適性検査用語

適性検査に携わるうえで知っておきたい用語を解説します。

切り株モデル

人間のパーソナリティは切り株のように、中心に「気質」の円があり、その外側に「性格」「態度」「役割性格」の同心円があるとする考え方。年輪の中心に位置するもの(気質)ほど先天的で変わりにくく、表層に近いもの(役割性格)ほど後天的なものだとされています。また、断面は「感情」「意欲」「知能」に分かれており、それぞれの分類と密接につながっていると考えられています。

氷山モデル

一人の人間を氷山とみなし、水面より上を知識や技能などの目に見えるハードスキル、水面より下を自己概念や価値観などの目に見えないソフトスキルであるとするモデル。「目に見える成果は氷山の一角であり、成果を生み出すためには水面下の自己概念や価値観が重要だ」という考えに成り立っています。氷山モデルは、活躍する人材に共通してみられる行動特性である「コンピテンシー理論」の基礎となっています。

信頼性

検査結果がどの程度正確で安定しているかどうかを指す指標。同じ条件のもとで同じ検査を実施した場合に、同じような結果が出れば信頼性が高い検査だと言えます。信頼性を検証する手法としては、同じ対象者に同じテストを行って結果の相関をみる「再テスト法」や、すべての項目に対する回答者の反応の一貫性をみる「クロンバックのα係数」などが挙げられます。

妥当性

その検査が調査目的をどのくらい適切に測定できているかを指す指標。測定目標とする概念を捉えているかを専門家が判断する「内容的妥当性」、検査の得点と将来観測される事象との相関などを示す「基準関連妥当性」、実験や因子分析などを行い、構成概念をどの程度説明できるかを示す「構成概念妥当性」に分けられます。

標準性

世間一般の水準と比較したときに、受検者のデータに偏りがないかを示す指標。たとえば偏差値を出す際は、高い得点を取れる人からそうでない人まで同じテストを受験します。幅広い層が受検することで、正確な偏差値を出すことが可能です。適性検査においても同様で、受検者の属性に偏りがないほど、正確に能力や性格特性を把握することができます。

質問紙法

検査の受検者に質問項目が書かれた紙を提示し、得られた回答を分析する形式の心理検査の手法。「とても当てはまる」から「まったく当てはまらない」のような段階的な評定尺度(リッカート尺度)を用いるケースが多くみられます。検査者の主観が入らず、データ収集・分析が簡単に行えるなどの利点があるため、性格検査では質問紙法を取る検査が主流です。「ミネソタ多面人格目録」や「ビッグ・ファイブ」といった検査があります。

投影法

受検者に対してあいまいな素材を見せて自由に回答してもらったり、自由に描かせたりすることで、受検者の内面を診断する心理検査の手法。検査者の高度な心理学の知識と経験が求められるうえ、主観が入る余地もあります。しかし、回答を操作することが難しく深層心理まで捉えられるといった利点があります。代表的なものに「ロールシャッハテスト」や「連想検査」が挙げられます。

作業検査法

一定の条件のもとで簡単な作業を実施し、その反応パターンや作業量をもとにパーソナリティを診断する心理検査の手法。データの分析が容易で測定内容の意図を知られにくく、主観が入り込む余地も少ないといった利点があります。一方でが、単調な作業を繰り返すために受検者が負担を覚えやすく、環境やモチベーションが結果に影響しやすい側面もあります。「内田クレペリン検査」「ベンダー・ゲシュタルト検査」などが有名です。

面接法

面接を受ける人物との言語・非言語によるコミュニケーションを通じて、その人物を理解する手法。あらかじめ質問項目や評価基準を決めておく「構造化面接」、質問内容を準備せず対象者との対話の中で自由に質疑応答を行う「非構造化面接」に分かれます。また、質問内容はあらかじめ決めておくものの、話の流れに応じて自由に質問できる「半構造化面接」もあります。

エントリーシート

インターンや就職活動において、企業に提出する書類の一つ。応募者自身が企業にアピールするためのツールであり、合否判断や面接の際の参考資料として用いられます。履歴書は各社共通の場合が多く、入社後も従業員データとして活用されることがあるのに対して、エントリーシートのフォーマットは企業ごとに作成し、採用選考の場面でのみ用いられることが一般的です。

