月間分析レポート[2023年10月]

2023年9月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「カスハラ」「エッセンシャルワーカー」「連合」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

カスハラ

「カスハラ(カスタマーハラスメント)」とは、客から従業員への過剰な要求や悪質なクレームのことを指すハラスメントの一種です。商品やサービスに関係のない要求や嫌がらせ、過度な値引き要請、どう喝や暴言、インターネット上の誹謗(ひぼう)・中傷などの行為が当てはまります。

10月10日から14日にかけて検索回数が増加しました。6月に成立した改正旅館業法により、旅館やホテルがカスハラを繰り返す客の宿泊を拒否することが可能になります。12月13日の施行を前に、複数のメディアで取り上げられたことから注目が集まったと考えられます。

厚生労働省がまとめた運用指針では、宿泊を拒否できる具体例を挙げています。その中では、障がい者が宿泊する際に施設側へ合理的な配慮を求めることは宿泊拒否の要件に当てはまらないとしています。

また、10月20日には「カスタマーハラスメント」の検索回数が増加しました。同日、東京都は働きやすい職場づくりについて経営者・労働者団体と意見交換する「公労使による『新しい東京』実現会議」を開催。カスハラに対して有効な対策を練るための専門家会議を立ち上げる方針を明らかにしました。

サジェストワードでは「カスハラ 労災」が検索されました。9月1日に厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、労災認定基準にカスハラを加えました。カスハラは、対応する従業員のパフォーマンスを低下させるほか、精神的にダメージを与えることにより休職や退職の原因にもなり得ます。企業には、従業員を守るために適切な対応やメンタルケアへの配慮が求められています。

このほかには、「カスハラ 厚生労働省」「カスハラ ガイドライン」が検索されました。カスハラに悩む企業の担当者が、企業内で講じるべき対策について知るために検索したと考えられます。厚生労働省は2022年2月に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成。適切に対応するための体制の整備方法や従業員への配慮の仕方、再発防止措置などの基本的な枠組みを記載しています。

「カスハラ」についてもっと知る

エッセンシャルワーカー

「エッセンシャルワーカー」とは、人々が日常生活を送る上で、なくてはならない仕事に従事する労働者を指します。コロナ禍でリモートワークへの移行が加速する中、社会の機能を維持するために欠かせない存在として注目されました。検索回数が伸びた10月21日には、エッセンシャルワーカーの人手不足の現状についてテレビ番組で報じられています。

サジェストワードでは「エッセンシャルワーカー 人手不足」が検索されました。リクルートワークス研究所が発表した「未来予測2040」によると、2030年に約341万人、2040年には約1100万人の労働力不足に陥ると試算されています。職種別では、輸送・機械運転・運搬職種は2040年には99.8万人の供給不足に陥り、不足率は24.2%。建設職種では2040年に65.7万人の労働供給不足で不足率は22.0%。介護サービス職種では2040年に58.0万人の供給不足が見込まれ、不足率は25.3%という試算が示されています。

「社会保障を支える人材の確保」をテーマした「令和4年版厚生労働白書」(厚生労働省)では、2040年には医療・福祉分野の就業者数が96万人不足すると推計しています。

このほかには、「エッセンシャルワーカー 職種」「エッセンシャルワーカー 一覧」が検索されました。「エッセンシャルワーカー(essential worker)」は、医療・福祉や保育、運輸・物流、小売業、公共機関などに携わる労働者が該当します。

「エッセンシャルワーカー」についてもっと知る

連合

「連合」とは、1989年に結成された日本最大の労働組合の全国中央組織(ナショナルセンター)である「日本労働組合総連合会」の略称です。英語では「Japanese Trade Union Confederation」と表記されます。47の地方連合会や、47の産業別組織などで構成され、組合員数は約700万人です。

10月5日、12日など複数の日で検索回数が増加しました。2024年春闘の賃上げの方針がどうなるかについて、関心が高まっていることが背景にあると推測されます。10月5日・6日に開催された連合の定期大会では、賃上げの継続など2024〜25年度の運動方針を採択。10月19日には、2024年春闘で5%「以上」の賃上げを要求すると発表しました。賃上げのさらなる底上げを目指すため、2023春闘での5%「程度」より表現を強めています。

サジェストワードでは「連合 芳野」「連合 事務局長」が検索されました。現在の会長や事務局長について知りたい人が検索したと考えられます。2021年10月の前回大会で、金属や機械などの企業の労働組合で構成する「JAM」出身の芳野友子氏が、女性初の会長に就任しました。芳野会長は今年の定期大会で再任され、2期目続投が決定。教職員の労働組合「日教組」出身の清水秀行事務局長も再任されました。

「連合」についてもっと知る

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