タレントマネジメントシステムのマーケティング・営業体制

代表的なマーケティング・営業体制

タレントマネジメントシステムを提供する企業の多くが、ビジネスモデルをオンプレミスからSaaS(クラウド)へ移行しています。SaaSを提供する企業の組織体制としては、ザ・モデル型※が主流を占めるようになりました。

※ザ・モデル型:営業体制を四つの部門に分け、専業化する体制。セールスフォース・ドットコムで活用されてきたもので、今では多くのSaaS企業で導入されている。

ザ・モデル型の四つの部門とは、「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」。それぞれの部門が、見込み顧客(リード)の獲得から営業活動や受注、その後の支援などを連携しながら行っていきます。

この中でも最近特に重視されているのが、「カスタマーサクセス」です。ビジネスモデルが一括納品から、月額課金などに変化し、顧客に継続して利用してもらうため(解約されないようにするため)、常に顧客に伴走することが必要になってきたのです。

カスタマーサクセスは、顧客の課題を的確に把握して最適な運用方法をアドバイスし、サポートします。導入の立ち上げ支援をはじめ、その後の利用状況を把握し、運用に関する相談などの支援を行います。

タレントマネジメントシステムを導入する背景や動機は、顧客によって異なります。また、活用方法もさまざまです。そのため、カスタマーサクセスが顧客のニーズを捉えて、きめ細やかなサービスを提供していく必要があるのです。

なお、カスタマーサクセスの評価の指標としてよく挙げられるのが、チャーンレート(解約率)の低減や、アップセル・クロスセルによるLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)の向上です。サービスの導入から運用まで継続して顧客と長期的な関係を築くことが求められます。

カスタマーサクセスの主な業務

カスタマーサクセスの主な業務を流れに沿って解説します。

1.立ち上げ(オンボーディング)

タレントマネジメントシステムの顧客企業に対し、専任のスタッフがサポートを行います。最初に顧客企業の担当者とカスタマーサクセスとでキックオフの場を設けます。顧客企業の課題をあらためて確認し、解決したい問題とそのゴールをすり合わせます。

運用開始後も、メール、電話、Web会議、チャットなどを用いて顧客からの問い合わせに対応します。定期的な振り返りの場を設け、活用状況に応じたアドバイスを実施。顧客の情報を基に分析のサポートを行うこともあります。システムの導入担当者だけでなく、経営層や現場の社員向けにレクチャー、相談の場を設ける場合もあります。

2.顧客のニーズ把握とアップセル提案

カスタマーサクセスが真に価値を発揮するためには、顧客がタレントマネジメントシステムを使ってどのような成果を上げたいと考えているのかを明確に把握しておかなければなりません。顧客からの質問に対しても、単に回答するだけでなく、質問の背景まで理解しておく必要があります。課題を解決するために、顧客が現在利用しているプランよりも上位のプラン、あるいはオプションの購入を提案することもあります。カスタマーサクセスの業務には自社の売上を増やす(アップセル)提案をすることも含まれます。

3.開発やマーケティング部門へ情報共有・改善提案

カスタマーサクセスは、顧客と最も多く接点を持つポジションであり、顧客との関係性も深くなります。その強みを生かして、顧客の声を社内に伝え、よりよいサービス提供につなげる役割も求められます。たとえば、顧客が感じる使いづらい点、つまずいてしまう点を開発部門にフィードバックしたり、これまで気付いていなかったセールスポイントをマーケティングや営業部門に共有したりします。その結果、プロダクトが改善・支持されていき、顧客に選ばれ続けるようになっていきます。

4.ユーザー会の企画、進行など

顧客企業同士が集う、ユーザー会やユーザーコミュニティーの運営を、カスタマーサクセスが担う場合もあります。活用ノウハウや悩みを共有できる場をつくり、顧客企業同士のネットワークをつくることで、顧客によりプロダクトの価値を感じてもらうこと、エンゲージメントを高めることが目的です。また、顧客企業同士のコミュニケーションを通じて、自社プロダクトに足りないコンテンツやブラッシュアップすべき点を知ることもできます。

5.その他の業務

上記で挙げた以外にも、カスタマーサクセスにはさまざまな業務があります。顧客との契約更新などフィールドセールスに近い業務を行ったり、サービスのアップデート時にはプロダクト責任者と連携して、プロジェクトを担ったりすることもあります。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサポートのメインの役割は、顧客企業がシステムを利用する上での問題を迅速かつ効率的に解決することです。例えば、顧客企業から質問や相談を電話やメール・チャットなどで受け付け、回答する窓口としての役割を果たします。

カスタマーサクセスは能動的に顧客企業と接点を持ち、顧客企業の成功の支援を行うことが役割であるのに対し、カスタマーサポートは問い合わせを受けてから対応するという姿勢になります。そのため、カスタマーサポートの成果指標は問い合わせへの対応回数や返信時間などになり、カスタマーサクセスの成果指標とは異なります。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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