月間分析レポート[2023年8月]

2023年7月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「ストライキ」「エッセンシャルワーカー」「パートナーシップ制度」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

ストライキ

8月30日に検索回数が増加した「ストライキ」。セブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店「そごう・西武」の労働組合が同日に、ストライキを実施することを発表しました。翌31日、旗艦店である西武池袋本店は全館臨時閉館となりました。

セブン&アイは2022年11月に、そごう・西武を米投資ファンドへ売却する契約を締結。労働組合は雇用維持などへの懸念から反発していました。セブン&アイは、ストライキと同日に取締役会を開いて売却に向けて最終決議をし、9月1日付で売却が完了しました。そごう・西武の企業価値は2200億円と見込まれますが、有利子負債などを勘案し、実際の売却額は8500万円でした。

「ストライキ」は、同様の話題に注目が集まった前月も、検索回数が増加しました。ストライキは憲法で保障されている労働者の権利ですが、日本の労組にとってストライキは「回避すべきもの」という認識が強い傾向にあります。

厚生労働省によると、半日以上のストライキの件数は1974年の5197件がピーク。労使協調路線にしたことなどを要因に減少傾向にあり、近年は二桁の件数にとどまっています。今回のそごう・西武のストライキは、大手デパートのストライキとしては1952年の当時の阪神百貨店以来、61年ぶりとなったことから大きな注目を集めました。

サジェストワードでは「ストライキ 日本 最近」が検索されました。今年日本で実施された事例としては、2023年3月に行われた全日本国立医療労働組合によるストライキが挙げられます。独立行政法人国立病院機構が運営する全国137の病院の看護師などが加入する同組合は、31年ぶりとなるストライキによって賃上げや労働環境の改善を訴えました。

このほかには、「ストライキ 給与」「ストライキ 賃金カット」が検索されました。ストライキに参加中の組合員の給与について、疑問に思った人が検索したと考えられます。ストライキ参加中は労働をしていないため、原則として会社側にストライキ期間中の賃金は請求できません。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。

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エッセンシャルワーカー

「エッセンシャルワーカー」とは、人々が日常生活を送る上で、なくてはならない仕事に従事する労働者を指します。医療・福祉や保育、運輸・物流などに携わるエッセンシャルワーカーは、コロナ禍をきっかけに社会の機能を維持するために欠かせない存在として注目されるようになりました。

8月2日に、全国の地方自治体が、新型コロナ感染者数について発表しました。7月24日~30日の1週間に報告された新型コロナの感染者は全国的に増加傾向にあり、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行してから最も多くなったと報じられました。

サジェストワードで「エッセンシャルワーカー コロナ」が検索されたように、新型コロナの感染者数が増えるたびに、仕事を休むと社会に大きな影響を及ぼすエッセンシャルワーカーの仕事に注目が集まることから、検索回数が増加したと考えられます。

そのほかは、「エッセンシャルワーカー 人手不足」が検索されました。厚生労働省の「令和4年版厚生労働白書」では、2040年には医療・福祉分野の就業者数が96万人不足すると推計しています。

また、「エッセンシャルワーカー 低賃金」が検索されました。国際労働機関(ILO)が2023年3月に発表した報告書「世界の雇用と社会の見通し2023エッセンシャルワークの重要性」では、「キーワーカー(エッセンシャルワーカー)のうち29%が低賃金(時給の中央値の3分の2以下の賃金)で働いており、平均賃金は他業種の雇用者よりも26%低く、この格差のうち学歴・経験で説明できるのは3分の2にすぎない」と指摘しています。人々の生活基盤を守るために必須な仕事でありながら、エッセンシャルワーカーを取り巻く就労環境は課題が山積しています。

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パートナーシップ制度

「パートナーシップ制度」とは、戸籍上は同性であるカップルに対して、婚姻と同等のパートナーシップであることを承認する制度のことをいいます。8月25日に検索回数が増えました。同日には、岐阜県が「パートナーシップ宣誓制度」を開始すると発表しました。

パートナーシップ制度は、2015年に東京の渋谷区と世田谷区が導入したことを皮切りに、全国へと広がりをみせています。渋谷区・ 虹色ダイバーシティ 全国パートナーシップ制度共同調査によると、2023年6月28日時点で、導入自治体は328自治体にのぼります。交付件数は2023年5月31日時点で5171組です。

また、社内制度としてパートナーシップ制度を認める企業も増えています。スターバックス コーヒー ジャパンやパーソルグループなどでは、法律婚における配偶者と同等の福利厚生を受けられる制度を導入しています。

サジェストワードでは「パートナーシップ制度 何ができる」「パートナーシップ制度 できないこと」が検索されました。パートナーシップ制度を利用することで、「市営住宅や区営住宅へ家族として入居」「病院の付き添いや手術の同意」「生命保険の受取人に指定」といったことが可能になります。

一方で、パートナーシップ制度は同性婚とは異なり、法的な効力はありません。そのため、「パートナーが亡くなった際、遺言状がなければ相続権が発生しない」「パートナーの子どもの共同親権者になることができない」「所得税の配偶者控除を受けられない」など、男女の夫婦と同じ法的保障は受けられません。

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