月間分析レポート[2024年8月]

2024年7月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「嫁ブロック」「国家公務員給与」「つながらない権利」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

嫁ブロック

「嫁ブロック」とは、既婚男性が妻に転職や独立を反対、阻止(ブロック)されることをいいます。もともとは企業の採用担当者やヘッドハンターなどが使っていた業界用語で、内定を出しても妻の“ブロック”で採用が失敗に終わることを指す言葉でした。

転職市場の活発化に伴い、中途採用関連の検索が増加傾向にあります。そのような中、嫁ブロックに関するマンガがSNS上で話題となり、8月23日に検索回数が増加しました。

エン ・ジャパンが、転職サイト「ミドルの転職」利用者(35歳以上)を対象に「転職の家族ブロック」に関するアンケートを行ったところ、33%が家族に転職を反対された経験があり、その半数(51%)が内定辞退の経験があると回答しました。転職を反対した家族は「妻」、つまり“嫁ブロック”が66%で最多。反対された理由で最も多かったのは「転職自体に良くない印象がある」(44%)で、「年収が下がる」(39%)、「『大手勤務』等、肩書きがなくなる」(21%)と続きました。

サジェストワードでは「嫁ブロック 対策」が検索されました。妻に黙って転職活動を行い、採用が決まりそうになって初めて状況を伝えたところ猛烈な嫁ブロックに遭った、というケースは少なくありません。転職活動を始める前にコミュニケーションを十分にとり、互いの価値観や思いをすり合わせておくことが重要です。最近では、妻ら家族向けの採用説明会を開く企業も現れるなど、企業側の採用手法にも影響を与えつつあります。

このほかには「嫁ブロック 投資」「嫁ブロック 起業」が検索されました。転職と同様に、投資や起業に伴うリスクを配偶者が懸念しているケースが多いことから、検索されたと考えられます。

「嫁ブロック」についてもっと知る

国家公務員給与

国家公務員は民間の勤労者とは異なり、争議権や団体交渉権など憲法で保障された労働基本権が制約されています。一方で給与については、人事院が労使当事者以外の第三者の立場に立ち、民間との比較を基に国会と内閣に対して勧告を行い、適正な水準を確保することにしています。

8月8日に検索回数が増加しました。人事院が同日、国家公務員初任給を大卒総合職で2万9000円、高卒一般職で2万1000円余り引き上げるよう勧告したことで、関心を集めたようです。勧告通りとなれば、いずれも過去最大の引き上げ額となる見込みです。

サジェストワードでは「国家公務員給与 人事院勧告」が検索されました。今回の勧告の内容やその背景を詳しく知りたい人が検索したと考えられます。国家公務員の人事管理を担っている人事院の主な役割のひとつが、給与改定の勧告です。人事院は毎年、民間企業に勤める従業員の4月時点の給与水準を調査し、国家公務員の水準と比較して勧告を行います。対象は、検察官や自衛官らをのぞく国家公務員約28.5万人です。

このほかには、「国家公務員給与 推移」「国家公務員給与 引き上げ」が検索されました。ここ数年間で国家公務員の給与は徐々に引き上げられており、特に最近の引き上げは民間で広がる賃上げの状況を反映しています。今回は月給の引き上げ幅も大きく、平均で2.76%(1万1183円)引き上げるよう勧告しました。実現すれば33年ぶりの高水準となります。

「国家公務員給与」についてもっと知る

つながらない権利

「つながらない権利」とは、労働者が勤務時間外や休日に仕事上のメールなどへの対応を拒否できる権利のことです。

8月28日に多く検索されました。オーストラリアで8月26日、勤務時間外に勤務先から電子メールや電話などで連絡があっても対応しない「つながらない権利」を認める新たな法律が施行されたことから、注目を集めたと考えられます。新しい法律では、一部の例外を除き、労働者は勤務時間外の連絡に応じなくても罰せられません。同様の法律はフランスやスペイン、ベルギーなどでも施行されており、働き方改革に関する新しいキーワードとして世界的に関心が高まっています。

サジェストワードでは「つながらない権利 日本」「つながらない権利 厚生労働省」が検索されました。各国で法制化が進む中、国内の状況について気になった人が検索したと考えられます。日本では、つながらない権利は法制化されていませんが、厚生労働省が2021年に公表した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」は、勤務時間外の連絡に対応しなかったことを理由に不利益な人事評価を行うことは適切ではないとしています。

在宅勤務やリモートワークなど、時間と場所にとらわれない働き方も徐々に広がってきました。「つながらない権利」をどう取り扱うかは、日本でも避けて通れない課題でしょう。

このほかに印象的なサジェストワードは「つながらない権利 導入企業」です。国内での事例として、ジョンソン・エンド・ジョンソンは午後10時以降と休日の社内メールのやり取りを原則禁止しているほか、三菱ふそうトラック・バスでは、長期休暇中に社内からのメールを受信拒否・自動削除できるシステムを導入しています。

「つながらない権利」についてもっと知る

月間分析レポート

カテゴリ別トレンドワード [会員限定] 無料会員登録