適性検査に関するユーザーの課題や事例

適性検査はどのように選ばれるか

適性検査は提供するソリューション企業によって、さまざまな種類、サービス形態があります。人事および顧客企業はどのようなポイントに着目し、適性検査を選んでいるのでしょうか。

目的

適性検査は多くの場合、採用選考の過程で利用されます。その目的は、採用候補者の能力を知る、自社に適した人材であるかどうかを見極めるなど、さまざまです。採用以外のシーンで利用されることもあり、「自社が成長するためのマネジメント方針の策定」「異動の判断」などの場面で利用されています。

採用で活用したい

  • 能力を知りたい
  • 職種(職務)適性の有無を知りたい
  • 自社に合うかどうかを知りたい
  • 面接の補助ツールにしたい
  • 採用基準を明確にしたい
  • 配属先を決めたい

自社の成長のために活用したい

  • 従業員のスキルや性格特性を可視化したい
  • コンピテンシーを抽出したい
  • 適切な人材マネジメントを行いたい
  • キャリア支援を行いたい
  • 適性に合わせた異動を行いたい
  • 昇進・昇格の要件を明確化したい
  • 効果的な研修や教育を実施したい
  • 退職者の傾向を分析したい

測定項目の種類

日本の人事部の『人事白書2023』で、企業に適性検査を選ぶ際に重視する項目を聞いたところ、下記のグラフのとおり、新卒採用、中途採用とも「把握できる能力や性格などの種類」がトップとなりました。なお、測定できる項目は、適性検査によって異なります。

新卒採用の適性検査の選び方
新卒採用の適性検査の選び方
中途採用の適性検査の選び方
中途採用の適性検査の選び方

全般的な性格特性

適性検査では多くの質問を行うことで、複数の領域での性格特性を示します。例えば採用選考場面を中心に一般的に広く使われているリクルートマネジメントソリューションズ社のSPI3では、約300の質問を実施し、性格を4側面18尺度に分類しています。

能力(言語・非言語)

一般的には、どのような職種でも活用できる基礎的な知的能力を測定することを狙いとしています。検査項目としては言語的な理解能力を問う言語分野と、数的な処理や論理的思考力を問う非言語分野にわかれます。企業によっては英語能力を測る場合もあります。

特定の性格特性

業務の負荷が高かったり、メンタルヘルス不調が課題となったりしている企業の「ストレス耐性を知りたい」といった特定のニーズに応えるものです。

職種・職務適性

「営業職」「研究・開発」「システムエンジニア」といった職種の適性、あるいは「多くの人と接する」「新しいアイデアを生み出す」といった職務への適性を測るものです。

ネガティブな特性

将来活躍が期待できる人材を見抜くのではなく、活躍しない人材を見極めるためのものです。コンプライアンスやパフォーマンス、メンタルといった観点から、ネガティブな性格特性を浮き彫りにします。

コンピテンシー

一般的に見た能力の高さや全般的な性格特性を重視するのではなく、自社の従業員のデータベースを基に、活躍している人材とそうでない人材の特性を抽出することで、活躍している従業員の持つ特性を保有する人材を見つけ出すものです。

結果の信頼性、妥当性

『人事白書2023』では、適性検査を選ぶ際に重視する項目として、「検査結果の信頼性・妥当性」が新卒で63.1%、中途で53.7%と、「把握できる能力や性格などの種類」に次いで重視されていることがわかりました。

新卒採用の適性検査の選び方
新卒採用の適性検査の選び方
中途採用の適性検査の選び方
中途採用の適性検査の選び方
信頼性

「信頼性」とは、測定されたデータの安定性、等価性、一貫性を表す指標です。信頼性を示すにはいくつか方法があり、代表的なものとしては、「同じアセスメントを同じ人に 2 回実施して結果の相関を取る(再テスト法)」、「内容、難易度がほぼ等しいテストを 2 種類つくり、同じ人に実施して結果の相関を取る(平行テスト法)」、「すべての項目に対する回答者の反応の一貫性をみる(内的整合法)」などがあります。

信頼性は「1」が最も高く、「信頼性が 1 である」というのは「何度測定しても 100%同じ結果になる」状態を指します。ですが、適性検査は人が受検する以上、その場の状況や環境、受検者の気分や疲労度などによって回答が多少変わることも珍しくなく、常に検査結果の中には誤差が含まれています。そのため、適性検査の信頼性が「1」を示すことはまずなく、一般的に 0.7~0.9 程度の水準が望ましいとされています。

また、こうした誤差をできる限り少なくし、信頼性を高めるために、「質問項目を増やす」、「質問項目の質を上げる」といった努力がなされています。

妥当性

「妥当性」とは、測定したい内容をどれぐらい的確に測定できるか、目的達成のためにその検査が適しているかを表す指標です。妥当性は、検査項目が測定したい概念をきちんととらえているかを判断する「内容的妥当性」、測定しようとしている概念をどの程度説明できるかを示す「構成概念妥当性」、測定目標を表す外的基準と検査の得点の関係をみる「基準関連妥当性」、にわけられることが一般的です。

