月間分析レポート[2023年5月]

2023年4月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「扶養控除」「アファーマティブ・アクション」「コーピング」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

扶養控除

扶養控除とは、扶養親族がいる場合に一定の所得控除が受けられる制度のこと。5月23日に鈴木俊一財務相が、児童手当の支給を拡充する場合は「控除の見直しが必要ではないか」と語ったことから、扶養控除が廃止される可能性に関心が集まり、検索回数が増加しました。政府は6月13日に閣議決定した「こども未来戦略方針」で、中学生までの児童手当の支給期間を高校生まで延長することに加えて、脚注に高校生の扶養控除の見直しを検討することを盛り込みました。

現在、16歳から18歳の子どもがいる親族は、年間で所得税38万円、住民税33万円の扶養控除が受けられます。控除がなくなった場合は納める税金が増えるため、月1万円(年間12万円)の児童手当を受け取っても、実質的には数千円のプラスにとどまる可能性があります。

サジェストワードでは「扶養控除 金額」「扶養控除 年収」が検索されました。所得税は年収が高いほど税率が高く、控除廃止の影響を受けやすいため、児童手当が拡充されても中高所得層は負担が増える場合があります。どの年収のラインで負担が増えるのかを気にした人が検索したと考えられます。新聞などの試算では、高校生の子どもが1〜2人いる場合は年収850万〜900万円がボーダーラインになる可能性があると報じていました。

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アファーマティブ・アクション

「アファーマティブ・アクション」(affirmative action)とは、差別を積極的に是正・改善する取り組みのことで、差別是正措置、積極的改善措置などと訳されます。差別によって不利益を被っている集団(女性や人種的マイノリティー、障がい者など)に対して、一定の受け入れ枠や目標を定めて優先的に機会を提供しようとする、暫定的な特別措置です。5月中にテレビ番組で議論されたことが影響し、関心が高まったと考えられます。

サジェストワードでは「アファーマティブ・アクション 例」「アファーマティブ・アクション 日本」が検索されました。日本における具体的な事例を知りたい人が検索したと考えられます。

日本におけるアファーマティブ・アクションの例としては、議員などのうち一定比率の人数を女性に割り当てる「クォータ制」や、いつまでに女性の割合をどのくらい増やすのかといった数値目標を設定する「ゴールアンドタイムテーブル制」が挙げられます。政府が6月13日に決定した女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針)では、東証プライム市場に上場する企業の女性役員の比率を2030年までに30%以上にする目標が盛り込まれました。

このほかには「アファーマティブ・アクション アメリカ」が検索されました。アメリカの事例について気になった人がいたと考えられます。学生の多様性を確保するため、アメリカの多くの大学でアフリカ系アメリカ人やヒスパニックなどを優遇する措置がとられています。最高裁では、ハーバード大学とノースカロライナ大学の入学選抜時に人種を考慮することが許されるかどうかを争った二つの訴訟を審理中。これまで一貫して合憲と判断してきましたが、この夏にその判決が覆る可能性があり、注目が集まっています。

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コーピング

「コーピング」(coping)はストレス・マネジメントの一つで、ストレスに対処するためにとる行動のことをいいます。5月17日にテレビ番組で五月病対策の一つとして紹介されたことをきっかけに、検索回数が増えました。

厚生労働省が2021年に発表した労働安全衛生調査によると、仕事や職業生活に関する強い不安やストレスを感じている労働者の割合は53.3%でした。2002年の調査以降、毎回半数を超えています。強いストレスは仕事のパフォーマンスや意欲に影響を与え、休職や離職のリスクにつながります。コーピングの技術を活用することで心身の病の原因となるストレスを排除したり、よい方向に転化させたりすることができるようになります。

しかし、コーピングを学んだからといって、すぐに実践できるわけではありません。企業が従業員のコーピングを支援するには、メンター制度やメンタルヘルス研修の導入などが効果的です。

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