Interview

一般社団法人 人材サービス産業協議会 理事長、副理事長に聞く
業界4団体が連携して取り組む三つのプロジェクトの方針とは [3/4ページ]

非正規労働者を評価する仕組みが必要

―― 具体的にはどのようなことを考えていますか。

中村: 最初は、派遣と請負から始めます。我々が労働者を雇用しているからです。処遇や教育・キャリアアップの面での課題を解決していくためには、まず、その人を評価しなければなりません。どういう仕事をしていて、どういった能力を持っていて、どんな成果を上げたのか。有期労働者は、雇用主が定期的に変わりますので、これを何とか横断的に、共通のフォーマットに落とし込んでいきたいと考えています。各社が独自のフォーマット、テーブル、言語を持っていると、評価する際に非効率です。これを何とか共通化していきたい。雇用主である我々がやろうと思えばできる話です。

高橋:ただし、問題もあります。派遣スタッフを評価する際には、派遣先企業の協力が必要になることです。しかし、派遣先企業にとっても、派遣スタッフの評価はぜひとも欲しい情報のはず。キャリア履歴が残るようなものができれば、派遣先企業にとってメリットは大きいでしょう。派遣スタッフにとっても待遇の改善やキャリアアップにもつながっていくはずです。さらに本人が次の仕事に移る時に、こういう仕事をしてきましたという身分を保証する「パスポート」のような効果を持つと思います。

中村恒一氏 Photo中村:日本の派遣の現状は、座る席に値段が付いているようなものです。例えば、その椅子が時給1200円ならば、そこに誰が座っても1200円なのです。しかし、同じ仕事でも誰がやるのかによってパフォーマンスは異なります。だとしたら、その人と能力や成果に応じた報酬を考えなくてはなりません。値段が座る椅子ではなく人に付くようになれば、本人のやる気も大きく違ってくるでしょうし、ひいてはチーム、組織としての生産性向上にも寄与していきます。結果として、成果を上げれば次の契約更新の時には時給が100円上がる、といった仕組みになればいいと思います。

アルバイトやパートをうまく活用している企業では、そうした評価・昇給の制度を持っています。10円きざみで細かく時給を上げて、働く人のモチベーションを向上させているのです。そういう取り組みを我々も行っていきたいと考えています。

求められるミドル層の流動化を促進するツールの作成

―― 二つ目のプロジェクトでは、どのようなことに注力していきますか。

高橋:これまでミドル層について、我々は積極的に手を付けていませんでした。しかし、2020年には働く人の平均年齢は45歳を超えます。日本の労働者のボリュームゾーンが40~50歳代になります。その人たちに対するガイドがきちんとできないのは、人材サービス会社としてどうなのか。そういう問題意識がありました。キャリアチェンジプロジェクトの中で取り組まなければならない課題はいくつかあるのですが、まずは、これからボリュームゾーンとなるミドルの人たちに焦点を当てていきます。

先ほどの非正規労働者のキャリアアップのための評価と似ていますが、ミドル層でも、エントリーフォーマットのようなものを統一化できないかと考えています。求人側が聞きたいことと、求職者側が表現したいことがフォーマット上で統一された状態で採用活動・転職活動が行われればいいと思います。新しいルールやガイドができれば、求人側・求職者側の双方の時間が短縮されます。

高橋広敏氏 Photo各社のフォーマットにはそれぞれ特徴がありますが、時間はかかったとしても、一定のベースとなるものを整えていきたい。そのためにも、プロジェクトでは、企業をはじめ、経済産業省、厚生労働省などに声をかけて、横断的に通用するようなキャリアパスポートの形を考えていきたいと思っています。

これは再就職支援会社と求人広告会社とハローワークが一緒にやろうと言えば、できることです。そのあとは、企業がこれは使いやすい、便利だと思うようになればいいわけです。これができれば、求人活動、求職活動の時間がかなり短縮され、選考プロセスは進みやすくなり、効率的になると思います。その上で、フォーマットに個人や企業が独自のプラスアルファを、付け加えていけばいいのです。

中村:ただ、ミドル層の場合、難しい問題があります。ミドル層の評価は、その人の保有能力がどうなのかということだからです。能力には基礎能力と専門スキル、ビジネススキルとありますが、ミドルになればなるほど専門スキルが買われます。しかし、異業種、異職種に転職するということは、この専門スキルを捨てるということになり、評価の対象から外れてしまうのです。

要は、今持っている保有能力と、転出先で求められる保有能力を変換するプロトコルがいるわけです。そのためには、能力開発をしなければなりません。問題は、その能力開発コストを誰が持つかということです。

また、個人側から見ると、本来、高く売れるであろう専門スキルを捨てなくてはいけないので、結果的に年収が下がるケースが多くなります。それから、働く地域が変わることもあります。しかし、家庭を抱えているミドルには、そうした広域流動性がありません。これからミドル層の異業種・異職種への転職が増える中、こうした問題をどう解決していくかが重要です。

高橋:ミドルの人材流動化を進めるためには、基礎能力、専門スキル、ビジネススキル、といったポータブルなビジネススキルと、ヒューマンスキルがうまく表現できるフォーマットが必要です。それが表現された上で、それを見て企業側とうまくマッチングできるプロトコルを編み出すことができると、プロジェクトの意味は大いにあると思っています。


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