月間分析レポート[2024年5月]

2024年4月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「カスハラ」「配偶者控除」「2025年の崖」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

カスハラ

5月24日に「カスハラ」の検索回数が増加しました。全国初のカスハラを防ぐ条例の制定を目指している東京都。条例化に向けた方針が複数のメディアで報じられたことから、注目が高まったと考えられます。4月に引き続き、「カスハラ」に加えて「カスタマーハラスメント」の検索数も増えました。

5月22日に東京都が労働団体や経済団体などと開いた会議では、民間事業所だけでなく役所や学校などあらゆる職場でカスハラを禁じ、官民を問わず防止に向けた対策を求める方針を明らかにしました。

サジェストワードでは「カスハラ 東京都」「カスハラ 公務員」が検索されました。東京都の基本方針では、カスハラについて「就業者に対する暴行、脅迫などの違法な行為」または「暴言、正当な理由がない過度な要求など不当な行為で就業環境を害するもの」と定義し、「何人(なんぴと)も行ってはならない」と明記。つまり、店員と顧客のほか、受発注関係にある事業者、公務員と住民、議員と行政職員など、あらゆる間柄においてカスハラを禁じるということです。ただし、罰則は設けないとしています。東京都は、2024年秋の都議会での制定を目指しています。

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配偶者控除

「配偶者控除」とは、専業主婦(夫)など収入が一定未満の配偶者がいる場合に、一定の金額が所得から控除される制度です。所得控除の一種であり、法律上の配偶者がいる場合に適用できます。

5月14日に検索回数が増えました。13日に開かれた税制のあり方を議論する「政府税制調査会」で配偶者控除の見直しを求める声が出たほか、14日に開催された経済再生担当大臣の懇談会「経済財政検討ユニット」でも、配偶者控除の見直しで女性の就労を促す提案がなされました。これらのニュースが報じられたことで検索数が増加したと推測されます。

サジェストワードでは「配偶者控除 配偶者特別控除 違い」「配偶者控除 年収」が検索されました。配偶者控除にまつわる年収のライン(壁)とされているのは「103万円」「150万円」「201万円」の三つです。

配偶者控除は、控除の対象となる配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与のみの年収で103万円以下)の場合、最大で38万円の所得控除が受けられるというものです。103万円を超えると、扶養者である配偶者に対して適用される配偶者控除が、配偶者特別控除に切り替わります。現在は配偶者特別控除の控除額が拡大されているため、年収103万円〜150万円であれば、103万円の壁を超過したとしても、扶養者である配偶者の所得税や住民税は増加しません。

150万円は、配偶者特別控除を満額受けられなくなるラインです。被扶養者の年収が150万円を超過すると、扶養者である配偶者が適用できる配偶者特別控除額は段階的に縮小するため、年収が増えるほど配偶者の所得税や住民税も増加します。そして、配偶者の年収が201万円(厳密には201.6万円)以上になった場合は、配偶者特別控除の控除額がなくなります。

このほかには「配偶者控除 なくなる」が検索されました。配偶者控除は1961年、「夫と専業主婦の妻と子」世帯を念頭に、妻の「内助の功」を税制上評価するなどの趣旨で導入されたと言われています。共働き世帯が増加する中、専業主婦やパート主婦が自分の基礎控除と夫の配偶者控除を受ける「二重控除」が不公平ではないかと指摘されています。また、人口減社会で女性の労働力の活用が叫ばれているにもかかわらず、パートなどで働く妻が前述の「103万円の壁」を越えないように働く時間を抑える就業調整につながっているという問題も指摘されてきました。

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2025年の崖

「2025年の崖」とは、複雑化・ブラックボックス化した従来型のレガシーシステムが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の実行を妨げていることを問題視したキーワードです。経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」で指摘されました。レポートでは、2025年までにDXを達成できなければ最大12兆円の経済損失が毎年発生すると試算されています。

検索回数が増加した5月13日には、システム障害の長期化で大手菓子メーカーが製造するチルド食品が長期にわたり出荷停止し、人気商品が店頭から姿を消したことが話題になりました。基幹システムの障害を発端とした同様のトラブルが相次いでおり、ニュースなどでは「レガシーシステムの刷新が必要」という文脈で「2025年の崖」の問題に触れられたことから、注目が高まったと考えられます。

サジェストワードでは、「2025年の崖 なぜ2025年」が検索されました。2025年は、21年以上稼働している基幹システムが日本全体の6割に達すると予測されています。また、古いプログラミング言語を知る人材が定年退職の時期を迎えてしまうなど、IT人材不足の問題も重なるタイミングであることが指摘されています。

このほかには「2025年の崖 レガシーシステム」が検索されました。レガシーシステムとは、企業の基幹システムのベースとなっていることが多いメインフレーム(汎用コンピュータ)を利用して構築されたシステムなどを指します。これらは、各ベンダー独自の仕様で構築されていることが多く、長年にわたって機能の拡張が何度も繰り返されました。その結果システムが肥大化し、管理者がいないケースも少なくありません。中にある膨大なデータに影響が出ることを恐れて、システムの刷新を図ることができないというのが多くの企業の現状です。

しかし、保守や運用が属人化したレガシーシステムを維持するには高いコストがかかるため、いずれはDXに踏み切らなければなりません。これまで移行作業は後回しにされてきましたが、経産省が「2025年の崖」を提言したことで、DXが急務であるという認識が広まりました。

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