月間分析レポート[2025年1月]
2024年12月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「アファーマティブ・アクション」「コーポレートガバナンス」「介護休業」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。
アファーマティブ・アクション
「アファーマティブ・アクション(affirmative action)」とは、差別を積極的に是正・改善する取り組みのことで、「差別是正措置」や「積極的改善措置」などと訳されます。社会的・構造的な差別によって不利益を被っている集団(女性や人種的マイノリティ、障がい者ら)に対し、一定の受け入れ枠や目標を定めて優先的に教育・雇用・昇進の機会を提供するといった、実質的な機会均等を確保するための優遇策を指します。
1月8日に検索数が増加しました。1月6日、米マクドナルドがDEI(多様性・公平性・包括性)施策の一部を取りやめる方針を発表したことから注目が集まったと思われます。再選を果たしたトランプ大統領は就任直後から「反DEI」の姿勢を強めており、米企業の間では多様性推進施策の見直し機運が高揚。日系企業にも波及しており、今後の多様性推進施策の行方が注目されています。
「アファーマティブ・アクション 違憲」「アファーマティブ・アクション アメリカ」というサジェストワードが多く検索されました。2023年6月、米最高裁はハーバード大学とノースカロライナ大学の入試における黒人やヒスパニック系志願者への優遇措置を違憲と判断しました。憲法修正14条の「法の下の平等」に反するという理由です。訴訟リスクを懸念し、政府や企業の採用活動にも影響を及ぼす可能性が指摘されています。多様性を重視してきた米国社会にとって大きな転換をもたらす判決となりました。
このほかには、「アファーマティブ・アクション ポジティブ・アクション 違い」が検索されました。どちらもマイノリティへの積極的な機会提供を目的とした取り組みのことで、ほぼ同義で使用されます。日本では一般的に、女性活躍推進の取り組みとして行われる優遇措置を「ポジティブ・アクション」と呼んでいます。
「アファーマティブ・アクション」についてもっと知る
コーポレートガバナンス
「コーポレートガバナンス」とは、企業が株主や従業員、顧客、地域社会など、あらゆる利害関係者に対して責任ある行動を取り、透明性と公正性を確保した経営がなされるよう監視・統制する仕組みです。日本語では「企業統治」と訳されます。
1月中はコンスタントに検索されました。元タレントと女性とのトラブルに端を発する一連のフジテレビ問題を受け、米投資ファンドなどがフジ・メディア・ホールディングスにコーポレートガバナンスの改善を要求したとの報道が相次いだことで、関心が高まったと考えられます。
また1月14日には、日本取締役協会が「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2024」の受賞企業を発表。富士通とリクルートHDが大賞に選ばれたことも話題となりました。
サジェストワードでは「コーポレートガバナンス 内部統制」が検索されました。コーポレートガバナンスと類似した言葉の「内部統制」ですが、その意味合いは異なります。内部統制とは、経営者および従業員全員が順守しなくてはならない規則を定め、公正かつ透明性のある事業活動を行うための仕組みです。経営層の独走を抑止して株主やステークホルダーの利益を守る仕組みを指すコーポレートガバナンスに対し、内部統制は経営層を含む全ての従業員が公正な企業活動を行うために必要な仕組み・プロセスを意味します。
このほかには「コーポレートガバナンス 金融庁」「コーポレートガバナンス コード」が検索されました。企業の行動規範の指針を示すものとして、金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」を策定しています。2015年に導入され、2021年6月の再改訂版では、サステナビリティを巡る課題への取り組みや取締役会の機能発揮などが盛り込まれました。
「コーポレートガバナンス」についてもっと知る
介護休業
介護休業は、要介護状態となった家族の介護を目的として、従業員が一定期間の休みを取得できる制度です。少子高齢化が急速に進み、労働者にとって需要が高い制度の一つとなっています。
2025年4月に改正育児・介護休業法が施行されることに伴い、1月中はコンスタントに検索されました。この法改正は、仕事と介護の両立を支援する制度の周知徹底と利用促進を目的としています。制度の存在を知らずに、あるいは利用できずに離職を余儀なくされるケースを防ぐ狙いがあります。
具体的には、企業に対し、従業員が介護に直面する前の早い段階(例えば40歳)から、介護休業・介護休暇制度などに関する情報提供を義務化。研修や相談窓口の設置なども求めます。家族の介護が必要になったと申し出た従業員には、個別に制度の説明と利用意向の確認を行わなければなりません。テレワーク導入促進のための努力義務規定も設けられています。
サジェストワードでは「介護休業 条件」が検索されました。介護休業の取得条件は、(1) 対象家族が要介護状態にあること、(2)日々雇用ではないこと、(3)入社1年未満または申出日から93日以内に雇用期間が終了する労働者でないこと(労使協定により対象外となるケースも)などが挙げられます。対象家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫で、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できます。
また、「介護休業 介護休暇 違い」を検索する人も多く見られました。介護休業と介護休暇は、どちらも要介護状態の家族を介護するために取得できる休みですが、取得日数や取得単位などで条件が異なります。
介護休業は労働者が継続的に就業することを目的とし、介護の長期的な方針が決まるまでの緊急対応措置として設けられた制度です。一方で介護休暇は、通院や介護サービス事業者との打ち合わせなど、短期間の休みが必要となった際に利用するもの。介護休業よりも手続き方法が厳格ではなく、突発的な介護にも対応できます。介護休暇は、対象家族1人につき年間5日(2人以上で10日)まで、1日または時間単位で取得可能です。