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掲載日:2024/09/04

治療と仕事の両立に関する調査

「治療と仕事の両立に関する調査」の結果を発表

企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑淳 以下、当社)は、疾病を抱え継続的に治療を行いながら仕事を継続している会社員376 名に対し、「治療と仕事の両立に関する調査」を実施し、「就業継続上の課題」や「治療と仕事を両立する上で役立っている制度や取り組み」など、調査結果から見える実態について公表しました。

なお、継続的な治療を伴う疾病については、疾病の種類、病状や治療の状況など多岐にわたりますが、今回の調査では、「反復・継続して治療が必要で、短期(数カ月程度)で治癒しない疾病」として、がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎、難病、不妊その他の身体疾患、うつ病、双極性障害、統合失調症、認知症など精神疾患を抱えながら仕事を継続している20代~50代の会社勤務社員を対象としています。

【エグゼクティブサマリ】

  • 「治療と仕事の両立にあたり重視すること」は、全体の約6割が「1.生活のために必要な収入を維持すること」「2.心身共に無理せず仕事を続けられること」と回答。ただし、治療期間1年未満群はどちらも約4割にとどまり、「仕事の関係者の理解や協力が得られること」が43.8%と最も多い。
  • 「就業継続上の課題」について、治療期間1年未満群、1年以上3年未満群のトップは「1.仕事へのモチベーションが低下している」。一方、3年以上群のトップは「6.治療費や収入の減少など金銭面の心配がある」。
  • 「治療と仕事を両立する上で役立っている制度や取り組み」について、1年未満群では「6.柔軟な休暇制度」がトップ。「1.健康重視の基本方針」も8割を超え、他群より際立って多い。1年以上3年未満群のトップは「7.主治医との連携」「11.テレワーク制度」。特に「7.主治医との連携」は他群よりも際立って多い。
  • 「両立の実現度」に強い影響を与えるのは「上司の両立支援リーダーシップ」と「職場のインクルージョン風土」。


1.調査担当のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 研究員 佐藤裕子

治療と仕事の両立の実現は、自身のキャリアを自律的に歩んでいくためのひとつのトピックです。その意味では、周囲の支援だけでなく、まず、本人の主体的な取り組みが大事になるでしょう。しかし、困難な状況にあるとき、これまでなら出来たような、周囲への働きかけや仕事のセルフコントールを行うのは、ほとんどの人にとって容易なことではありません。働く人の多くが、いずれかのタイミングで突然に疾病に見舞われ、今回の調査にあるような困難に直面する。そのようなとき、一人で抱え込まずに、時間をかけながら、本来の主体性や自律性を発揮し、新たに自分らしい働き方を選択していけるよう、会社として、上司や同僚として何ができるか、私たち皆の問題として考えていくべきことは多いと、今回の調査を通して改めて感じました。

2.調査の結果
●「治療と仕事の実現にあたり重視すること」は全体の約6割が「1.生活のために必要な収入を維持すること」「2.心身共に無理せず仕事を続けられること」と回答。ただし、治療期間1年未満群はどちらも約4割にとどまる。
・病気に罹患し治療を始めて間もない時期(1年未満)、病状の変化に応じてさまざまな治療や働き方を模索する時期(1年以上3年未満)、治療の期間が長くなり課題がさらに変化する時期(3年以上)と想定し、重視することや課題の違いや変化を検討した。
・全体の約6割が「1.生活のために必要な収入を維持すること」「2.心身共に無理せず仕事を続けられること」を選んでいる。収入と体調の維持が、同程度に特に重視されていることがわかる。
・一方、1年未満群は上記2項目の選択率は約4割にとどまり、「3.仕事の関係者の理解や協力が得られること」(43.8%)が最も多く、「4.病状に応じて、柔軟に仕事内容や働き方を調整できること」といった人間関係や業務遂行の維持が同じく約4割選ばれている。
・3年以上群は、他群に比べて「1.生活のために必要な収入を維持すること」が70.9%と高い。また、「7.職場に居場所があると感じられること」は35.5%だが、1年未満群と比べて14.7ポイント高い。

●「就業継続上の課題」について、治療期間1年未満群、1年以上3年未満群のトップは「1.仕事へのモチベーションが低下している」。一方、3年以上群のトップは「6.治療費や収入の減少など金銭面の心配がある」
・「就業継続上の課題」をどのように感じているか、治療期間別に示す。
 1年未満群、1年以上3年未満群で最も多いのは、「1.仕事へのモチベーションが低下している」で4割近くが選択した。
・1年未満群では、次いで「7.これまでどおりに仕事の成果をあげられない」「11.会社や職場に迷惑をかけるのが心苦しい」が多い。

