月間分析レポート[2025年2月]

2025年1月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「同一労働同一賃金」「ダニング=クルーガー効果」「小1の壁」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

同一労働同一賃金

「同一労働同一賃金」とは、「同じ仕事をしている労働者には、雇用形態にかかわらず同じ金額の報酬を支払う」という意味です。「パートタイム・有期雇用労働法」施行に伴い、2020年4月1日から、大企業で「同一労働同一賃金」制度が始まりました。中小企業も2021年4月1日から導入しています。この制度では、正規雇用者と非正規雇用者との間にある待遇差を解消することが規定されています。

2月5日に検索数が増加しました。厚生労働省が同日、「同一労働同一賃金」制度の見直しに向けた議論を開始。2020年の導入から5年が経過し、法改正時に決められていた見直しの時期を迎えています。

厚労省によると、パートタイム労働者の時給は年々増加傾向にあり、賞与などの「特別給与額」は2020年の法改正以降、2割以上伸びました。正社員と非正規社員の待遇差は縮小傾向にあるものの、依然として格差が存在する現状を受け、非正規社員の待遇改善や正社員への転換支援策などが検討され、年内にも結論が出される見込みです。

サジェストワードでは「同一労働同一賃金 派遣」が検索されました。派遣社員も「同一労働同一賃金」の対象です。派遣社員については、派遣先の労働者と均等・均衡待遇にするか、一定の要件を満たした労使協定によって待遇を決定することが義務化されています。

また、「同一労働同一賃金 正社員同士」も検索数が増えました。「同一労働同一賃金」は雇用形態による不合理な待遇差の解消を図る取り組みであるため、正社員間は制度の対象外です。正社員間の待遇差を指摘された場合、対象外という意味で法には抵触しませんが、そのまま放置していると、従業員満足度が低くなり個々のパフォーマンスに影響しかねません。給与・評価制度が不明瞭で従業員の理解が得られないものであれば、組織全体で見直す必要があるでしょう。

「同一労働同一賃金」についてもっと知る

ダニング=クルーガー効果

「ダニング=クルーガー効果」とは、能力の低い人ほど自らを過大評価してしまうという認知バイアスの一種。自分の能力をメタ認知できず、全体のなかでの自らの適格性を正しく査定できないことにより生じるもので、米国コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによって定義されました。

ダニングとクルーガーは、米コーネル大学の45人の大学生を対象に、ユーモア理解、論理的思考、文法など、さまざまな分野で被験者の能力を測定し、自己評価とのずれを調査。その結果、能力の低い人ほど自己評価が高く、逆に能力の高い人ほど自己評価が低い傾向が見られました。二人の論文は、2000年のイグノーベル賞(ノーベル賞のパロディーで、人々を笑わせ、考えさせる業績に与えられる賞)で心理学賞を受賞しました。

サジェストワードで「ダニングクルーガー効果 逆」が検索されたことから、逆の現象である「インポスター症候群」にも関心が集まったと推察されます。「インポスター症候群」とは、実際には能力があるにもかかわらず自己を過小評価し、何かを達成しても「ただ運がよかっただけ」だと考えてしまう心理状態を指します。この傾向は有名人や高いキャリアの人に多く、一般に男性より女性のほうが陥りやすいといわれています。

また、「ダニングクルーガー効果 絶望の谷」「ダニングクルーガー効果 馬鹿の山」が検索されました。これらはダニング=クルーガー効果を説明する際に用いられるグラフに由来するキーワードです。能力が低い段階では「馬鹿の山」と呼ばれる自信過剰の状態にあり、学習を進めるにつれて自分の無能さに気づき「絶望の谷」に陥ります。さらに学習を続けると、徐々に自信を取り戻していくという過程を表しています。

「ダニング=クルーガー効果」についてもっと知る

小1の壁

「小1の壁」とは、共働きの家庭などで子どもが小学生になった途端、放課後の預け先が見つからず、親が従来の働き方を変える必要に迫られたり、退職を余儀なくされたりする問題を指す造語です。

2月中はコンスタントに検索されました。入学シーズンが近づいてきたことから、小1の壁を意識する人が増えたと考えられます。放課後の児童を預ける先としては公的制度の学童保育が一般的ですが、利用者の増加に整備が追いついていないことや使い勝手の悪さが仕事と育児の両立を阻み、社会問題化。また、子どもが就学するまでしか時短勤務制度を利用できない企業があるなど、職場環境にも「小1の壁」の一因があるといわれています。

サジェストワードでは「小1の壁 転職」「小1の壁 退職」が検索されました。より柔軟な働き方ができる職場への転職を検討する人や、仕事と子育ての両立が困難になり退職せざるを得ない人が検索しているのでしょう。企業には、時短勤務制度の延長やフレックスタイム制の導入、学校行事のための休暇取得の推奨など、従業員の仕事と子育ての両立を支援する柔軟な対応が求められています。

育休や短時間勤務など両立支援制度の拡充には、社員にとって働き方の選択肢が広がるメリットがありますが、一方で、長期の利用によりキャリアロスが生じる可能性があることも留意しなければなりません。各種制度の導入・拡充にあたっては、ただ「労働時間を減らせばいい」という発想ではなく、仕事のやりがいと効率を両立させながら、きちんと能力を発揮できる環境の整備が不可欠です。

また、「小1の壁 小4の壁」が検索されました。「小4の壁」とは、子どもが人間関係や学習面で悩み親のサポートを必要とする一方で、学童保育の利用が難しくなるなど、フルタイム勤務の親にとって新たな課題が生じる時期を指します。仕事と子育ての両立の難しさから、親子のストレスが増加することが懸念されます。

「小1の壁」についてもっと知る

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