ニュース 掲載日:2019/01/24

所属企業のダイバーシティ推進施策により便益を受けていると答えたマイノリティ従業員は全体の25%にとどまる~『性別、人種・民族、性的指向におけるダイバーシティ推進施策についての調査レポート』:ボストン コンサルティング グループ

経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、性別、人種・民族、性的指向におけるダイバーシティ推進施策についての調査レポート「Fixing the Flawed Approach to Diversity」(以下、レポート)を発表しました。回答者の所属する企業の98%がダイバーシティ推進施策を実行していたにもかかわらず、それらの取り組みは満足な成果をあげているとは言えません。この調査で、女性、人種・民族的マイノリティ、LGBTQ(注1)と自認する性的マイノリティの約75%が、自社のダイバーシティ推進施策から個人的な便益を受けていないと考えていることがわかりました。

(注1)レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、セクシャルクィア


■取り組みの進展を阻むのは当事者グループと男性シニア層の間の認識ギャップ

ダイバーシティ推進に向けた取り組みの進展を阻む主な要因は、企業内で意思決定を担うことが多い男性シニア層(45歳以上)の認識不足にあると考えられます。「女性、人種・民族的マイノリティ、性的指向におけるマイノリティが、採用/入社、雇用/キャリアの継続、昇進においてなんらかの障壁に直面している」と認識している回答者の割合は男性シニア層では、当事者グループと比較して10~15%ポイント程度低いという結果となりました。この認識ギャップが、適切でない経営資源の配分や、最も大きなインパクトを与える施策への投資不足を招いている可能性があります。

この調査は世界各地で女性、人種・民族的マイノリティ、性的マイノリティを含む幅広い企業の従業員およそ16,500人に対し、31の主要なダイバーシティ推進施策の有効性についてたずねたものです。日本ではダイバーシティ推進施策というと女性の活躍推進を目指すものととらえられがちですが、人種・民族的マイノリティや性的マイノリティのインクルージョンも同様に検討すべき重要な課題です。本レポートの共著者であるBCG東京オフィスのシニア・パートナー、津坂美樹は「私たちの調査は、企業のダイバーシティ推進施策と、こうした施策により当事者たちが感じる便益の程度には明らかな、かつきちんと検討すべき『ずれ』があることを示しています。企業のリーダーは一歩引いた視点から、自社のダイバーシティ推進施策が性別、人種・民族、性的指向を超えてすべての従業員にとって真に有効なものであるか、考え直す必要があります」とコメントしています。 


■ダイバーシティ推進施策の「隠れた宝」

本レポートでは、経営層の評価はそれほど高くないにもかかわらず、マイノリティ従業員がその有効性を高く評価する「隠れた宝」と言うべき施策群に焦点を当てて解説しています。

・女性は社内のロールモデルの見える化/発信、育児休暇、子育て支援を重視
女性は、昇進が可能なことを示すメッセージを高く評価しました。女性回答者が有効と考える施策のランキングでは、「社内のロールモデルの見える化/発信」が5位(男性回答者におけるランキングは17位)にランキングされました。また、育児休暇制度は同3位、バックアップ体制の充実や社内保育所の設置などの子育て支援は同11位にランキングされましたが、男性従業員におけるランキングではそれぞれ10位、22位にとどまりました。

・人種・民族的マイノリティ従業員は、キャリア支援プログラムなどによる偏見のない職場環境の形成を重視
人種・民族的マイノリティ従業員は採用や昇進の決定を公平に行うための施策を重視し、公式なキャリア支援プログラム、各自にカスタマイズされたキャリアのロードマップの提示などの施策を高く評価しています。

・LGBTQと自認する従業員は、既存の枠組みの変換を含めた偏見のない職場環境の形成を重視
LGBTQと自認する従業員は、男女のみでない性別表記やジェンダーフリートイレの設置など既存の枠組みの変換を含め、偏見のない職場環境の実現により日々安心して働けることを重視しています。


■3つの基本施策の実施は不可欠:「差別禁止の原則の明示」「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)研修の実施」「評価や昇進における偏見の排除」

「今回の調査では、ダイバーシティ推進施策の有効性を高めるためには基本に立ち返る、というアプローチが重要であることもわかりました。変革を実現するうえで不可欠な基本施策とは、『差別禁止の原則の明示』『アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)研修の実施』『評価や昇進における偏見の排除』の3つです」と、本レポートの共著者のBCGシカゴ・オフィスのシニア・パートナー、マット・クレンツはコメントしています。

ダイバーシティ推進施策を効果的に立案・推進するには確実な実行が不可欠です。そのためには、リーダー層の強いコミットメントを確保すること、自社に適したやりかたでアクションを取ること(トップダウンとボトムアップの施策をバランスよく実行するなど)、成果を示すKPIを厳格に追跡することなどが重要です。


■調査レポート
「Fixing the Flawed Approach to Diversity」


■調査の概要
世界14カ国(オーストラリア、ブラジル、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、インド、イタリア、ノルウェイ、スペイン、イギリス、アメリカ)、において、約16,500人を対象に実施したアンケート。回答者には約8,600人の女性、約3,200人の人種・民族的マイノリティ(ブラジル、イギリス、アメリカ)、約1,650人のLGBTQコミュニティに属する回答者が含まれる。


<本件に関するお問い合わせ>
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・嶋津 
Tel: 03-5211-0600 / Fax: 03-5211-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

 

◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。

(ボストン コンサルティング グループ https://www.bcg.com/ja-jp/ /1月21日発表・同社プレスリリースより転載)