月間分析レポート[2025年4月]

2025年3月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「ネガティブ・ケイパビリティ」「五月病」「離職率」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

ネガティブ・ケイパビリティ

「ネガティブ・ケイパビリティ(Negative capability)」とは、どうしても対処できない状況に耐える能力のこと。あるいは、容易に答えが出ない事態にも性急に事実の解明や理由を求めず、不確実さや懐疑の中にいることができる能力を指します。日本語では「消極的能力」「消極的受容力」とも訳されます。不確かなVUCA時代に必要な能力として注目されています。

サジェストワードでは、「ネガティブ・ケイパビリティ 本」が検索されました。この概念は、19世紀の英国の詩人ジョン・キーツが唱えたもので、最初は文学の分野で使われた言葉でした。その約160年後に英国の精神科医ウィルフレッド・R・ビオンが心理学の分野に持ち込み、世界に広めました。日本では、2017年に精神科医の帚木蓬生氏が『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』を出版し、広く知られるようになりました。

このほかには「ネガティブ・ケイパビリティ 鍛え方」が検索されました。キャリア心理学研究所代表で臨床心理士の宮城まり子氏は、ネガティブ・ケイパビリティを身につけるには、熟考する力と、不確実な状況に耐える力が重要だと述べています。「希望の仕事ができない」「この会社では成長できない」といった、すぐに答えの出ない状況に直面したときは、性急に結論を出すのではなく、時間をかけてじっくりと考えることが大切です。宮城氏は、不安や戸惑いを感じながらも現状にとどまり、耐え抜くことで状況が好転する可能性を説いています。結論を急ぐのではなく、あえて白黒はっきりさせない力を育む重要性を再認識する必要があるでしょう。

「ネガティブ・ケイパビリティ」についてもっと知る

五月病

「五月病」は正式な医学用語ではなく、4月に進学した学生や入社・異動した社会人に、5月頃現われる精神的な不安定状態の総称です。環境の変化に適応できないことに起因する症状といわれ、抑うつ気分、不安感、無気力、不眠、強い疲労感など、うつ病に似た心身の不調やスランプを訴える場合が多いようです。

4月終盤にかけて検索数が右肩上がりで推移しました。新しい環境に身を置く人が増える4月は、五月病への関心が高まる時期です。

近年は「六月病」という言葉も聞かれるようになりました。五月病と同様に環境変化への適応困難による不調を指しますが、ひと月遅い6月頃に症状を訴えることから、六月病と呼ばれています。5月ではなく6月に不調が現れる要因として、新人研修の長期化や、配属後の職場環境への適応の遅れなどが考えられます。

「五月病 症状」「五月病 直し方」「五月病 対策」といったサジェストワードからは、五月病への関心の高さと、具体的な対処法を求めるニーズがうかがえます。五月病の主な症状としては、憂鬱な気分、不安感、無気力、意欲低下、集中力低下、疲労感、倦怠感、不眠、食欲不振、頭痛、腹痛などが挙げられます。

これらの症状は多くの場合一時的なもので、本人の回復力と環境への慣れによって自然に改善されます。しかし「そのうち治る」と放置しておくと、「適応障害」や「うつ病」などの深刻なメンタルヘルス不調を発症してしまうこともあるので、注意が必要です。仕事上のミスの多発や言動の変化(会話の減少や服装の乱れ)、遅刻や早退、無断欠勤、さらには飲酒時の悪酔いといった問題行動が目についたら、本人からの“SOS”と受け止めるべきでしょう。上司が声をかけ、本人からじっくりと話を聞き、場合によっては産業医や専門医に相談するよう助言することも大切です。

また、「五月病 なりやすい人」が検索されました。「真面目」「完璧主義」「責任感が強い」「環境の変化に敏感」「頑張りすぎる傾向がある」などといったタイプの人が、五月病になりやすいと言われています。

「五月病」についてもっと知る

離職率

離職率とは、一定期間における離職者の割合で、厚生労働省が調査で用いる「離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100」が代表的な指標です。離職率に関してよく用いられる統計データには、厚生労働省が実施している「雇用動向調査」や、総務省の「労働力調査」などがあります。

4月中はコンスタントに検索され、特に前半で検索数が増加しました。退職代行サービスの利用増加が報道されるなど、4月は新入社員の早期離職が話題になりやすい時期です。こうした状況から、離職率に関する関心が高まったと考えられます。

厚生労働省が毎年発表している「新規学卒就職者の離職状況」によると、2021年に大学を卒業した新卒就職者の3年以内離職率は34.9%で、前年度比2.6ポイント増。早期離職の増加傾向は、企業にとって大きな課題となっています。

サジェストワードでは、「離職率 定義」「離職率 計算方法」が検索されました。厚生労働省による「離職者」の定義は、「常用労働者のうち、調査対象期間中に事業所を退職したり、解雇された者」です。また、「他企業への出向者・出向復帰者を含み、同一企業内の他事業所への転出者を除く」とされています。離職率の算出方法は「離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100」です。

このほかには、「離職率 業界別」が検索されました。前述の厚生労働省の調査では、新規学卒就職者の3年以内離職率が高い業種は、上位から「宿泊業、飲食サービス業」(56.6%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(53.7%)、「教育、学習支援業」(46.6%)となっています。

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