月間分析レポート[2023年4月]

2023年3月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「技能実習制度」「カスハラ」「クール・ビズ」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

技能実習制度

外国人が日本で働きながら技術を学ぶ「技能実習制度」。実習生が帰国後に母国の経済発展や産業振興の担い手として活躍できるように設けられた制度で、人材育成による国際貢献として重要な役割を担ってきましたが、大きな曲がり角を迎えています。

4月10日に、政府の有識者会議が技能実習制度の廃止を求める提言の試案をまとめたことが報じられました。また4月28日には、有識者会議が技能実習制度を廃止し人材の確保と育成を目的とする代替制度の創設を求める中間報告をまとめ 、注目を集めました。

1993年に始まった技能実習制度は、建設、食品製造、農業など87職種が対象です。法務省出入国在留管理庁によると、技能実習生の数は2019年に過去最多の約41万人に達しました。近年はコロナ禍で減少傾向にありますが、2022年末時点で約32万5000人 の実習生がいます。

サジェストワードでは、「技能実習制度 いつから」「技能実習制度 今後」が検索されました。労働力不足に苦しむ日本の産業を実質的に支えてきた制度であることから、いつからどのように制度が変わるのか気になった人が検索したと思われます。有識者会議では、2023年秋の最終報告に向けて、具体的な制度の設計について議論しています。

「技能実習制度」についてもっと知る

カスハラ

「カスタマーハラスメント(カスハラ)」はハラスメントの一種で、客から従業員への過剰な要求や悪質なクレームを指します。商品やサービスに関係のない要求や嫌がらせ、過度な値引き要請、恫喝や暴言、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷などの行為が当てはまります。4月中にテレビ番組などの複数のメディアでカスハラについて取り上げられたことが影響し、関心が高まったと考えられます。

厚生労働省が2020年に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に従業員からハラスメントの相談があったと回答した企業の割合は、「パワハラ」(48.2%)、「セクハラ」(29.8%)に次いで「顧客等からの著しい迷惑行為」が19.5%。過去3年間の相談件数の推移では、「顧客等からの著しい迷惑行為」だけが「減少している」より「増加している」が上回っています。一方で、「顧客等からの著しい迷惑行為」に対する予防・解決の取り組みについては、「特にない」が57.3%でした。

サジェストワードでは「カスハラ 厚生労働省」「カスハラ ガイドライン」が検索されました。カスハラに悩む人や企業の担当者が、政府はどのような対応を推奨しているのかを把握し、対策を模索するために検索したと考えられます。厚生労働省は2022年2月に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成。適切に対応するための体制の整備方法や従業員への配慮の仕方、再発防止措置などの基本的な枠組みを記載しています。

このほかには「カスハラ 対応」が検索されました。厚生労働省「ハラスメント実態調査」検討会委員で職場のハラスメント問題に詳しい、神奈川県立保健福祉大学大学院の津野香奈美さんによると、カスハラが起きたときの対応は「複数人で駆けつけること」が原則です。カスハラを受けた従業員が、適切なケアやサポートが受けられるように健康管理部門や産業医などと連携できる体制をつくることも重要です。

「カスハラ」についてもっと知る

クール・ビズ

夏のビジネス用軽装によって、冷房の設定温度を抑えて節電を目指す「クール・ビズ」。検索回数は4月後半から伸び始め、4月30日にピークを迎えました。環境省は、5月1日から9月末まで東京で集中的な実施を呼びかけていることから、関心が高まったと推察されます。

サジェストワードでは、「クール・ビズ いつから」「クール・ビズ いつまで」が検索されました。環境省は2021年度から全国一律の実施期間を設定していません。クール・ビズが社会慣習として定着したことや、地域による気候の違いなどを踏まえて、実施期間は各自治体や企業などの判断に委ねています。

クール・ビズの実施にあたり人事労務担当者は、カジュアルになりすぎないように服装規定を設けたり、顧客と直接顔をあわせる営業や受付部門などは個別にルールを設けたりする対応が求められます。また、近年では採用選考中の学生にクール・ビズでの参加を促す企業が増えています。

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