月間分析レポート[2023年11月]

2023年10月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「春闘」「年末調整」「カスタマーハラスメント」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

春闘

「春闘」とは、毎年春に各産業の労働組合が経営側に対し、一斉に賃上げ(ベースアップ)などの労働条件改善を要求する運動のことです。11月は複数の日程で検索回数が増えました。サジェストワードで「春闘 2024」が検索されたことからもうかがえるように、2024年春闘でどのくらいの賃上げが実現するかに注目が集まっていると考えられます。

岸田首相は11月2日に行った総合経済対策に関する会見で、所得向上対策として春闘に言及。11月15日に開催した労働団体と経済界の代表らと意見交換する「政労使会議」では、2024年春闘について「2023年を上回る賃上げへの協力をお願いしたい」と要請しました。

サジェストワードは「春闘 賃上げ率」「春闘 賃上げ率 推移」が検索されました。厚生労働省が8月に発表した2023年春闘の妥結状況(資本金10億円以上で従業員1000人以上の労働組合がある364社が対象)によると、定期昇給相当分を含む賃上げ率は3.60%となり、1993年の3.89%以来、30年ぶりの高水準となりました。前年の2022年比では1.40ポイントの上昇。コロナ禍前の2019年比では1.42ポイントの上昇でした。

連合が7月に発表した最終集計では、回答を得た5272組合の賃上げ率は3.58%。2022年を1.51ポイント上回り、こちらも1993年の3.90%以来の水準となりました。そのうち、組合員300人未満の中小組合では、1.27ポイント上昇の3.23%でした。

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年末調整

「年末調整」とは、従業員が納めるべき1年間の所得税および復興特別所得税の金額を精算する手続きのことです。従業員は企業による源泉徴収を通じて納税しますが、源泉徴収だけでは1年間の税金の金額が確定しないため、精算を目的に年末調整を行います。

10月後半から平日を中心に徐々に検索回数が伸び、11月前半の平日に検索が集中しました。年末調整の業務は11月から翌年1月下旬にかけて行うことが多いため、毎年この時期に検索回数が増えるキーワードです。

サジェストワードでは「年末調整 必要書類」「年末調整 保険料控除」「年末調整 住宅ローン控除」などが検索されました。年末調整の際に必要な書類について知りたい人が検索したと考えられます。

年末調整業務では、まず対象の従業員に各種申告書を配布し、必要事項を記載してもらいます。申告書の回収後、所得税および復興特別所得税の年税額を計算し、徴収済みの金額と比較して過不足額を計算します。超過額は従業員に還付し、不足額は従業員から徴収。その後、従業員ごとに源泉徴収票を作成します。

年末調整は従業員一人ひとりの家族構成などによって必要書類が変わるため、複雑で時間のかかる業務です。『日本の人事部』の匿名相談掲示板「人事のQ&A」では、この時期に年末調整に関連する質問が増加します。

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カスタマーハラスメント

「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、客から従業員への過剰な要求や悪質なクレームのことを指すハラスメントの一種です。商品やサービスに関係のない要求や嫌がらせ、過度な値引き要請、どう喝や暴言、インターネット上の誹謗(ひぼう)・中傷などの行為が当てはまります。特に、11月12日に検索回数が増えました。「カスタマーハラスメント」は、同様の話題で注目が集まった前月も検索回数が増加しました。

12月13日に施行される改正旅館業法によって、旅館やホテルがカスハラを繰り返す客の宿泊を拒否することが可能になります。施行を前にテレビなど複数のメディアで取り上げられたことから、注目が集まったと推察されます。

サジェストワードでは「カスタマーハラスメント 事例」が検索されました。生活関連産業の労働組合「UAゼンセン」の「悪質クレームの定義とその対応に関するガイドライン」では、悪質クレームの要求態度は大きく分けて「長時間拘束型」「リピート型」「暴言型」「暴力型」「威嚇・脅迫型」「権威型」「店舗外拘束」「SNS/インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷」の8種類あるとしています。ガイドラインでは、これらに対して企業がとるべき対応は「(1)悪質クレームの定義と判断基準を明確にする」「(2)事前の啓蒙・教育を行う」「(3)毅然(きぜん)とした態度を示す」と明示しています。

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