中途採用のダイレクトリクルーティングを成功させるには
『日本の人事部』おすすめのサービス―自社の採用力を高めるPDCAの構築が鍵に
中途採用で売り手市場が続く現在、応募を待つ「守りの採用手法」だけでなく、自社が欲しい人材に直接アプローチする「攻めの採用手法」を取り入れる企業が増えています。そこには、企業と個人との接点づくりの障壁を下げるITツールの進化によって、より「人材と向き合う」採用活動が可能になっているという背景があります。
そこで『日本の人事部』では、ダイレクトリクルーティングの直近トレンドをはじめ、導入のメリットや成功のポイントを整理しました。おすすめのダイレクトリクルーティングサービスについても紹介します。
ダイレクトレクルーティングとは
~注目される背景と直近トレンド
まずダイレクトリクルーティングの意味をあらためて確認し、需要が高まっている背景と直近のトレンドについて見ていきます。
ダイレクトリクルーティングとは
ダイレクトリクルーティングとは、人材獲得に向けて企業が能動的に採用活動を行うことです。具体的には、人材データベースを活用して候補者を探し、メールを送るなどして接触します。また、SNSで候補者とつながり、採用に結びつけるという方法を取り入れている企業も多くなっています。
従来の採用では、ハローワークや求人メディアへの掲載、人材紹介会社からの紹介など、求職者からの応募を待つ受け身の姿勢が主流でした。これに対し、自社が求める人材を探し出し、企業が自らアプローチするダイレクトリクルーティングは、「攻め」の採用手法と表現されます。
注目される背景と直近のトレンド
ダイレクトリクルーティングは欧米ではすでにスタンダードな採用手法ですが、日本では中途採用の領域で、2010年前後から急速に普及し始めました。その理由の一つが、少子高齢化による労働力人口の減少です。働き手が減っていることで人材獲得競争が激化し、「待ち」の採用手法だけでは立ち行かなくなっているのです。
二つ目の理由は、ビジネス環境の変化スピードです。企業は、ポテンシャルのある人材を採用して入社後に育成するだけでは、環境変化に追いつけず、競争力を維持できなくなっています。即戦力人材をいち早く確保する必要性が増しているのです。
三つ目は、ITツールの進化です。これにより、企業と個人とが直接的にコミュニケーションする障壁が下がり、攻めの採用活動を後押ししました。
このような背景から、現在ではダイレクトリクルーティングは主力の採用手法になりつつあります。また、これまでダイレクトリクルーティングを選ぶのは、求人メディアでは存在が埋もれがちな中小企業でした。しかし直近では、コロナ禍で採用コストを縮小した大手企業が費用面でのメリットを理由に導入するケースも増えています。
人材データベースを提供する企業も、登録者との接触ハードルを下げるなど、企業と人材が接点を持ちやすいよう、サービスの改良を続けています。採用コストの削減や活動の効率化を重視する傾向は今後も続くことが予想されるため、ダイレクトリクルーティングは企業規模を問わず、さらに広がりを見せるでしょう。
中途採用にダイレクトリクルーティングを取り入れるメリット
従来の採用手法と比べて、ダイレクトリクルーティングにはどのようなメリットがあるのか、ここでは中途採用の場合に焦点を当て、次の五つのポイントを見ていきます。
ダイレクトリクルーティングのメリット
- 転職潜在層への早期アプローチが可能
- 欲しい人材に直接アプローチできる
- 母集団形成を自社でコントロールできる
- 採用コストを抑えられる
- 採用ノウハウが蓄積されるため採用力が高まる
1. 欲しい人材に直接アプローチできる
求人広告の場合、欲しい人材が応募してくれるとは限りません。ダイレクトリクルーティングであれば、自社が求める人材に対して直接アプローチできるというメリットがあります。
求人広告は不特定多数の候補者に発信するため、汎用的な情報になりがちですが、ダイレクトリクルーティングでは候補者一人ひとりに寄り添ったコミュニケーションが可能です。自社が求める人材と1対1のコミュニケーションを取り、お互いをよく知ったうえで採用に結び付けられるため、採用のミスマッチを減らせるというメリットも期待できます。
2. 転職潜在層への早期アプローチが可能
転職潜在層とは、今すぐに転職しようとは考えていないけれど、機会に恵まれれば転職したいという意向を持っている人たちです。転職顕在層にアプローチする従来の採用に比べると、遠回りのように思えますが、転職市場では出会えない人材を見つけられる可能性が高いというメリットがあります。
また、自社に全く興味がなかった候補者でも、接点を持ち続けることによって企業理解が深まり、入社の意向が強くなることがあります。このように潜在層へと接触範囲を広げ、優秀な人材に早期アプローチができる点は、ダイレクトリクルーティングの大きなメリットといえるでしょう。
