月間分析レポート[2025年3月]

2025年2月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「36協定」「国家公務員給与」「静かな退職」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

36協定

36(サブロク)協定とは、使用者が労働者に対し、原則1日8時間・週40時間・週1日の法定休日を超えて労働させる場合に締結が必要な労使協定のことです。正式名称は「時間外・休日労働に関する協定」。時間外・休日労働に関するルールが、労働基準法第36条で定められていることに由来します。

3月はコンスタントに検索されました。36協定の有効期間は1年間で、毎年、管轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。多くの企業が4月1日を36協定の起算日としていることから、更新手続きの集中する3月に検索数が増加したと考えられます。

ちなみに、3月6日は「36(サブロク)の日」。長時間労働の是正や36協定締結の重要性を発信するために、連合が2018年に制定しました。

サジェストワードでは、「36協定 特別条項」が検索されました。36協定で引き上げた月45時間・年360時間の原則的な時間外労働時間を、さらに引き上げることを可能にするのが特別条項付きの36協定です。特別条項は自動的に適用されるものではなく、別途36協定を締結する必要があり、労使間の合意で効力が生じます。

特別条項では「時間外労働は年720時間以内」「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内」「時間外労働が月45時間を超えられるのは年6ヵ月まで」といった限度時間が定められています。「特別」条項という名からもわかるように、特別かつ臨時的な状況に限って適用が認められます。36協定書類の作成実務にあたる人事労務担当者は、該当事業場の労働者代表と連携し、正確な労働状況を把握しなければなりません。

このほかには、「36協定 電子申請」が検索されました。36協定の届出は、政府のシステム「e-Gov」を利用した電子手続きが可能です。電子申請を用いれば、従来のように労働基準監督署に出向く、もしくは郵送する必要がありません。

「36協定」についてもっと知る

国家公務員給与

国家公務員は民間の勤労者とは異なり、争議権や団体交渉権など憲法で保障された労働基本権が制約されています。そこで給与については、人事院が労使当事者以外の第三者の立場に立ち、民間との比較を基に国会と内閣に対して勧告を行うことで、適正な水準を確保しています。

3月24日に検索数が伸びました。人事院の人事行政諮問会議が同日、国家公務員のなり手不足の解消に向けて、民間企業に見劣りしない給与水準の必要性や、官民の給与比較方法の見直しについて提言。具体的には、人事院が毎年の給与改定を勧告する際に比較対象とする民間企業の規模を、現状の「50人以上」から「100人以上」に引き上げること、政策立案などに関わるキャリア官僚は「1000人以上」の企業と比較するよう求めています。人事院は、毎年夏に行う人事院勧告に向けて、これらの提言を踏まえた制度の検討を進める予定です。

国家公務員のなり手不足は深刻化しており、優秀な人材確保のためには、給与面だけでなく、業務効率化や長時間労働の改善など、働きやすい環境整備も重要な課題となっています。

サジェストワードでは、「国家公務員給与 人事院勧告」が検索されました。人事院は、常勤の国家公務員の給与水準を常勤の民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っています。人事院勧告は毎年8月に行われ、勧告内容は閣議決定を経て国会承認を得て決定されます。

「国家公務員給与 引き上げ」「国家公務員給与 改定」というサジェストワードからは、国家公務員の給与引き上げを求める声の高まりや、待遇改善への期待がうかがえます。2024年8月の人事院勧告では、月給を平均1万1183円(2.76%増)、ボーナスを0.1カ月分(4.50カ月から4.60カ月へ)引き上げることを勧告。月給の引き上げ幅が1万円を超えるのは33年ぶりの高水準でした。

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静かな退職

「静かな退職」とは、従業員が正式に退職はしないものの、契約通りの仕事だけを淡々と行い、退職したかのように精神的な余裕を持って働くこと。「Quiet Quitting」として米国を中心にトレンドになっているキーワードで、仕事とプライベートの境界線を明確に引き、「仕事は仕事」と割り切ってやりがいや自己実現を求めない働き方のことを指します。

3月4日に検索数が増加しました。働きがいのある会社研究所が同日発表した、企業で働く20〜59歳の男女(1万3824人)を対象にした調査によると、「静かな退職」状態にある社員の割合は2024年12月時点で2.8%となり、前回(2024年1月)調査より0.4ポイント上昇。年齢別では、40~44歳が5.6%と最も高い割合でした。

サジェストワードでは、「静かな退職 原因」「静かな退職 対策」が検索されました。前回の調査では、静かな退職に至った人のきっかけの多くが入社後であったことが分かりました。企業には静かな退職を単なる若手の価値観の多様化と見過ごすのではなく、対策を打つことが求められています。

また、「静かな退職 50代」「静かな退職 40代」「静かな退職 30代」といった年齢層に関するキーワードも検索されました。各年代における「静かな退職」の現状や特徴、それぞれの年代が抱える仕事への意識の変化に関心が高まっているのでしょう。50代は役職定年や将来への不安、40代はキャリアの停滞や責任の重さ、30代は仕事と家庭の両立など、それぞれの年代特有の要因が、静かな退職につながると考えられます。

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