる人」(24.8%)が上位だった。

→ 悩みを話しやすい上司・先輩像の上位選択肢を見ていくと、新人・若手は上司・先輩に対して、「的確なアドバイスがもらえそう」という仕事側面での頼りがいのみではなく「人間性を認めてくれる」など人の側面の信頼感も求めている傾向があった。

● 耳が痛いことを受け止められる上司・先輩像は「なぜそれが大事なのかが分かるように伝えてくれる人」(40.9%)が最多
・耳が痛いことを受け止められる上司・先輩像について尋ねたところ、「なぜそれが大事なのかが分かるように伝えてくれる人」(40.9%)、「言うことを本人が実践しており、説得力がある人」(33.6%)、「普段から自分のことをよく見てわかってくれている人」(33.2%)が上位だった。


3. 調査概要
■調査目的:新人・若手における主な離職要因や現職に留まる理由、また新人・若手に対してどのような関わりが効果的かを明らかにする。
■調査内容:
・退職経験とその理由、現職に留まる理由
・仕事の価値観
・転職の捉え方
・入社後の壁と助けになる関わり など
■調査方法:インターネット調査
■調査時期:2023年3月

【調査対象1 新人・若手】
■調査対象:
・社会人1~3年目(大学・大学院卒のみ)
・一般企業・公務員・教職員・非営利団体の正社員・正職員として勤務する者
■有効回答数:435名
■回答者の属性:
・年齢:平均25.1歳
・部門:営業系26%、企画・事務系29%、研究開発系33%、その他12%
・業種:製造業43%、非製造業57%
・企業規模:従業員1,000名未満51%、1,000名以上49%

【調査対象2 新入社員の育成担当者・上司】
■調査対象:
・直近3年以内に新入社員(正社員)の育成担当者および上司になったことがある人
・一般企業・公務員・教職員・非営利団体の正社員・正職員として勤務する者
■有効回答数:915名
■回答者の属性:
・年齢:平均46.5歳
・部門:営業系30%、企画・事務系30%、研究開発系28%、その他11%
・業種:製造業50%、非製造業50%
・企業規模:従業員1,000名未満50%、1,000名以上50%

 

◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。

(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ/ 11月8日発表・同社プレスリリースより転載)