3. 母集団形成を自社でコントロールできる
人材紹介会社を利用した場合、母集団形成の主導権は外部に委ねられます。求人メディアを利用した場合は、ある程度の母集団形成は狙えるものの、想定した人材で構成できるとは限りません。ダイレクトリクルーティングでは、企業側が母集団形成の主導権を握るため、欲しい人材のみをプールするといったコントロールが可能です。
4. 採用コストを抑えられる
採用手法ごとの一般的な料金体系は、下表の通りです。
採用手法 | 料金体系 |
---|---|
人材紹介会社 | 成功報酬 (採用した人材の「想定年収の30~35%」が多い) |
求人広告 | 広告掲載料 |
ダイレクトリクルーティング (人材データベース利用の場合) |
成功報酬+データベース利用料 (数ヵ月~年間単位) |
人材紹介会社の場合、採用者の想定年収の30~35%程度を成功報酬としているところが多くなっています。求人広告はメディアや出稿量にもよって費用感が変わりますが、採用に至らなくても費用が発生するというリスクがあります。
ダイレクトリクルーティングの場合、人材データベースは成功報酬とデータベース利用料が発生するのが主流ですが、成功報酬は人材紹介会社よりも低く設定されていることが多く、一人あたりの採用単価を抑えることが可能です。SNSを使った手法であれば、人的リソースは取られるものの、費用はほぼかかりません。
5. 採用ノウハウが蓄積され、採用力が高まる
ダイレクトリクルーティングは作業をアウトソーシングしないため、自社に採用のノウハウが蓄積される点がメリットです。効率的な候補者のターゲティングや接触手段、アプローチ方法などのデータが積み重なっていくことで、自社の採用力を高め、活動を最適化できます。
そのためにも、人材の発掘から採用まで、いかに効率的かつ効果的に行えるか、仮説と検証を繰り返すPDCAを構築しましょう。
ダイレクトリクルーティングサービスを選ぶときのポイント
現在では、ダイレクトリクルーティングをサポートするさまざまなサービスが提供されています。ここでは、中途採用におけるダイレクトリクルーティングサービスの選び方のポイント三つを見ていきます。
ダイレクトリクルーティングサービスの選び方のポイント
- 候補者の質と量が担保されているか
- 料金形態は自社に合っているか
- 求める機能が備わっているか
1. 候補者の質と量が担保されているか
ダイレクトリクルーティングは、サービスによってデータベースに特徴があり、登録ユーザーの男女比や年齢層、保有スキル、求める職種などが大きく異なります。若手の優秀人材やハイクラス人材、専門職・技術職特化などさまざまなタイプがあるので、まずは自社が求める人材がプールされているかどうか、登録者数はどのくらいかをチェックすることが重要です。
また、数だけでなく、登録者の質を担保する仕組みがあるか、HPなどで確認することをおすすめします。
さらに、登録者が直近でサービスを利用しているか、新規登録者が多いのかといったサービスの「活性度」にも注目しましょう。
2. 料金形態は自社に合っているか
ダイレクトリクルーティングサービスは、採用に成功した場合の成功報酬と人材データベース利用料の二つの費用が発生するものが多くなっています。またサービスによって基本の契約期間も異なるため、事前に確認しておく必要があります。
採用予定人数や職種などによっては費用感が合わないというケースもあります。採用目標と予算に照らし合わせて、自社に合っているかを慎重に検討しましょう。
3. 求める機能が備わっているか
ダイレクトリクルーティングサービス(人材データベース)で提供されている主な機能は、以下の通りです。
ダイレクトリクルーティングサービスの主な機能
- 求人票作成
- 候補者の検索システム
- スカウトメールの作成・配信
- SNSでの情報発信
ただし、提供されている機能の詳細は各社で異なります。たとえば、検索システムの使い勝手やスカウトメール数などは提供会社によって違うため、事前の確認が必要です。また、コンサルタントによるサポートを受けられるサービスもあるので、必要に応じて選択するとよいでしょう。
ダイレクトリクルーティングを成功させるには
ダイレクトリクルーティングではほとんどの工程を自社で行うため、成功に向けて押さえておくべきポイントがいくつかあります。
ダイレクトリクルーティング成功のポイント
- 経営層を巻き込んで全社的に取り組む
- 専任の担当者を置く
- 人材要件を絞り込みすぎない
- 情報を一元管理する
- スカウトメールをうまく活用する
- PDCAを回しながら最適化を図る
1. 経営層を巻き込んで全社的に取り組む