「内容的妥当性」は心理学や検査に精通した複数の専門家による検証などで担保され、「構成概念妥当性」は関係性が深いことが予測される既存尺度との関係性を確認する、などの検証で担保されます。また、「基準関連妥当性」は、適性検査の結果と入社後の評価の関係性を確認することで検証されます。こうした妥当性は、リリース時に一定のレベルを担保するのはもちろん、リリース後もデータを集めて不断の検証を行っていく必要があります。

価格

『人事白書2023』では、とくに従業員規模が1~100人の企業で、適性検査を選ぶうえで「価格」を重視していることがわかりました。「オフラインで実施」「測定できる項目が多い」検査ほど高額に、「オンラインで実施」「測定項目を絞っている」検査ほど廉価で実施できる傾向にあります。ただし測定項目の多い高額な検査は、導入を決めた目的以外の場面でも幅広く活用することが期待できます。

費用の形式は「一人あたり」「定額制」のいずれかにわけることができます。加えてどちらの形態を取るにせよ、別途初期導入費用が必要となる場合もあります。企業によっては、適性検査のサービスを提供する中でさらに企業の人事課題を深掘りし、適性検査にとどまらないコンサルティングサービスを提供しているケースもあります。

一人あたり

最も多い形式で、一人あたり数千円程度が一般的です。安いものでは500円程度から実施できる検査もあります。

定額制

クラウド型の増加とともに増えてきた形式で、何人受検しても同一の金額です。月額数万円、年額数十万円かかるのが一般的です。受検人数が増えれば増えるほど割安感が増します。

受検形態と提供形態

採用候補者が適性検査を受ける場合、自宅で受けられるものや企業やテストセンターに出向くものなど、いくつか種類があります。不正受検の防止や、採用候補者の負担などを鑑みながら選択する必要があります。

ペーパー方式

メリット:不正受検リスクが低い
デメリット:分析までに時間がかかる/会場と監督者を準備する必要があり、コストがかかる/回答に時間がかかるため受検意欲が下がる

テストセンター方式

メリット:不正受検リスクが低い/会場や監督者を適性検査提供会社に委託できる
デメリット:委託費用がかかる

インハウス方式

メリット:不正受検リスクが低い/面接や説明会を同時に実施できる
デメリット:会場と監督者、パソコンを準備する必要があり、コストがかかる

WEB方式

メリット:会場・監視者が不要でコストを抑えられる/受検者が自宅で受検できる
デメリット:不正受検リスクが高くなる

提供形態

もともと紙の検査から始まったこともあり、一人につき一つの分析結果を提示する形式が一般的でした(本稿で従来型とする)。一方で近年登場してきたクラウド型は、クラウド上で扱うことを前提としているため、受検者全体の結果を見比べたり、従業員の検査結果と簡単に比較できたりする機能を有するものもあります。

従来型

一般的に、一人につき一つの分析結果を提示できる

クラウド型

受検者全体の結果を見比べられる/高いコンピテンシーを発揮している従業員の検査結果と比較できる

検査時間

SPI3の検査時間は「能力検査35分+性格検査30分」、玉手箱Ⅲでは「言語理解テスト25分+計数理解テスト35分+パーソナリティテスト30分」です。広く適性をはかる検査の時間としては、1時間~1時間半程度で実施されるケースが目立ちます。

一方で、特定の資質に特化したものや将来の活躍を予測するものなど、重視する項目を絞った検査では10~30分で回答できるものもあります。

検査時間が長いほど、正確な能力や性格特性を把握することができますが、時間が長い検査は応募者の受検意欲を低下させるおそれがあります。また、ペーパー形式の場合は、WEBに比べて時間が長くなることが一般的です。

提供企業の実績

学力テストの偏差値は、母集団の人数が多く、かつさまざまな学力を持つ人たちが受検するほど、正確な値を示します。適性検査も同様に、受検者が多いほど結果の精度が高まります。少なくとも開発時点で、数千人単位での受検実績があることが望まれます。

測定項目のカスタマイズ性

『人事白書2023』では、適性検査に「項目のカスタマイズ性」を求める企業は新卒採用で4.4%、中途採用で4.2%と、決して多くはありませんでした。ただし、従業員規模が大きい企業ほどカスタマイズ性を求める割合が高いことが明らかになっています。

適性検査の中には、信頼性や妥当性の観点からカスタマイズできないものも多くあります。一方で、受検者の特性と企業が重視する特性との合致度合いを詳細に記すといった形で結果をカスタマイズするものや、数は少ないですが検査項目そのものをカスタマイズできるものもあります。

