月間分析レポート[2024年4月]

2024年3月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「カスハラ」「アルムナイ」「知的財産権」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

カスハラ

「カスハラ(カスタマーハラスメント)」とは、企業の従業員に対する顧客からの過剰な要求や悪質なクレームのことを指すハラスメントの一種です。商品やサービスに関係ない要求や嫌がらせ、過度な値引き要請、どう喝や暴言、インターネット上の誹謗(ひぼう)・中傷などの行為が当てはまります。企業は社外の人から受けるカスハラに対しても、パワハラやセクハラなど、ほかのハラスメントと同様に対策を講じる必要があります。

4月27日に検索回数が増加しました。同日、JR東日本がカスハラに対応する方針を発表。カスハラが行われた場合「お客さまへの対応をいたしません」と表明したことが話題を呼び、検索数が増えたと推測できます。4月は「カスタマーハラスメント」の検索回数も同様に伸びました。

サジェストワードでは「カスハラ 東京都」が検索されました。全国初の「カスハラ防止条例」の制定に向けて検討を進める東京都の取り組みについて、関心のある人が検索したと考えられます。4月22日に開かれた専門家らによる検討部会では、カスハラは「就業者に対する暴行、脅迫などの違法な行為」または「暴言、正当な理由がない過度な要求など不当な行為で就業環境を害するもの」と定義付ける方針などが示されました。

このほかには、「カスハラ ガイドライン」「カスハラ 対応」が検索されました。生活関連産業の労働組合「UAゼンセン」の「悪質クレームの定義とその対応に関するガイドライン」では、悪質クレームの要求態度は大きく分けて「長時間拘束型」「リピート型」「暴言型」「暴力型」「威嚇・脅迫型」「権威型」「店舗外拘束」「SNS/インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷」の8種類があるとされています。ガイドラインでは、これらに対して企業がとるべき対応は「(1)悪質クレームの定義と判断基準を明確にする」「(2)事前の啓蒙・教育を行う」「(3)毅然(きぜん)とした態度を示す」と明示しています。

「カスハラ」についてもっと知る

アルムナイ

「アルムナイ(アラムナイ、alumni)」はalumnusの複数形で、本来は「卒業生、同窓生、校友」という意味です。転じて、ビジネスシーンでは企業の退職者を指します。アルムナイ採用は、自社を退職した人にアプローチし、再度雇用する採用手法です。海外の企業では、一度自社を退職したアルムナイを貴重な人的資源としてとらえ、組織化して活用する事例が少なくありません。

4月21日に検索回数が増加しました。同日に、アルムナイ採用を通じて20~30代の若手・中堅を呼び戻そうとする企業の取り組みに関する記事が報じられたことから、注目が高まったと考えられます。

サジェストワードでは「アルムナイ 導入企業」が検索されました。近年、自社の退職者と定期的・継続的なコミュニケーションをとることで、優秀な人材の再雇用や退職者のネットワークを活用した人材獲得を目指す企業が増えています。三菱重工、住友商事、日本製鉄などが例として挙げられます。

このほかには、「アルムナイ メリット」「アルムナイ デメリット」が検索されました。アルムナイ採用の強みは、即戦力や組織風土を理解している人材を採用できる点です。また対外的には、「従業員が退職してもまた戻りたいと思える会社」というイメージの構築につながり、自社のブランディング向上が期待できます。

一方で、企業はアルムナイの採用後には、既存社員と協働できるような環境構築が必要になるなど、慎重に対応すべき点もあります。また、アルムナイ採用はブランディングにつながる反面、「退職しても元の会社に戻ってこられる」などと、退職へのハードルを下げてしまうことも懸念されます。

「アルムナイ」についてもっと知る

知的財産権

知的財産権とは、知的創造活動を行った人を保護するために認められた「他人に無断で利用されない」権利のことで、「知的所有権」や「無体財産権」とも呼ばれます。

知的財産権には、大きく分けて「産業財産権」と「著作権」があります。産業財産権は、発明した技術を保護する「特許権」、物品の形状、構造または組み合わせに関わる考案を保護する「実用新案権」、製品や商品の特長的なデザインについて独占権を認める「意匠権」、ネーミングやロゴマークを保護する「商標権」の四つに分けられ、いずれも特許庁が所管しています。著作権は登録が不要で、著作物が完成した時点で自動的に権利が発生します。

4月22日から25日にかけて検索回数が増加しました。22日に内閣府が、生成AI(人工知能)と知的財産権保護のあり方を考える検討会の中間とりまとめ案を示したことが影響していると推測されます。

参考:AI 時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ (案)│内閣府
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ai_kentoukai/gijisidai/dai7/siryou1.pdf

生成AIをめぐる知的財産権への懸念としては、特に著作権の侵害リスクが挙げられます。また、他人が労力を費やして収集・構築した事実・データを AI に学習させることや、他人の著作物を AI に学習させ、その著作物と類似する作風を有するコンテンツが生成されることへの懸念がクリエイターたちから指摘されています。

意匠法や商標法において、意匠や商標などの知財をデータ学習に用いることは、原則として規制の対象外です。また、現行の著作権法では「AI開発のような情報解析等において、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用行為」は原則として著作権者の許諾なく利用することが可能です。ただし「必要と認められる限度」を超える場合や「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は、この規定の対象とはなりません。

中間とりまとめでは、AIの学習を拒否する技術や利用規約の作成を通じて知的財産を守る取り組みの例が示されました。政府は、AI技術の適正な進歩と知的財産権の保護の両立を目指す方針です。

サジェストワードでは「知的財産権 著作権 違い」が検索されました。前述の通り、知的財産権の一つとして著作権は位置しています。

「知的財産権」についてもっと知る

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