ダイレクトリクルーティングは、候補者と接触し、コミュニケーションを通じて自社への入社意欲を高めていく手法です。転職潜在層にアプローチしていくため、自社の魅力をしっかり届けてひきつけなくてはなりません。そのため、自社のビジョンや展望をしっかり伝えられる経営層を巻き込んだり、活躍している社員の協力を仰いだりしながら展開していくことが成功のポイントとなります。
2. 専任の担当者を置く
ダイレクトリクルーティングは、転職潜在層にアプローチするという特性上、即効性はありません。長期的な視点で取り組む必要があります。また、手間を要する業務が多いため、人的リソースはきちんと確保しなければなりません。
従来のままの体制で実行してしまうと、業務負荷が高まることがあるので注意が必要です。計画を途中で頓挫させないためにも、専任の担当者を配置し、腰を据えて行うことが重要です。
3. 人材要件を絞り込みすぎない
ダイレクトリクルーティングサービスに登録しているユーザーは、転職意向度がそれほど高くない状態のため、プロフィールを詳細に書いているとは限りません。そのため、母集団形成の段階で人材要件を絞り込みすぎると、欲しかった人材を取りこぼしてしまう可能性があります。アプローチできる候補者数を集められなくなる場合もあるため、ある程度ゆるくしておくことがポイントです。
4. 情報を一元管理する
ダイレクトリクルーティングでは、接点を持つ経路やアプローチの方法が候補者によって異なります。そのため、採用活動で得たデータを一元管理していないと、抜け漏れが発生する原因となります。効率的なPDCAを構築するうえでも、情報の一元管理は重要です。
5. スカウトメールをうまく活用する
ダイレクトリクルーティングを成功させるための大きなポイントとなるのが、スカウトメールです。求人広告とは違った角度から自社の魅力をアピールすることができます。「スカウトをもらって、初めてその企業を知った」という候補者も少なくありません。
ただ、優秀な人ほど多くのスカウトメールが届くので、埋もれてしまわない工夫が必要です。また、読まれるだけでなく、返信率を高める文面を書かなければなりません。以下のポイントを意識して取り組むとよいでしょう。
スカウトメールを書くポイント
- 「件名」を工夫して候補者をひきつける
- 候補者に「特別感」を与えられるよう、相手の経歴などと結び付けた1対1の文面を心がける
- 候補者の気持ちに寄り添いながら、好印象を与える文面を心がける
- 候補者がビジョンへの共感や将来への期待を持てるような内容を盛り込む
- 候補者が次に取るべき行動に迷わないよう、ネクストアクションを明確に示す
- 長文は避け、簡潔でわかりやすい文章を心がける
ちょっとした工夫で返信率や開封率に差が出るため、効果を検証しながらブラッシュアップすることをおすすめします。
6. PDCAを回しながら最適化を図る
どの接触チャンネルが有効なのか、または、どういった施策が効果的なのかは企業によって異なります。とはいえ、やみくもに打ち手を繰り出しても、非効率です。したがって、ダイレクトリクルーティングでは、データを収集・分析しながら改善していくPDCAが極めて重要になるということです。
成果が出るまでにはある程度の時間がかかることを念頭に置き、ノウハウを蓄積する心づもりで取り組むことが大切です。
中途採用のダイレクトリクルーティングサービスの傾向と特長
実際のサービスについて、「登録者の属性」と「職種」の2軸で整理してみました。サービスを探す際の参考にしてみてください。
ここからは、具体的なサービスとその特長を見ていきましょう。
パーソルキャリア株式会社の「doda Recruiters」は、人材を採用したい企業が直接個人にアプローチできるダイレクト・ソーシング型の新サービスです。従来の、求人サイトや人材紹介会社からの応募を待つ採用手法とは異なり、欲しい人材へ直接アプローチすることができます。
株式会社ビズリーチの「ビズリーチ」は、独自の人材データベースの直接検索が可能。転職潜在層を含む有能な人材との出会いが実現します。専任コンサルタントが母集団形成や採用決定のためのノウハウ、求職者への訴求ポイントなどを、定量的なデータに基づき提供し、フォローします。
ミイダス株式会社の「ミイダス」は、自社で活躍・定着している社員がどのような特徴・傾向があるのかを分析し、そのデータをもとにデータベースから自社に合った人材にアプローチをすることが可能です。人材アセスメント・組織アセスメントの機能も付いています。
中途採用のダイレクトリクルーティングを提供する全国のソリューション企業一覧
ダイレクトリクルーティングは中途採用のスタンダードへ
ダイレクトリクルーティングは時代の変化を反映した採用手法であり、日本においても普及していくでしょう。自社の採用力が上がれば、採用コストを抑えながら、よりスピーディーな事業展開が可能になるなど多くのメリットを得られます。従来の採用手法に課題を感じているなら、自ら人材獲得に動き出すダイレクトリクルーティングを取り入れてみてはいかがでしょうか。