月間分析レポート[2024年1月]

2023年12月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「内定辞退」「春闘」「アルムナイ」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

内定辞退

「内定辞退」とは、企業が内定を出した人材が内定承諾後に、自己都合で内定を辞退することを指します。多くの選考プロセスを経て出した内定を辞退されることは、採用担当者にとって避けたい事態の一つです。

1月31日に検索回数が増加しました。同日にWebメディアで「オヤカク」について取り上げた記事が公開されたことから、注目を集めたようです。「オヤカク」とは、「親への確認」の略で、企業が内定を出した学生の親に対して、内定受諾への意向を確認することです。近年、親が子どもの就職先決定に干渉する傾向が強まり、学生本人に入社の意思があっても、親の反対で内定後に入社を辞退するケースが目立つようになりました。それを防ぐため、企業でオヤカクを実施する動きが広がっています。

リクルート(就職みらい研究所)の「就職プロセス調査」における近年の新卒の内定辞退率(3月卒業時点)の推移を見ると、2021年卒は57.5%、22年卒は61.1%、23年卒は65.8%で、年々増加傾向にあることがわかります。24年卒の内定辞退率は、23年12月時点で64.3%。24年卒も変わらず高水準で推移することが予想されます。

サジェストワードでは「内定辞退 転職」が検索されました。マイナビが公表した「中途採用状況調査2023年版(2022年実績)」によると、22年中途採用の内定辞退率は7.9%でした。19年(22.1%)、20年(15.7%)、21年(11.1%)と3年連続で減少しています。中途採用は業界・職種やエントリー企業数をある程度絞って行う人が多いため、新卒の内定辞退率よりも低い傾向にあることがわかります。

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春闘

1月24日~30日にかけて検索回数が増加した「春闘」。日銀が1月22日、23日に開いた金融政策決定会の内容が、23日夜から各メディアで報道されました。2024年春闘で大幅な賃金の上昇が確認された場合、3月以降の金融政策決定会合でマイナス金利が解除される可能性が高いとの見方が広がっており、注目が集まったと考えられます。

日銀は、賃金の上昇を伴った形で物価上昇率を2%に安定させる目標の達成が見通すことができれば、金融政策の正常化を検討する方針です。同会合では現在の金融政策を現状維持とし、マイナス金利の解除は見送りました。何人かの政策委員からは、急いで利上げする状況になく「春闘の動向を見てから判断しても遅くはない」との意見が出されました。24年春闘は、マイナス金利政策を解除する条件である、物価とともに賃金が上がる「経済の好循環」を確認する重要な判断材料となります。

サジェストワードでは「春闘 2024 いつ」「春闘 スケジュール」が検索されました。春闘は例年1月にスタートし、3月中旬に主要企業の集中回答日を迎えます。中小企業の労使交渉は大手企業の労組の妥結状況を受けて動き出し、3月末までに回答を終えます。24年春闘の回答結果は、24年4月の給与から反映されるのが一般的です。24年春闘で連合は、ベースアップ相当分として「3%以上」、定期昇給分を含めて「5%以上」の賃上げを要求する方針です。

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アルムナイ

「アルムナイ(アラムナイ、alumni)」はalumnusの複数形で、本来は「卒業生、同窓生、校友」の意味。転じて、企業の離職者やOB・OGの集まりを指します。海外では、企業が一度は自社を離れたアルムナイを貴重な人的資源としてとらえ、アルムナイを組織化して活用する事例が少なくありません。

1月22日に検索回数が増加しました。同日に、テレビの番組でアルムナイ採用やアルムナイ交流について特集されたことから、関心が高まったと推測されます。

日本でも、自社の退職者と定期的・継続的なコミュニケーションをとることで、優秀な人材の再雇用や退職者のネットワークを活用した人材獲得を目指す企業が増えています。1月18日には、三菱電機がアルムナイ(同社の退職者)との継続的なつながりを構築するための専用サイトを開設したことを発表しました。その他にも、みずほ銀行や武田薬品工業、トヨタ自動車などがアルムナイ採用を行っています。

リクルートが2023年3月に企業の人事担当者約5000人に実施した調査によると、従業員規模30人以上の企業のうち、31.0%がアルムナイのネットワーク構築に取り組んでおり、12.3%がアルムナイネットワークを通じた採用を実施していると回答。また、アルムナイネットワークを通じて採用を行っている企業、あるいは構築に取り組んでいる企業は、そうでない企業に比べて「採用が好調」「従業員エンゲージメントが高い」など、ポジティブな傾向が見られることが明らかになりました。

サジェストワードでは「アルムナイ デメリット」が検索されました。アルムナイ採用の強みは、即戦力になる人材や組織風土を理解している人材を採用できる点です。一方で、採用後に既存社員と協働できるような環境構築など、慎重に対応すべき点もあります。

また、アルムナイ採用は企業ブランディングにつながる反面、「退職しても戻ってこられる」などと、退職へのハードルを下げてしまうことが懸念されます。アルムナイネットワーク構築のためには会員限定サイトを運用したり、交流会を開いたりするなど、多くの個人情報を管理する必要もあります。ネットワークを構築する労力とコストを加味した上で、導入するかどうかを決める必要があります。

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