能力検査

基礎学力や論理的思考力、一般常識といった受検者の知的能力を測定する検査。問題は国語の問題である「言語分野」と算数・数学の問題である「非言語分野」にわかれることが多く、決められた時間の中で複数の問題を解くことで、受検者の能力が全受検者のうちのどこに位置するのかを可視化します。検査の結果は、「足切り」と呼ばれる合否の判断材料にされるケースも目立ちます。

性格検査

ふだんの行動や考え方に対する質問などを行い、個人の持つ性格特性を測定する検査。幅広い性格特性を測るものから、特定の資質の測定に特化したものまで、幅広い検査があります。企業は性格検査の結果と自社が重視する特性が合致しているか、職種への適性はあるかといった点をみたり、面接の際に掘り下げるべきポイントを確認したりするために活用します。

平均/標準偏差

「平均」とはすべてのデータの値を足し合わせた数をデータの総数で割った値を、「標準偏差」とはデータがどれくらいばらついているかを数値で表す指標を指します。たとえば「平均が80点」のテストで「標準偏差が10点」の場合、多くの人が「70~90点」の範囲内にいることになります。標準偏差を知ることで、特定のデータが全体のデータの中でどの位置にいるかを把握することができます。

度数分布

データを特定の範囲ごとに区切り、それぞれの範囲内にいくつデータがあるのかをまとめた統計手法。データを区切る範囲である「階級」、データの個数である「度数」などによって示されます。分布を表にしたものを「度数分布表」と呼び、データがバラバラで数が多い場合に度数分布表を作成することで、データの全体像や偏りの有無を把握しやすくなります。

相関関係

二つの事象のうち、一方の数値が増加するともう一方の数値も増加、あるいは減少する関係を示す統計手法。相関係数は「-1.0~1.0」の値で表され、1に近づくほど強い正の相関が、-1.0に近づくほど強い負の相関があることを示します。適性検査を開発するうえでは信頼性や妥当性の検証のために用いられ、導入後も適性検査の結果と入社後のパフォーマンスの関係性などを確認することが望ましいといえます。

G・P分析

高得点の上位群、低得点の下位群を選抜し、2群の違いをみる統計手法。複数の選択肢がある検査において、上位群と下位群に差がない項目は、違いを測るための項目としてふさわしいとはいえません。そこでG・P分析を用いて上位群と下位群で正答率や回答の傾向に差がみられた項目を残し、そうでない項目を削除あるいは修正することで、より個人の能力・特性の違いを把握できる検査を作成することができます。

散布図

二つの変数に相関関係があるかどうかを、点の散らばりから確認する手法。縦軸と横軸に量や大きさを取り、データをプロット(点を描くこと)することで、一目でおおよその関係性がつかめます。テストの得点や身長・体重など、数字の大小に意味がある数値の関係性をみる際に有効であり、性格検査ではたとえば「あてはまる」の回答を「5点」などと数値化して散布図に落とし込んでいきます。

メンバーシップ型雇用

業務内容や勤務地などを限定せずに採用し、後から仕事を割り当てる雇用のあり方。戦後の日本で広く用いられてきたもので、採用時は「何ができるか」よりも「人となり」が重視される傾向にあります。長期雇用の前提のもと入社後に転勤やジョブローテーションを繰り返し、キャリアアップしていく仕組みをとります。業務内容は会社都合によって変化し、報酬体系は年功序列となっていることが一般的です。

ジョブ型雇用

あらかじめ定められた業務内容や勤務地、労働時間といった労働条件に合致する人物を採用する雇用のあり方。「ジョブ・ディスクリプション」と呼ばれる職務記述書に沿って業務を行い、会社都合で業務の内容が変わることはありません。報酬も業務内容によって決定されます。欧米では一般的な雇用のあり方で、日本でも導入する企業が増えてきています。

パーソナリティ理論

人間のパーソナリティを捉えるための理論。大きくは「類型論」と「特性論」にわけられます。類型論とは、性格をいくつかのタイプにわけ、個人がどのタイプに属しているかを当てはめる手法を指します。一方特性論では、パーソナリティとは複数の特性の集合体であるとの考えのもと、個人の持つ複数の特性の強弱を測定することで個人の性格を把握しようとする手法です。

ダーク・トライアド

社会的に望ましくない言動の背景となるパーソナリティ特徴。目標達成のために手段を選ばない「マキャベリアニズム」、愛情や愛着が自分自身にのみ向けられる「ナルシズム」、人間関係を円滑に保つための感情が一部欠如している「サイコパシー」の三つで構成されています。ダーク・トライアドのスコアが高い場合、職場で問題行動を取る傾向が強いとされています。