 ⇒これまで出来ていたことが急にできなくなり、人間関係や業務遂行の面で、心苦しさや不甲斐なさを感じていることがわかる。

・1年以上3年未満群は、全体的に他群より課題の選択率が高い。「1.仕事へのモチベーションが低下している」に加えて、治療・体調面の「3.治療や通院のための時間がとりにくい」「2.体力的にきつい」の選択が35%以上と多く、「5.治療やその副反応がつらい」も他群と比べて選択率が高い。
・加えて1年未満群と同様に、「7.これまでどおりに仕事の成果を上げられない」「11.会社や職場に迷惑をかけるのが心苦しい」などの業務遂行や人間関係の課題を抱える人も多い。
・3年以上群で、最も多いのが「6.治療費や収入の減少など金銭面の心配がある」である。

 ⇒先述の「重視すること」で「1. 生活のために必要な収入を維持すること」が高かったことは、この課題との裏表であるといえるであろう。

●「制度や取り組みの有無と役立ち度」どちらも高いのは「5.長期の病気休業制度」「6.通院治療のための柔軟な休暇制度」「11.テレワーク制度」「12.フレックスタイム制度」
・厚生労働省の「事業場における治療と職業生活の両立支援のガイドライン」などを参考に会社としての制度や取り組みに関して14の施策をピックアップし、お勤めの企業で「1.現在、制度や取り組みとしてあるもの」「2.そのうち、あなたが治療と仕事を両立する上で役立っているもの」を選択してもらった。
・3割以上が「ある」と答え、比較的多くの企業で実施されているのは、「両立支援の理解促進」にあたる「1.健康重視の基本方針」「2.両立支援制度の周知」や(青で囲んだゾーン)、「両立支援制度」にあたる「5.長期の病気休業制度」「6.通院治療のための柔軟な休暇制度」、「柔軟な働き方の制度」の「11.テレワーク制度」「12.フレックスタイム制度」の6施策である。
上記のうち、「5.長期の病気休業制度」「6.通院治療のための柔軟な休暇制度」「11.テレワーク制度」「12.フレックスタイム制度」は、「役立っている」が約7割である。

 ⇒これらは広く導入されており役立ち度も高い。

・一方、その他の8施策は、導入が約2割前後とあまり高くない。しかし、そのうちの「4.支援者との交流機会」「14.みなし労働時間制度」「8.就業中の治療時間や場所の確保」「7.主治医との連携」「9.相談窓口の設置」は(緑で囲んだゾーン)、約5割が「役立っている」としている。

 ⇒今後さらに導入を促進したい施策だといえる。

●「治療と仕事を両立する上で役立っている制度や取り組み」について、1年未満群では「6.柔軟な休暇制度」がトップ。「1.健康重視の基本方針」も8割を超え、他群より際立って多い。1年以上3年未満群のトップは「7.主治医との連携」「11.テレワーク制度」。特に「7.主治医との連携」は他群よりも際立って多い
・治療と仕事を両立する上で役立っている制度や取り組みについて、治療期間別に示した。
・就業上の課題が他群より多く見られた1年以上3年未満群は、「両立支援の制度」の「7.主治医との連携」「6.通院・治療のための柔軟な休暇制度」「5.長期の病気休業制度」、「柔軟な働き方の制度」の「11.テレワーク制度」「12.フレックスタイム制度」について、役立ったと答える人が8割を超え、そのうち「7.主治医との連携」は、これらに次いで多かった「10.復職のためのリハビリ制度」とともに、他群より有意に選択率が高い。
・一方、1年未満群では「1.健康重視の基本方針」が8割にせまり、他群より多い。

 ⇒発病して初めて、通院や治療の時間を調整したり職場の理解を得たりするにあたり、会社が方針を示していることは大きな支えと感じられるのだろう。

・3年以上群は、「12.フレックスタイム制度」「11.テレワーク制度」が7割を超えた。
 ⇒しかし、他群より有意に選択が多いものはなかった。治療期間が長い場合により必要とされる施策については、今後、検討の余地があるかもしれない。

●職場での相談先は「1.上司」がトップ。一方、「4.同僚」「5.経験者や現在同じような状況にある社内の人」「6.部下」については、「相談したことがない」割合の方が多い
・自身の病気や治療について、相談先の種類で最も多いのは「1.上司(66.2%)」、次いで「2.人事・相談窓口(43.4%)」「3.会社の支援職(42.3%)」だった。
・一方、「4.同僚」「5.経験者や現在同じような状況にある社内の人」「6.部下」は39.4%、23.4%、21.5%とより少なく、「相談したことがある」より「相談したことがない」が多かった。

