月間分析レポート[2024年10月]

2024年9月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「育児休業」「就職氷河期」「人手不足倒産」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

育児休業

「育児休業(育休)」とは、子どもを養育する義務のある労働者が、1歳未満の子を養育するための制度です。社員の定着や働きやすい組織づくりに影響する育児休業は、働き方改革の成否を左右する、重要な制度の一つといえます。

10月中はコンスタントに検索されました。改正子ども・子育て支援法などが成立し、10月1日から順次施行されていることを受け、検索回数が増えたと考えられます。改正法の中で育休に関しては、「育児休業給付の給付率引き上げ」と「育児時短就業給付の創設」が挙げられます(いずれも2025年4月1日施行)。

育児休業給付金とは、育休中の収入減をサポートするために国から支給される給付金です。現行は育休開始から半年間は賃金の67%(手取りで8割相当)、その後は50%が支給されます。今回の改正によって、子の出生直後の一定期間以内に両親ともに14日以上の育休を取得すると、最大28日間、休業開始前賃金の13%が上乗せされ、実質的に休業前の手取り給与額と同額相当の給付金を受け取れます。

また、これまで育児のために時短勤務を選択して賃金が低下した従業員に対する公的な給付制度はありませんでしたが、今回の法改正に伴い、2025年4月から育児時短就業給付が創設される予定です。2歳未満の子を養育するために時短勤務する従業員に対して、時短前の賃金を超えない範囲で、時短勤務中の賃金額の10%が給付されます。

さらに、厚生労働省は育休中の同僚をフォローする社員を支援するため、2025年度から中小企業への助成金の対象を広げる方針です。

サジェストワードでは、「育児休業 男性」というキーワードが検索されました。厚生労働省が7月に発表した「令和5年度雇用均等基本調査」によると、2022年度の男性の育児休業取得率(産後パパ育休を含む)は30.1%で、前年より13ポイント上昇。過去最高を更新しました(女性は84.1%で前年度比3.9ポイント増)。

「育児休業 社会保険料免除」というサジェストワードからは、育休中の経済的な負担軽減に関心を持つ人が多いことが読み取れます。従業員が育休を取得した際、その期間中の社会保険料は、企業と従業員の負担分がともに免除されます。免除期間は、育児休業を開始した月から終了した月の翌日が属する月の前月まで。例えば、従業員が4月15日から12月14日まで育休を取得した場合、4月分から11月分までの保険料が免除されます。社会保険料は月単位で徴収することとなっているため、保険料を日割り計算する必要はありません。

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就職氷河期

「就職氷河期」とは、バブル経済崩壊後の長期不況の影響を受けて、就職難が社会問題化した時期を指す表現です。雑誌「就職ジャーナル」から生まれた造語で、1994年の第11回「新語・流行語大賞」の審査員特選造語賞を受賞しています。

10月26日に検索回数が大きく増加しました。近年、少子化に伴う人手不足が深刻化する中、政府や企業が就職氷河期世代への就労支援策を打ち出しています。10月の衆議院選挙でも、就職氷河期世代支援策が争点の一つとなったことで、注目を集めたと考えられます。

サジェストワードでは「就職氷河期 いつ」「就職氷河期 年齢」が検索されました。就職氷河期の定義について知りたい人が検索したと考えられます。一般的には1993年から2005年頃までを指し、金融不安やITバブルの崩壊が重なり、雇用環境がさらに冷え込んだ1990年代後半から2000年頃を特に「超氷河期」と呼ぶこともあります。2024年時点で40代前半から50代前半の世代に当たります。希望する仕事に就けなかった人は多く、現在も経済的・社会的な影響を受けている人が少なくありません。


「就職氷河期 リーマンショック」も多く検索されました。就職氷河期とリーマンショックは、どちらも経済危機に関連した言葉であり、両者の関連性や違いについて知りたいと考えた人が検索したと推測されます。リーマンショックは2008年に発生した世界的な金融危機で、これにより再び就職状況が悪化し、「就職氷河期の再来」とも言われました。既に就職難であった就職氷河期世代にも、さらなる打撃を与えました。

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人手不足倒産

「人手不足倒産」とはその名の通り、労働力不足が原因で倒産することをいいます。人手不足倒産に陥る主な理由として、新たな労働力の確保が困難なことや、コア人材の退職により事業の継続が困難になること、新規採用やつなぎ止めのための人件費のアップによる収益の悪化などが挙げられます。

10月4日に検索数が急上昇しました。同日、帝国データバンクが2024年度上半期の人手不足倒産に関する動向調査を発表したことから、注目が集まったと考えられます。

同調査によると、法的整理(倒産)となった企業のうち、従業員の離職や採用難などにより人手を確保できなかったことを要因とする「人手不足倒産」の件数は163件と、年度上半期の過去最多を記録しました。

サジェストワードでは、「人手不足倒産 建設」が検索されました。人手不足倒産が特に顕著なのが、「2024年問題」が指摘されている建設業と物流業です。帝国データバンクの同調査でも、この2業種で人手不足倒産全体の45.4%を占めています。両業種とも約7割の企業が人手不足を感じており、これは全体の51.5%を大きく上回ります。コロナ禍で一時的に緩和された人手不足感は、経済回復とともに上昇。2024年4月の時間外労働の上限規制適用が追い打ちをかけ、倒産が増加したと考えられています。

このほかには「人手不足倒産 推移」が検索されました。前述の調査によると、通年での過去最多は2023年度の313件で、2022年度の2.1倍という高い伸び率を記録しました。今回発表された2024年度上半期(163件)の件数は、2023年度上半期(135件)を大幅に上回ることから、記録的なペースで増加していることがわかります。

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