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掲載日:2010/09/21

マーサー、海外派遣者に関する調査結果レポート
「International Assignments Survey 2010」を発表

 

■ 企業は海外派遣者の福利厚生について、コスト削減と外部競争力のある制度の維持の両立に腐心
■ 従来の長期派遣より、スピーディーな短期派遣が増加
■ 国際間異動の理由のトップ要素は技術的専門知識
■ 多くの企業・組織はコスト管理と多様な海外派遣形態に対応するため、海外派遣規程の見直しを実施中

マーサーの最新の海外派遣者に関する調査レポートによると、グローバルで景気が後退しているにも関わらず、海外派遣者数は増加している。ただし、多くの企業は魅力的な海外派遣パッケージを維持しつつ、コスト削減のための様々な制限を海外派遣に設けている。

220社以上に及ぶあらゆる産業の多国籍企業が参加したマーサーの「International Assignments Survey 2010」の調査結果は、コストをより効果的に管理するために、組織はグローバル規模の短期派遣や現地採用、必要不可欠ではない手当の削減、といった点に 重点を置いた、より体系的な国際派遣形態を活用していることを示した。

コスト削減手段
景気が低迷する中、過去2年間で海外派遣者数は4%増加した。コストを調整するため、企業は短期派遣を増やしており、従来の長期派遣より、スピーディーな短期派遣が増加しているという結果となった。マーサーの調査によると、50%の企業が短期派遣の増加を報告しており、迅速な承認プロセスなどから、組織の目的と連携していることが分かる。結果的に、グローバルで3分の2の企業が“短期派遣規程”を作成している。

マーサーのアジア太平洋グローバル・モビリティー・リーダーのキャシー・ルースは、「グローバル経済は特にアジア太平洋のような特定の地域で緩やかな回復 基調に入りつつあるが、こと国際出向規程に関しては組織の中でコストの抑制に対する意識が依然として高い状況が続いている。マーサーの 「International Assignments Survey 2010」は、200を超えるあらゆる産業に属するグローバル企業の実態を反映しており、海外派遣形態から報酬制度、手当の取り扱いといった課題を網羅している。財務上のプレッシャーに直面している企業が、人材の引き付け・引留めを念頭に置きながら採用している取り組みの傾向などについて、鋭い洞察も含まれている。」と述べている。

さらに、派遣元からの高額な異動にコストをかける代わりに現地で採用するなど、企業はコスト削減を進めている。マーサーの調査によると、50%の企業が現地採用の海外勤務者が増加した、またはこれから増加させる予定と回答している。

マーサーのシニア・リサーチャーであるマドレーヌ・ベルジェは、「企業が海外派遣から遠ざかっているという兆候は見られなかった。むしろ、将来が海外市場にかかっている組織では、どのようにすれば海外派遣を、よりグローバル・ビジネスの目的を強化するために活用できるかを見極めようとしている。投入できる キャッシュが減少するなかで、個々の海外派遣の価値に対して、より賢明な投資を行うことへの関心が高まっている。」と述べている。

海外派遣の課題
かつてないほど、企業はコストの抑制とビジネス・ニーズへの対応の狭間で板ばさみになっている。マーサーの調査では、海外派遣の主な障害として、ほぼ同じ割合でコスト(60%)と、適切な候補者の確保(58%)が挙げられた。地域ごとに状況は若干異なっており、アメリカでは最大の障害はコストであり、一方 欧州とアジア地域の最大の障害は適切な人材の不足となっている。

さらに、人材を海外に派遣する最大の理由は、これまで通りビジネスの拡大である一方で、知識や営業実績といった別の要素がより重要になってきている。3分の2以上(68%)の企業が、海外派遣を促進させる最大の要素は現地の専門性の欠如、と回答し、59%の企業はオペレーションの業績改善、56%が新しい ビジネスの立ち上げと回答している。

マーサーのシニア・コンサルタントであるアン・ロシエ=ルノーは、「経済情勢の影響で、多くの企業は計画していた海外投資の延期を余儀なくされ、既存の海外オペレーションを強化することになった。現地の技術的専門性が不足している地域への海外派遣の割合が増加している」と述べている。

派遣ポリシー
海外派遣に係る財務費用と管理費用を考慮し、多くの組織はグローバルな派遣ポリシーの見直しを行っている。全世界の9割近い組織が、支出を抑えるために福利厚生や手当を含めた派遣ポリシーの見直しを実施しているか、もしくはこれから見直しを予定している。

全ての地域において、福利厚生(住宅、教育、および一時帰国)と手当類(生計費手当、海外派遣手当、ハードシップ手当)が、ポリシー見直しの主要な要素となっている。

さらに、組織は簡易契約を導入、厳しい管理手続きを適用し、派遣とタレント・マネジメントのリンクをより密接にし、プロセスを簡略化し、海外派遣者と組織の効果的コミュニケーションを確保している。

ベルジェ氏は「組織はコスト管理のためだけでなく、企業ポリシーに格差が目立ち始めた急成長市場に一貫性を持たせるためにも、海外派遣ポリシーの見直しを 行っている。また、ジェネレーションXのような、異なる世代に属する従業員のニーズに対応する傾向も増えており、結果として短期プロジェクトベースの単身 派遣の増加につながっている」と指摘する。

マーサーの調査によると、半数以上(56%)の企業が既婚者を家族の帯同なく長期派遣している。欧州の企業の3分の2以上(66%)が既婚の従業員を単身で派遣しており、この傾向をリードしている。

その他の主なポイント
報酬制度: 全体として、報酬制度の変更は少なかった。いくつかの企業ではコスト削減のため、派遣先のローカル報酬を導入したが、このポリシーでは海外に異動する候補 者を見つけることが困難であると判明した。更に、派遣先として報酬水準が低い国が増加しているため、このポリシーを一貫して適用することが出来ない。このような制約は、派遣期間と派遣目的別に異なるポリシーの整備が必要であることを示唆している。

住宅: 北米企業は、一定の本人負担を要求すると共に住宅手当を支給している。また、派遣元にある住宅に対するサポートも提供している。その他の地域では、派遣元の住宅費は本人が負担する代わりに、派遣先では企業が住宅費を全額負担している。その他のコスト抑制施策と同様に、企業は住宅手当の上限額および生計費手当と住宅手当による光熱費の二重払いの可能性について注意を払っている。

安全対策: 3分の1以上の企業で世界の高リスク地域への海外派遣者がおり、こういった地域へ派遣することのリスクに対する関心が高まっている。2年前の調査時には半数だったところ、今回の調査では3分の2近い企業が高リスク地域の緊急事態に備え、組織的な避難計画を整備している。

コミューター: 欧州と北米では、コミューター形式の派遣が広まっており、欧州では28%から45%に、北米では30%から35%増加している。ラテンアメリカ企業では、通勤距離の長さの問題からこのタイプの派遣は一般的ではない。

一時帰国: ほぼすべての企業が海外派遣者に派遣元までの旅費の会社負担、または経費として一時帰国の補助をしている。46%の北米企業が一時帰国中の費用を会社が負担している一方で、ほとんどの企業は支出については企業負担していない。

本リリースの詳細はこちらをご覧下さい。

マーサー ジャパン http://www.mercer.co.jp /同社プレスリリースより抜粋・9月21日