 ⇒誰にどこまで報告や相談をするかは、本人の希望により選択されるものであるが、必要なときに、相談ができたり話を聞いてもらえたりする相手が社内にいることは、治療や仕事の困りごとを解決するだけでなく、社会的なつながりや居場所感を得られる機会となり得る 。

●勤務先の人の対応や言動で「嬉しかったこと」は実際的な支援と情緒的な支援
・勤務先の人の対応や言動で「嬉しかったこと」「嫌だったこと」の自由記述を抜粋した。
・「嬉しかったこと」では、「仕事の調整」「積極的な状況把握」といった実際的な支援だけでなく、「安心できる声かけ」「変わらない態度」「親身な対応」といった情緒的な支援が支えとなったことを示している。
・一方、「嫌だったこと」としては、「状況を理解しようとしない」「無理を求める」などが聞かれた。

 ⇒支援する側に知識や余裕がなければ、こうした対応が増え、報告・相談を躊躇する一因となると考えられる。

●「両立の実現度」に強い影響を与えるのは、「上司の両立支援リーダーシップ」と「職場のインクルージョン風土」
・適切な治療を受けながら自分の望む就業を実現できること「両立の実現度」に影響する要因について細分化して検討した。
・特に強い影響が確認されたのは、「上司の両立支援リーダーシップ」(「仕事が私生活や健康に与える影響を本当に心配してくれる」など6項目、6件法、α=.96)と、「職場のインクルージョン風土」(「今の職場では、仕事上の役割だけでなく、個々人の事情や性格も大切にされている」など3項目、6件法、α=93)である。それぞれについて、高群と低群の「両立の実現度」を比較したところ、高群が低群にくらべて有意に高い結果が見られた。
・「就業継続上の課題」の有無と「両立の実現度」の関係では、治療・体調の困難の有無以上に、「13.職場に居場所がないと感じる」「14.職場で期待されていないと感じる」群では、両立の実現度が低い傾向がみられる。

 ⇒これらから、両立の実現には、上司や職場の理解や支援、職場での良好な関係性の維持が、重要な要因となることが推察される。

・「会社の制度や取り組み」の有無が「両立の実現度」に関係することが確認されたのは、「1.健康重視の基本方針」「2.両立支援制度の周知」「3.研修や勉強会の開催」といった「両立支援の理解促進」に関するものだった。これらが行われている群は、そうでない群にくらべて両立の実現度が高い傾向があった。
 ⇒会社全体の方針や発信は、上司や職場の支援にも影響を与えることから、その影響度は大きい 。

●「疾病のある人が心がけていること」は「周囲への主体的な働きかけ」や「心身を守るための仕事への取組みのセルフコントロール」に関する回答が散見される
・本人が、適切な治療をしながら自分の望む就業を続けるために心がけていることを尋ねた。
・「思い切った援助要請」「早めの連絡相談」「丁寧な業務の共有」など、周囲への主体的な働きかけに関するもの、「ペースを守る」「メリハリをつける」といった心身を守るための仕事への取組みのセルフコントロールに関するものが多く見られた。

3.調査概要
【調査内容】
適切な治療を受けながら仕事を継続する上で重視すること、両立の実現度、就業継続上の課題、会社の制度や取り組みの有無と役立ち度、職場での周囲への相談の実態など

【調査対象】
次の1.2.の両方に該当する20~50代の会社勤務(正社員、契約社員)376名
1.「がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎、その他難病や不妊、精神疾患など、反復・継続して治療が必要で、短期(数か月程度)で治療しない疾病を抱えながら、仕事を継続した(治療と仕事を両立した)経験がある」に「はい」と回答
2.「上述の疾病に適切な治療を受けながら、仕事を継続するにあたって、お勤めの会社や職場からの何らかのサポートが必要」に「必要」「どちらかといえば必要」と回答
※経営者・役員は除く、勤務先の従業員規模は50名以上
【調査方法】
オンライン調査(2024年6月)
【回答者の属性(単一回答)】
男性65.7%、女性33.5%、その他・答えたくない0.8%
管理職(正社員)26.6%、一般社員(正社員)64.4%、契約社員9.0%
20~30代32.7%、40代30.1%、50代37.2% 平均44.7歳
営業・サービス25.0%、事務・企画43.4%、研究・開発31.6%
製造34.8%、非製造65.2%
従業員規模:50名以上299名以下29.3%、300名以上999名以下23.7%、1000名以上47.1%

 

◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。

(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ /8月26日発表・同社プレスリリースより転載)