ビッグ・ファイブ

人の性格は五つの因子によって構成されているとする理論。因子は「Openness(開放性)」「Conscientiousness(誠実性)」「Extraversion(外向性)」「Agreeableness(調和性)」「Neuroticism(神経症的傾向)」で表されます。人によってこれらの因子の強弱が異なるために性格や振る舞いに違いが出るとされており、性格特性論の中でも有力な学説として普及しています。

GRIT

「やり抜く力」を表す造語。困難に立ち向かう「Guts(度胸)」、苦境に置かれても立ち直る「Resilience(復元力)」、自ら据えた目標に取り組む「Initiative(自発性)」、最後までやり遂げる「Tenacity(執念)」の頭文字を取って「GRIT」と呼ばれるようになりました。社会的に成功している人たちが共通して持つ心理特性として、近年注目を集めています。

自意識

自分自身に向けられる意識。「自己意識」「自我意識」などと呼ばれることもあります。自意識は、自分の容姿や言動などについて他者からどう見られているかに意識を向ける「公的自己意識」と、自分の感覚や感情といった他者からは見ることができない内側の部分に意識を向ける「私的自己意識」に分けられます。公的自己意識が強すぎると「自意識過剰」の状態になり、対人関係の問題を抱えやすくなるとされています。

ハロー効果

特定の評価や特徴に引きずられてしまい、ほかの評価がゆがめられる現象を指す心理的効果。ハロー効果には、特定の項目の評価が高い場合に別の項目の評価も高くしてしまう「ポジティブ・ハロー効果」と、それとは反対に特定の項目の評価が低い場合に別の評価も低くしてしまう「ネガティブ・ハロー効果」があります。 なお、ハローとは日本語で「後光」を意味します。

対比効果

二つ以上の物事に差がある場合、その差が実際の差より大きなものとして感じられる心理的効果。たとえば採用の場面では、面接した応募者が大変優秀であったり印象がよかったりした場合、その印象が強く残っているために次に面接した応募者を実際よりも劣っていると評価してしまうケースなどが発生します。

一般化

ひとつの特徴を、ほかの側面にも当てはめてしまう心理的効果。たとえば採用の場面では、眼鏡をかけている学生を「真面目でコツコツ業務をこなしてくれそうだ」と判断したり、体育会系の部活に所属している学生を「協調性を重んじることができそうだ」と評価したりと、根拠を伴わない判断を下してしまうことがあります。

ステレオタイプ

多くの人に浸透している固定観念やイメージ。たとえば「男性は我慢強い」「女性は涙もろい」「高齢者はITに弱い」などといったもので、ステレオタイプは一部に当てはまることはあっても、全員に当てはまるものはまずありません。多くのステレオタイプを抱えている人物が面接官になった場合、応募者の内面ではなく属性で評価してしまう可能性が高まります。

個人的好悪

評価者の好みが対象者の評価に影響を与えてしまう現象。たとえば面接では、応募者の容姿や態度、話の内容などについて、評価者が自己の主観のみに基づいた判断をしてしまうことがあります。個人的好悪による影響を防ぐためには、まず客観的な評価基準をつくり、面接官に「自分の評価に偏りはないか」を意識させたり、面接終了後にほかの評価者と評価をすり合わせたりすることなどが求められます。

ジョブパフォーマンス

組織の目標達成に寄与し、かつ個人の習熟度が反映される測定可能な活動や行動。適性検査は、入社後のジョブパフォーマンスを予測するためにも活用されます。ただし、個人の能力やパーソナリティがジョブパフォーマンスにつながるかどうかは、もともとの特性だけで決まるものではなく、組織風土やジョブなど、その人が置かれた状況に大きく影響を受ける点にも注意が必要です。

タレントマネジメント

タレント(従業員)が持つ能力やスキルを経営資源として捉え、そのデータを一元管理して採用や配置、育成を行い、企業成長につなげる取り組み。効果的に進めるためにタレントマネジメントシステムを導入する企業も増えています。ビジネス環境の複雑化や人材不足、グローバル人材の育成といったビジネス上の課題に対応するために注目度が高まっています。

企画・編集:『日本の人事部』編集部