月間分析レポート[2024年11月]
2024年10月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「106万円の壁」「ガラスの天井」「フィルターバブル」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。
106万円の壁
「106万円の壁」とは、社会保険への加入が必要となる年収ラインを指す言葉です。従業員51人以上の企業などに週20時間以上勤務している場合、年収が106万円以上(賃金月額8万8000円以上)になると、健康保険と厚生年金保険の加入義務が発生します。これにより、年収が増えても手取りが減ってしまう「働き損」の状態になる可能性があるため、壁を意識して働き方を調整している人が多いことから問題視されています。
11月8日に検索回数が増加しました。同日、厚生労働省がパート労働者らの厚生年金に加入する年収要件を撤廃する方針を固めたと報道されたことが理由と考えられます。「106万円の壁」の撤廃時期は、2026年10月と想定されています。
なお、国民民主党が引き上げを主張し注目を集めている「103万円の壁」は、所得税が課税されるかどうかの境目となる壁です。
サジェエストワードでは「106万円の壁 130万円の壁」が検索されました。「130万円の壁」とは、被扶養者の年収が130万円を超えると扶養から外れ、自分で社会保険に加入するか、国民健康保険に加入する必要が生じるラインです。
このほかには「106万円の壁 交通費」が検索されました。交通費が「106万円の壁」の計算に含まれるのか、実質的な手取り額に影響はあるのかを確認したい人が検索したと考えられます。「106万円の壁」には原則として、交通費や残業代、ボーナスは含まれません。
また「106万円の壁 学生」が検索されました。原則として大学生・専門学校生は「106万円の壁」の対象外ですが、休学中や夜間学生は対象となります。
「106万円の壁」についてもっと知る
ガラスの天井
「ガラスの天井」とは、英語の「グラスシーリング」(glass ceiling)の訳で、組織内で昇進に値する人材が、性別や人種などを理由に低い地位に甘んじることを強いられている不当な状態を、キャリアアップを阻む“見えない天井”になぞらえた比喩表現です。女性の能力開発を妨げ、企業における上級管理職への昇進や意思決定の場への登用を阻害する要因として多く用いられます。
11月6日に検索数が急増しました。アメリカ大統領選挙でカマラ・ハリス副大統領が敗れ、米国初の女性大統領誕生が実現しなかったことが背景にあると考えられます。サジェストワードでも「ガラスの天井 大統領」「ガラスの天井 ハリス」が検索されたように、ハリス氏の敗北は、女性や有色人種が直面する「ガラスの天井」の象徴的な事例として注目を集めました。
サジェエストワードでは「ガラスの天井 ヒラリー・クリントン」も多く検索されました。2016年の大統領選で敗北したヒラリー・クリントン氏も、「ガラスの天井」という言葉を用いて女性の社会進出の難しさを訴えました。
日本では政治に加えて経済の分野でも女性の進出が遅れており、ジェンダーギャップ指数の低さが問題となっています。世界経済フォーラムの2024年版ジェンダーギャップ指数では、日本は146ヵ国中118位。経済分野は、特に女性管理職比率の低さが足を引っ張り、120位と低迷しています。
「ガラスの天井」についてもっと知る
フィルターバブル
「フィルターバブル」とは、インターネットで、利用者の思想や行動特性に合わせた情報ばかりが作為的に表示される現象のことをいいます。サーチエンジンが、検索履歴や購買情報から行動パターンを学習することによって、利用者の志向に近い情報が優先的に表示され、望まない情報から遠ざけられます。便利な反面、多様な情報に触れる機会が減り、視野が狭くなるという危険性も指摘されています。
11月18日に検索数が急増しました。兵庫県知事選で前知事の斎藤元彦氏が再選を果たしたことが影響していると考えられます。選挙戦の中で、斎藤氏はSNSやYouTubeを積極的に活用。斎藤氏への好意的な意見がネット上で増幅され、有権者の投票行動へとつながったとされています。このように選挙戦においても、SNSなどで候補者の情報が選別され、有権者に届く可能性があることから「フィルターバブル」が改めて注目されています。
サジェストワードでは「フィルターバブル エコーチェンバー」が検索されました。「エコーチェンバー」とは、SNSなどで自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローした結果、自分と似たような意見ばかりが返ってくる状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえた現象です。フィルターバブルはこうしたエコーチェンバー現象を助長し、偏った情報がさらに強化され、異なる意見や視点が排除されてしまう危険性が懸念されています。
また、「フィルターバブル 例」も検索されました。フィルターバブルの事例としては、特定の政治思想を持つ人がSNSで同じような意見ばかりが表示される、購入履歴にひもづいたECサイトの広告が表示される、閲覧したニュースに関連するページがレコメンドされる、といったケースが挙げられます。