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掲載日:2020/09/02

自律的に働くことに関する実態調査

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区、代表取締役社長:藤島 敬太郎)組織行動研究所は、従業員規模300名以上の企業に正社員として勤務する一般社員と管理職435名を対象に「自律的に働くことに関する実態調査」を実施しました。

本調査では「自らのキャリアを切り拓く意識の高い人は、目の前の担当業務や職場の他者を疎かにしてでも自分を優先する」という一般的なイメージは実態と異なり、協働して仕事をしていること、また「自律」は「組織への共感・愛着」「社員の働きがい」につながること、本人の特性だけでなく、環境要因である上司・職務設計も「自律」を促す要因となっていることなど多くのことが明らかになりました。テレワーク下で社員の「自律」がより一層求められるなか、社員の「自律」を促す上司や組織の関わり方について、組織行動研究所 主任研究員 藤澤 理恵が解説、提言します。


1.調査結果のポイントと調査背景
新型コロナウイルスの流行に伴い、在宅勤務をはじめとするテレワークの導入が急速に進んでいます。ウィズ/アフターコロナ時代のあたらしい働き方が求められるなか、いま、自分の行為を主体的に規制する「自律」に注目が集まっています。組織が社員に期待しており、また社員個々人も希望する「自律的に働く」ことに関して、その実態を明らかにするため本調査を実施しました。


2.調査結果のポイント

回答者の8割が所属企業から「自律的に働くことを期待されている」と回答し、また「自分自身は自律的に働きたい」と回答している。一方で、その半数にあたる4割前後の人が、「上司や会社から、自律的に働くことを阻まれている」「周囲に、自律的に働くことを望んでいる人は少ない」と回答している。

●20代は他の年代に比較して「自律的に働きたい」とする回答が低く、「自律を求められることに、息苦しさを感じる」との回答が高い。また、20代は「きめ細かく支持をしてくれる上司」を好み、30代以降は「大きく任せてくれる上司」を好む傾向がある。

●チームや組織が良い状態となるよう行動する「自律的協働」や、自らのキャリアの為に行動する「自律的キャリア形成」よりも、日々の仕事において自らを律しながら職務を遂行する「自律的職務遂行」の方が難しいと感じる人が多い。

●「自律的キャリア形成」を平均以上に行っている人は、「自律的職務遂行」も「自律的協働」も平均以上に行っている。
⇒「キャリア自律が進むと、心が会社から離れ、協働がおろそかになるのではないか」という懸念は実態と異なる。

●「自律」の水準が高くなるほど、「ワークエンゲージメント」「組織への共感・愛着」「不測の事態における従業員の主体的活動」は増加する。
⇒「自律」は働きがいにつながる。また「自律」の水準が高い人は、「新型コロナウイルス対策に企業が直面するなかで、主体的な提案や活動が活発化」したことがわかった。

●自律に影響を与える要因として、自己決定志向、仮説思考といった本人要因だけでなく、上司の自律支援型マネジメントや他者・他部署との連携を必要とする職務設計などの環境要因が自律を促すことが明らかに。


3.調査結果を踏まえての提言:「自律」を促すために企業・人事、個人ができること
組織行動研究所 主任研究員 藤澤 理恵

<企業や人事ができる5つのこと>

■「自己決定志向」の育成
何事も自分で決めたいという「自己決定志向」は「自律的職務遂行」と「自律的キャリア形成」を促します。自己決定を尊重し見守る上司マネジメントを推進したり、主体的に行動したことで損をしたり、失敗したときに過剰に責任を問わない評価制度を整備することが大切です。

■「仮説志向」の育成
すべての「自律」を促すことが明らかになったのが、「仮説思考」です。「仮説思考」とは、実行する前に達成状態や目的を思い描いたり、うまく行かないときには前提を見直したりといった習慣を指します。自己理解やキャリア開発のようなトレーニング実施や上司との1on1ミーティングを通じて個人の「仮説思考」の習慣づくりを支援できます。

■自律支援型マネジメント
上司の「自律支援型マネジメント」がすべての「自律」を促す傾向があることがわかりました。上司は部下が自分のやり方で仕事を進めることを認めたり励ましたりすることに加え、仕事の重要さを理解させたり、必要な情報を提供したり、振り返りを支援したりといった情報提供をすることが重要です。

■自己成長や人生の充実、社会の役に立つ実感の向上
「自分の成長につながるか」、「人生の充実につながるか」、「社会の役に立つか」という行動基準・規範をもつことも、「自律」を促す要因となることがわかりました。人事や上司は、キャリア研修やコーチングなどの自己理解支援の施策によって、成長目標を具体的に描くことや、人生を充実させる指針を持つことを支援できます。また、経営理念やその先にある社会のニーズを理解できるよう、経営層が理念を語りかけたり情報を開示したりすること、従業員の社会体験を奨励することも有効です。

■他社・他部署との連携を必要とする職務設計
他者・他部署との連携を必要とする職務設計が、「自律的協働」と「自律的キャリア形成」を促すことも明らかになりました。個人に閉じた仕事として仕事や役割を与えるのでなく、協働に開いた仕事や役割であることを、事前に明示し意識づけることが重要といえます。

<個人ができる4つのこと>

■自分で決めたいという気持ちを大事にする
自分で決めたい、もっと裁量がほしいと考える気持ちは自律の原動力となります。周りの人が安心して任せてくれるよう、具体的な提案と共に周囲に伝えることが大切です。

■「仮説思考」 を伸ばす
自律的な人が皆、自己決定志向が強いわけではないことが調査で分かりました。強い意志がなくても、「仮説思考」 を伸ばすことで自律を促すことができます。目的を意識し、事前に見通しを立て、うまく行かないときには立ち止まって前提を見直す、といった仕事の進め方の習慣、つまり「仮説思考」を心がけることが自律を促すうえで有効です。

■拠り所となる「行動基準・規範」をもつ
拠り所となる「行動基準・規範」をもってこそ、「自分で」考えられるようになります。今回の調査では「自分の成長につながるか」、「人生の充実につながるか」、「社会の役に立つか」という行動基準・規範をもつことが、「自律」を促す要因となることがわかりました。時間軸を伸ばして、どのような自分に成長したいか、会社・社会の望ましい未来は何か、といったことを考えることが重要です。

■周りをよく見る
自律的な人は、周りをよく見ています。自分の仕事がどのような「他者・他部署連携」を必要とするのかを考えたり、社会や経済の動きを知り、自社や社会の課題を理解したりすることを心がけてください。

 

◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。

(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ / 9月1日発表・同社プレスリリースより転載)