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掲載日:2021/09/20

「地域別最低賃金」改定によるパート・アルバイトの募集時時給への影響に関する調査

最も影響を受けるのは「神奈川県」、4~7月公開求人のうち神奈川県の44.5%が改定額を下回る

総合人材情報サービスの株式会社アイデム(東京都新宿区 代表取締役社長:椛山 亮)はこの度、「地域別最低賃金」改定によるパート・アルバイトの募集時時給への影響を調査・分析し、その結果を発表しました。

本調査は、各地域の地方最低賃金審議の答申により改定が決定した2021年度の「地域別最低賃金」と、当社運営の求人メディア『イーアイデム』・採用ホームページ構築サービス『Jobギア採促』を利用して公表されたパート・アルバイトの時給データをもとに調査・分析しました。これにより、新たに設定された「地域別最低賃金」が、パート・アルバイトの募集時賃金にどの程度影響を与えるかを調べています。

※ データは2021年4月から7月までにおける当社運営の求人メディア『イーアイデム』・採用ホームページ構築サービス『Jobギア採促』のデータベースから集計。対象は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・群馬県・栃木県・静岡県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県・岡山県・福岡県の16地域 


■都道府県別集計結果
2021年4月から7月の募集時時給データのうち、令和3年度地域別最低賃金として8月20日現在各都道府県の労働局長に答申されている金額(改定額)よりも低い募集時時給データの割合(以下、改定影響率)を求めた。改定影響率が最も高い地域は神奈川県(44.5%)で、次いで千葉県(40.3%)、兵庫県(40.2%)の順となった。
東日本の集計地域では、改定影響率が4割付近となる県が多かった。群馬県をはじめ、募集時時給として設定されやすいキリの良い50の倍数をまたいだ額(850円、900円等)が改定額となる場合、影響率は高くなる傾向がある。
西日本の集計地域では、東日本の集計地域に比べれば改定影響率は低く出ているところが多い。その中でも答申額は約1,000円になる大阪府は36.3%、900円での募集ができなくなる兵庫県は40.2%となり、影響率が高い。

■業種・職種別集計結果
都道府県ごとに業種別職種別改定影響率を求めた。
業種別改定影響率が4割以上となった地域が多かったのは「小売業」(10都府県)、3割以上となった地域が多かったのは「製造業」(10都府県)と「ビル管理・警備業」(12都府県)だった。
反対に、「教育、学習支援業」では改定影響率が1割未満の地域が比較的多かった。但し地域によって影響の差が大きく、同じ業界内であっても地域差があることがわかる。「ビル管理・警備業」では1割未満となる地域はみられなかった。
職種別改定影響率が4割以上となった地域が多かったのは「販売・接客サービス」(11都府県)、3割以上となった地域が多かったのは「清掃・警備・ビルメンテナンス」(10都府県)だった。特に「販売・接客サービス」では半数の地域で改定影響率が5割以上となっており、他の職種よりも影響を受ける割合が高いようだ。
反対に、「教育・保育」では改定影響率が1割未満の地域がほとんどで、影響を受けにくいようだ。「医療・介護・福祉」でも約半数の7都府県で改定影響率が1割未満となった。「飲食・フード」、「販売・接客サービス」、「清掃・警備・ビルメンテナンス」では1割未満の地域はみられなかった。

■最低賃金引き上げによる今後の平均時給の変化
対象データのうち、令和3年度地域別最低賃金予定額未満のものを、これと同額に切上げた値を用いて平均時給を算出した(以下、切上げ平均時給)。
改定影響率が50%を超える業種・職種では、切上げ平均時給と通常の平均時給の差額が10円以上ひらくケースが多く、最低賃金改定後の平均時給が大きく上がることが予想される。一方で改定影響率が10%以下の業種・職種では、差額が0~2円程度がほとんどで、大きな変化はなさそうだ。

■政令指定都市と他地域での差
政令指定都市のある府県と東京23区・23区外(都下)で、政令指定都市と同都府県のそれ以外の地域(便宜上、以下郊外)での改定影響率を比較した。
都市側で改定影響率が低く郊外と10ポイント以上差が出たのは、東京都区、神戸市。切上げ平均時給をみると、東京都と兵庫県では郊外の平均時給が現在から10円上がる計算となっている。
同一県内で改定影響率の差があまりみられなかった地域は、埼玉県、神奈川県、京都府、岡山県、福岡県。郊外の影響率の方が低かった地域は、千葉県、静岡県、大阪府だった。
2019年に行った同様の調査では、概ね都市側の方が、影響率が低い結果となっていたが、今調査ではその傾向がある地域は少なくなっていた。今回集計した地域は、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言実施地域になる。新型コロナウイルス感染症がここ1年様々な経済活動に打撃を与えているが、感染拡大防止措置として前述のような政府主導の宣言、県単位での独自の施策が働き、営業活動を縮小せざるを得ない企業も多い。そうなると、新規求人募集は見送りないし中止することは少なくない。元々都市側は郊外側に比べ求人募集数は多く、募集時時給も高い傾向がある。しかし感染症拡大防止措置に伴う求人数の減少、求人超過から求職超過になった結果賃金の高い募集も少なくなったことが、都心と郊外の差が縮まった要因の一つと考えられる。
郊外側は都市側より人不足状態の企業も多い。感染症対策の影響は郊外の求人募集数にも現れているが、都市側ほどではない。求職超過になった状況を好機ととらえ、人材確保のために継続して募集を出す企業が減らなかったことも、郊外と都市の差をあいまいにした要因の一つと考えられる。

■地域別最低賃金が1,000円になった場合の影響
地域別最低賃金が令和3年度発効の額で1,000円未満の府県を対象に、2021年4月から7月の募集時時給データのうち、募集時の時給が1,000円よりも低い募集時時給データの割合(以下、1,000円未満率)を求めた。
1,000円未満率が最も高かったのは岡山県(81.0%)、次いで群馬県(79.9%)、茨城県(74.1%)となった。3県ともに、平均時給は他の県に比べて低い傾向がある。特に岡山県、群馬県の令和2年度地域別最低賃金は830円と、今回集計した地域の中でも低い金額で、1,000円までの差額が大きい。
反対に、1,000円未満率が最も低かったのは大阪府(38.0%)、次いで埼玉県(44.6%)、千葉県(49.7%)となった。いずれも平均時給は1,000円を超え、令和2年度の最低賃金額は900円を超えており、さらに中央最低賃金審議会からの答申で適用される目安ランクはAとなっている。

 

◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。

(株式会社アイデム/9月10日発表・同社プレスリリースより転載)