月間分析レポート［2023年7月］
2023年6月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「最低賃金」「アウティング」「ストライキ」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。
最低賃金
7月28日に検索回数が増加した「最低賃金」。同日、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会が、2023年度の最低賃金（時給）を全国平均で41円引き上げるという目安をまとめました。物価高騰を背景に引き上げ額は2022年度の31円を上回り、過去最高となりました。
地域別の引き上げ額の目安は、東京など6都県のAランクで41円、北海道など28道府県のBランクで40円、沖縄など13県のCランクで39円となりました。実際の引き上げ額は、各都道府県の地方審議会が目安額をもとに決定。10月ごろから適用される見通しです。
サジェストワードでは「最低賃金 推移」が検索されました。近年の引き上げ率は2020年度を除き、前年度比3％程度で上昇していました。今回の引き上げ率は4.3％で、こちらも過去最高の増加幅です。目安通りに改定されると、最低賃金の全国平均は現在の961円から1002円となり、初めて1000円台に達することになります。
このほかには、「最低賃金 ランキング」「最低賃金 全国」が検索されました。都道府県によって最低賃金の差が気になった人が検索したと考えられます。全国で最も高いのは東京都で、現在は1072円。引き上げ後は1113円になり、初めて1100円を超えます。また、京都や埼玉など５府県では初めて1000円以上となる見込みです。一方で、最も低い沖縄県など10県は現在853円。1位の東京都との差は219円で、この20年で2倍以上に広がっています。
「最低賃金」についてもっと知る
アウティング
「アウティング」とは、本人が公にしていない「SOGI（性的指向や性自認）」を、承諾なしに第三者に公表してしまうことをいいます。検索回数が増加した7月24日には、アウティングによって精神疾患を発症した事例が労災認定されたというニュースが報じられました。
報道によると、都内で勤務していた20代の男性が、上司によるアウティングを受けたあと精神疾患を発症。精神疾患はアウティングによるものでパワーハラスメントに該当するとして、2022年3月に労働基準監督署から労災と認定されていました。男性の支援団体は「アウティングをめぐって労災認定されたのは全国で初めてではないか」と話しています。会社側は男性に謝罪した上で解決金を支払い、和解したということです。
サジェストワードでは「アウティング 法律」が検索されました。性的指向や性自認は個人情報やプライバシーにあたるため、周囲に公表するか否か、どの程度公表するかなどは本人だけが決めることができます。暴露する行為はプライバシー権の侵害にあたり、損害賠償責任を負うものと考えられます。
また、「アウティング ハラスメント」「アウティング 会社」が検索されました。企業はアウティングをした人の使用者として、損害賠償責任を負う可能性があります。また従業員に対して、働きやすい職場環境を保つように配慮する義務があります。人事としては、研修などで従業員の理解を促すとともに、相談窓口を設置するなど、環境の整備が求められます。HRソリューション企業は、研修や環境整備のコンサルティングといったサービスを提供することで、セクハラやSOGIハラを許さない意識の浸透に貢献できるでしょう。
「アウティング」についてもっと知る
ストライキ
「ストライキ」とは、労働条件の維持、向上などのために労働者が集団的に業務を停止することです。ストライキ権は団結権、団体交渉権とともに労働者の基本的権利に属します。
7月3日に、セブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店「そごう・西武」の売却をめぐって、そごう・西武の労働組合がストライキを検討していると報じられたことが影響したと考えられます。
セブン＆アイは2022年11月、そごう・西武を米投資ファンドに売却する契約を締結。同労組は、売却をめぐる情報公開と雇用維持を会社側に求めています。７月28日に実施した組合員によるスト権確立を問う投票では、過半数が賛成。今後の交渉次第では、小売業では近年ほとんど例がないストライキに発展する可能性があります。
7月14日以降も検索数がゆるやかに増加しました。同日、ハリウッド俳優らが加入する全米映画俳優組合が、動画配信大手会社などに公正な報酬の設定を求めるストライキを開始したことで注目を集めたと考えられます。サジェストワードでも「ストライキ ハリウッド」が検索されました。
また、「ストライキ やり方」が検索されました。ストライキは労働の拒否や集団での示威行為を伴います。憲法や労働組合法の要件を満たし、正当性を有する行為でなければ違法となります。実際にストライキを行う場合は、適切な手順を踏んで実施することが重要です。