ニュース
社会 行政・法律
掲載日:2017/06/02

IoT・ビッグデータ・AI等の普及・進展による雇用・労働への影響を検証~今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業(平成28年度)の報告(厚生労働省)

厚生労働省では、このたび、「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業」の報告をとりまとめましたので公表します。企業はIoT・ビッグデータ・AI等の普及・進展をどのようにとらえているのか、雇用や労働への影響はあると考えているのかについて、広く現状把握と意見聴取することを目的に本事業を行い、それらをもとに分析・検討を行いました。

厚生労働省は、本報告をホームページに公表するとともに、今後の施策に活用していきます。

 

<調査結果のポイント>(本編より抜粋)

○AI等への企業の関心の高まり
・AI等への企業の関心は高まっている。

○企業経営や雇用量への影響
・人手不足と相殺される部分があるため、全体として自社の雇用量を減らすほうに働くことが、そのまま今働いている人の雇用機会を無くすこと(失業)を意味するわけではない。
だが、AI等による省力化効果が人手不足を上回れば、失業が生じる可能性がある。
・AI等を効率・生産性の向上目的で活用するという企業で、AI等の活用は雇用量を減らすほうに働くと考える割合が高い。

[調査結果の考察]
・人手不足と相殺される部分があるため、全体の雇用量を減らすほうに働くことが、そのまま今働いている人の雇用を無くすこと(失業)を意味するわけではない。
だが、省力化が人手不足を上回れば失業が生じる可能性はある。
・AI等を効率・生産性の向上目的で活用するという企業が多いが、AI等をツールにして新しい価値を生み出す経営を行う企業が増えなくては、雇用量は増加しないことになる。

○個々の従業員への影響
・個々の従業員への影響については、AI等は担当業務の全部を代替するものではなく、業務の遂行を支援するものないし業務の一部を代替するものと考えられている。
(仕事を奪うというよりは、人手不足を緩和するもの、従業員の生産性の向上や、その人が新たな業務・役割を担う余地を生むものととらえられている。)
・インタビュー調査によれば、業務が代替された従業員については、企業は可能な限り新しい業務・役割にシフトさせるとしている(従業員は新しい業務や役割を担うことが期待されている)。
・従業員が担当する業務の内容や従業員が担う役割は大きく変わる可能性がある。

[調査結果の考察]
・大きく変わる業務や新しい役割を担うため、従業員は新たに必要となる能力を獲得する必要がある。

○部門や年齢層による影響の違い
・AI等の進展・普及の影響は部門によって異なる。AI等を効率・生産性向上の目的で活用しようという企業の割合が高い部門(総務、人事、生産、調達・仕入)で、強い影響を受けることが予想される。
・現在 40歳前後の大卒以上のホワイトカラーのうち 5割以上の人について、2030年には担当業務の一部が AI等で代替されると考えられている。

[調査結果の考察]
・強い影響を受けると予想される部門や年齢層を対象に、AI等による業務や役割の変化への対応(能.開発機会の提供等)を早急に行うことが必要となる。
・現在 40歳前後の従業員は、汎用 AIが登場するとされる 2030年においても、まだ活躍が期待される現役世代である。2030年にも十分活躍するため、個人や企業は今から備える必要がある。
・ 併せて AI等を新しい価値の創出につなげる人材の確保・育成に向けた対応(対策)も必要である。

○AI等の進展・普及を見据えた対応(対策)
・AI等によって業務の一部が代替された人の雇用が失われるかどうかは、能力開発機会の提供も含めた企業内での新規業務などへの移動の可能性に依存するとの指摘がある。
・AI等による業務削減や業務内容の変化などに対応するため、従業員の再教育が必要と考えている企業は多い。
・しかしながら、AI等の進展・普及を見据えた対応(対策)を講じている企業は少ない。

[調査結果の考察]
・遅かれ早かれ多くの企業が AI等の進展・普及の影響を受けることになると思われる。必要性を感じながらも対策を講じられていないことに、企業や個人はもっと危機感を持つべき。
・企業は可能な限り新しい業務・役割に従業員をシフトさせるとしているが、影響の規模やスピードに企業の対応が追いつかなければ、中長期的にみれば雇用機会が失われる可能性もある。アンケート調査でも、これまでの技術革新に比べ影響の範囲が大きいと考える企業は多く、技術革新のスピードが速いと考える企業もある。
・企業は自らの成長のため、また労働力の供給が減少する中、稀少な人材から選ばれる企業となるためにも、AI等への投資を行い、新しい価値の創出のため AI等を活用していく必要がある。

 

全体版(PDF:7,882KB)

本編(PDF:1,859KB)
実態調査編(PDF:6,280KB)
資料編(PDF:863KB)

 

【照会先】
職業安定局雇用政策課
課長  蒔苗 浩司
中央労働市場情報官  森川 直哉
(代表電話)03(5253)1111(内線5672)
(直通電話)03(3595)3290

 

◆ 詳しくはこちらをご覧ください。

(厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp// 6月1日発表・報道発表より転載)