セキュリティ性

適性検査は個人情報を多く含むため、高いセキュリティ性が求められます。そのため適性検査を提供する多くの企業は、ウイルス対策やデータの安全な保管を明文化したセキュリティポリシーを定めています。中には、情報セキュリティの認証制度である「プライバシーマーク(Pマーク)」や「ISMS認証」を取得している企業もあります。

サポート

適性検査を提供する企業は、製品の提供に注力する企業と、導入後のサポートまで力を入れている企業に分かれます。サポートにも、さまざまな種類があります。

FAQ

FAQをはじめとするよくある質問が、サイトなどにまとまっていると、人事は適性検査提供企業に問い合わせずとも解決することができ、便利です。

活用法の提示

単に検査の結果を示すだけでなく、その結果から導き出される「面接時に確認すべきポイント」や「本人へフィードバックすべき内容」を示すサービスです。有料で提供するケースもあります。

関連セミナー

適性検査を採用や人材育成の場面で活用する方法、採用そのもののトレンドを有識者が語るセミナーです。

カスタマーサポート

適性検査導入から結果の見方、活用シーンの拡大まで、利用企業それぞれの活用法を提示するサービスです。クラウド型の適性検査では、カスタマーサポートがもともと費用に含まれている場合もあります。

コンサルティング

適性検査の活用にとどまらず、検査から見えてきた人事に関する課題の解決を図るサービスです。多くの場合、別途費用が必要になります。

導入や活用の課題

採用場面での課題

不正受検のおそれがある

2022年、就職活動中の大学生になりすましてWEB形式の適性検査を受検したとして逮捕される事件が発生しました。とくにオンライン環境下で起こりがちですが、採用の合否に影響する適性検査では、少しでも結果を良く見せようとする不正受検が後を絶ちません。

選考のステップが増えることで応募者の意欲が下がる

適性検査の受検は、応募者に負担をかけます。会場受検の場合は、時間も交通費もかかります。その企業に対する優先順位が低い場合や、適性検査を実施しない他社の選考スピードが速く早期に内定が出された場合、選考を辞退されてしまう可能性もあります。

企業と適合性が高いはずの人材が活躍しない

適性検査の結果をもって、100%その将来を予測することはできません。たとえば、「感情労働が求められるのでストレス耐性が重要」と設定していた企業でストレス耐性の高い人材が活躍できていない場合、ストレス耐性が高すぎるあまり感受性や共感性が低く、高いパフォーマンスが出せていないといった要因も考えられます。期待と結果に齟齬がある場合は、適性検査の妥当性や企業の人材要件を見直すことが求められます。

採用場面以外での課題

採用場面以外で活用できていない

入社後すぐの人材配置までは適性検査を活用できても、人材の育成やマネジメントの場面で活用できていない企業は数多くみられます。全社的に活用してもらうためには、人事だけでなく経営層や現場の理解も必要です。

従業員が本気で取り組まない

適性検査は1時間ほどかかることも珍しくありません。そのため従業員が回答中に疲れて、適当に回答してしまうことがあります。従業員に本気で取り組んでもらうには、適性検査を受検するメリットを従業員にしっかりと伝えることが不可欠です。

使いにくい

たとえば「休憩時間に回答したいのに、途中保存ができないので時間が足りない」「通勤時に回答したいのに、スマートフォンからでは回答できない」など、従業員のニーズを満たしていない場合があります。受検者が不便さを感じる適性検査は、必然的に回答率が低下します。

適性検査を導入している企業例

scsk鈴木様氏
<人事パーソンが語る適性検査>

ITに関する幅広い事業を展開しているSCSK株式会社では、選考の過程で適性検査を2回実施

同社人材開発本部 人材戦略推進部 採用課 課長を務める鈴木 潤氏は、適性検査と入社後のパフォーマンスを以下のようにとらえています。

1回目は行動特性や言語数理能力などを測るテストです。2回目はストレス耐性と応募者の持ち味がわかるようなテストを行っています。

IT業界は一般的にストレス負荷が高いと言われるので、ストレスへの対処力は適性検査を通じて確認しています。また、入社時の適性検査と入社後のパフォーマンスを分析したところ、言語数理能力に関してパフォーマンスとの相関があることが分かりました。

当社の場合、約9割がシステムエンジニアとして配属されます。常に新しい技術や知識を学び、論理的思考を駆使して行う業務が中心なので知的能力が成果へと連動しやすいのではないかと考えています。また、入社後は業務上の知識習得だけでなく、資格取得やアカデミックな学習も行っているので、それらをクリアするためにも知的能力が活かされているのだと思います。

適性検査に関するワード月間検索回数データ

2022年8月から2023年9月までの期間に、Googleで多く検索された適性検査のキーワードの一部を紹介します。適性検査に興味関心のあるユーザーはこのようなキーワードを入力して情報を探しています。Web上でマーケティング活動を行う際は、ユーザーの動向を把握する必要があります。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部