月間分析レポート[2024年12月]
2024年11月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「人手不足」「生理休暇」「税制改正」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。
人手不足
12月10日に検索回数が増加した「人手不足」。東京商工リサーチが同日、2024年1月~11月の人手不足を一因とした倒産件数を発表したことから、関心が集まったと考えられます。調査よると、「人手不足倒産」件数は266件に達し、前年同期比で83.4%増加。円安による物価高騰に加え、賃上げに必要な資金を確保できない小・零細企業ほど、人手不足の影響を深刻に受けていることが浮き彫りになりました。
内閣府と財務省が2024年10~12月期の法人企業景気予測調査の結果を発表した12月11日も検索数が増えました。製造業の大企業(資本金10億円以上)の人手不足感を示す指数はプラス19.4となり、2004年以降で最高値を記録。これまで宿泊業や外食産業といった非製造業や中堅企業で顕著だった人手不足が、大手メーカーにも広がりつつあることが示唆されています。
サジェストワードでは「人手不足 業界」「人手不足 倒産」が検索されました。人手不足が深刻な業界や、人手不足倒産の統計を知りたい人が検索したと考えられます。帝国データバンクが2025年1月に発表した調査結果によると、2024年の人手不足倒産件数は、過去最多の342件。前年の260件から約1.3倍に増加しており、2年連続で過去最多を更新しました。建設業と物流業で全体の4割以上を占めており、「2024年問題」と呼ばれる時間外労働の上限規制の影響を大きく受けたことが、両業種での倒産増加の背景にあると考えられます。
このほかには「人手不足 解消 事例」が検索されました。人手不足の解決策としては、IT化の促進、外国人労働者の採用、労働条件・職場環境の改善、障害者・シニア世代の積極採用、業務プロセスの見直しなどが挙げられます。
中でも、近年注目を集めているのが、AI(人工知能)の活用です。『生成AIで世界はこう変わる』の著者である、AI研究者の今井翔太氏は「給与計算などの定型業務や、人事制度の立案に関わる情報収集・アイデア出し、採用における候補者の評価、従業員や採用候補者の可能性を広げることに使うこともできる」と述べています。
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生理休暇
「生理休暇」とは、生理日の就業が著しく困難な女性が請求した場合に取得できる休暇を指します。労働基準法第68条に基づき、企業は生理休暇の申請があった場合、必ず取得させなければなりません。
12月26日に検索回数が増加しました。同日、大阪府の女性教諭が、生理休暇などを不正に取得して海外旅行に行っていたとして懲戒免職処分となったニュースが報じられたことが影響したと思われます。
サジェストワードでは「生理休暇 労働基準法」「生理休暇 時間単位」「生理休暇 何日」が検索されました。生理休暇に関する規定の内容を知りたい人が多かったことがわかります。労働基準法第68条では「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と定められています。休暇の日数や期間、業務内容に限りはないとされており、半日や時間単位の請求も可能です。また、生理期間や苦痛の程度は人によって異なるため、就業規則などによって生理休暇の日数を限定することはできません。
このほかには「生理休暇 無給」「生理休暇 有給」が検索されました。休暇分の賃金を付与するかどうかは各事業所の判断とされており、現状では多くの事業所が無給としていますが、有給とする企業の割合は増加傾向にあります。厚生労働省の調査(2020年度)によると、生理休暇中は無給としている事業所が71%となっている一方で、有給としている事業所の半数以上は全期間100%支給と、賃金の規定内容は事業所によってさまざまです。
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税制改正
「税制改正」とは、毎年発表される「税制改正大綱」に基づいて行われる、日本の税金制度の変更のことです。
12月20日に検索数が大きく増加しました。この日、自民・公明両党が2025年度の税制改正大綱を決定。注目を集めていた「年収103万円の壁」について、所得税の控除額を123万円に引き上げることが明記されました。
これまでは、年収103万円を超えると所得税が課税され、手取り収入が減るため、パート・アルバイト労働者は就業時間を調整することから「103万円の壁」と呼ばれてきました。これは、所得税の基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)の合計額が103万円であることに由来します。123万円への引き上げにあたっては、所得税の基礎控除額が48万円から58万円に、給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられます。
サジェストワードでは「税制改正 2025」が検索されました。2025年度の税制改正では、「年収103万円の壁」の見直しのほか、確定拠出年金の拠出限度額の引き上げや、中小企業の法人税率の優遇措置 2年間延長などが含まれています。
また「税制改正 スケジュール」が検索されました。税制改正されるまでのおおまかな流れは次の通りです。まず、例年8月末をめどに、各省庁が税制改正の要望を提出。これを与党税制調査会が審議し、政府の税制調査会の考え方を踏まえて「与党税制改正大綱」をまとめます。これをもとに12月ごろ、政府が「税制改正大綱」を閣議決定して公表。税制改正大綱をもとに、所得税法・地方税法の改正法案が1月下旬までにまとめられ、国会に提出されます。両議院で可決されれば、おおむね4月1日から施行されます。