適性検査とは

適性とは

「適性」とは、「あることに適している性質や能力。また、そのような素質・性格」を意味します。コミュニケーション能力が高い人であれば営業や販売職、新しいことを考えるのが得意な人であれば企画職やクリエイター職といったように、適性のある仕事に就くことで、高いパフォーマンスを発揮することが期待できます。

仕事における適性をさらに深掘りすると、「能力」「性格」「態度」の要素にわけることができます。たとえば事務作業が得意な人でも、事務作業が嫌いであれば、「適性がある」とは言えません。企業のミッションや企業風土、人間関係などが合わない場合は、職務の面ではマッチしていたとしても、早期離職の可能性が高まります。

適性は、現時点でまだ現実には行っていない職務とのマッチングを含む、先天的なものと、職務をこなしていくうちに後天的に得られるものがあります。なお原則として「適性」に良し悪しはなく、あくまで「個人の向き不向き」を指すものです。似た意味で用いられることの多い「適正」は、「適当で正しい」ことを表すため、その意味は異なります。

適性検査とは

適性検査とは、「人の性質や能力、性格を定量的・客観的に測定する検査」です。人材が保有する能力や資質を客観的に評価する「人事アセスメント」とほぼ同じ意味合いを持ちます。日本では新卒採用の場面での活用が一般的であることから、「採用アセスメント」と認識されているケースもあります。近年は、適性検査の活用の幅がどんどん広がってきています。

適性検査に含まれる検査の種類は、考え方によって異なります。狭義の意味で用いられる場合は「性格検査」と「能力検査」を指すことが一般的ですが、広義では面接や演習なども含みます。本講座では「狭義の適性検査」を中心に解説していきます。

狭義の適性検査の代表例

性格検査

性格を評価する検査。個人の持つ性格の特性を測定し、可視化します。回答者に自分の性格に当てはまる項目を回答させる形式が主流です。性格の特性のほか、興味関心や大事にしている価値観といった態度を含む場合もあります。

能力検査

知識、学力を測定する検査。計算力や国語力、論理的思考力などを測ります。テストによっては英語や一般常識、職務に必要な専門知識を問うものもあります。

広義の適性検査の代表例

面接

面接も、能力や個人の考え方、態度が企業の求める人材要件に合致しているかを見極める検査の一つと考えることができます。応募者全員に同じ質問をして、あらかじめ定めた基準によって評価する「構造化面接」は、採用の効率化や結果の平準化につながりやすい手法です。

ワークサンプルテスト

ワークサンプルテストとは、選考の過程で応募者に入社後の業務と同じような業務やプレゼンテーションを行ってもらい、スキルやカルチャーが自社の求める人材要件に適しているかを測るものです。業務中の従業員と接する機会が多いため、応募者側にとっては企業が自分に合っているかを確認できる利点があります。

リファレンスチェック/他者評価

リファレンスチェックとは、応募者の前職での実績や勤務状況について、前職で職場を共にしていた上司や同僚に確認する調査です。自社に適した人材かどうかを「第三者からの評価」という客観的な視点を取り入れて検討することができます。職業経験がない学生に対して、第三者の評価を求めるケースもあります。

アセスメントセンター

主にマネジャー層の能力開発のために用いられる手法です。マネジメントレベルに合わせて実際の職務を想定したシミュレーションを実施し、管理職として必要な能力を満たしているかを判断します。

適性検査のメリット

能力や興味関心をデータ化できる

「業務を遂行する能力はあるか」「自社のカルチャーにフィットしているか」など、その企業で職務を遂行するうえで重要な事柄について、客観的にデータとして示すことができます。

人材要件の明確化につながる

適性検査を実施することで、自社にとって望ましい人材要件を明確にすることができます。日本の人事部による『人事白書2023』では、人材要件を明確化した方法として「社員へのインタビュー」(41.8%)に次いで、「社員への適性検査の実施」(39.7%)、「社員が採用選考時に受けた適性検査の分析」(38.2%)が挙げられています。

理解促進につながる

適性検査の結果を見ることで、受検者の性格や価値観を知ることができます。採用の場面はもちろん、社内で使用する場合も、受検者とのコミュニケーションを深めるために大きな役割を果たすことが期待できます。

効率性の向上

適性検査の結果からは、ストレス耐性や協調性、自責性など、多くの性格特性を見て取ることができます。たとえば新卒採用の場面で、これらの項目すべてを1回の面接で的確に把握することは困難です。また、エントリーシートに書かれた情報だけでは多数の応募者に差がつけられないこともあります。適性検査を活用することで、根拠を持った合否の判断が可能になり、選考過程の負荷を軽減することができます。

受検者の公平感・納得感の確保

適性検査は客観的に数値が示されるため、誰にも公平な検査です。採用の合否や昇進・昇格の是非が「適性検査の結果」であれば、受検者も結果を受け入れやすいでしょう。

組織の現在地を把握できる

適性検査により、自社にどのようなスキル・価値観を持つ人材が多いのか、また不足している能力は何なのかを明らかにすることができます。その結果から、従業員の育成や研修、教育など多方面で今後取るべき施策を明確化します。

活用の幅が広い

日本では新卒採用の場面で活用されることが一般的ですが、中途採用や人材育成、組織開発など、さまざまな場面で活用することが可能です。タレントマネジメントシステムと連携することで、より最適なタレントマネジメントの実践を目指す企業もあります。

適性検査のデメリット

費用がかかる

1回受検するごとに費用がかかるため、応募者が多ければ多いほど費用がかかります。近年は定額制の適性検査も提供されていますが、ある程度の受検者数が確保できない場合はかえって割高となる場合があります。

測定が難しい項目がある

たとえばコミュニケーション能力や創造力など、検査で測定することが困難な項目もあります。自社にとって必要な項目が適性検査で測りづらい場合は、あらためて面接やグループワークなどを実施し、その項目を見極める必要があります。

対策本が出回っている

有名な適性検査は、検査にまつわるノウハウ本が販売されており、受検者が事前に対策を行うことが可能です。本を読み込んで受検した場合、本来の能力や性格が測定できないおそれがあります。

不正受検のおそれがある

適性検査が得意な人が、適性検査を受検すべき人になりすまして受検するといった、不正受検は後を絶ちません。とくにオンラインでの受検では、不正受検のおそれが高まります。

検査結果を過信してしまうことがある

適性検査の結果をもって合否を決めるケースや、「この人はこういう人間だ」と決めつけてしまうケースがあります。人には検査で測れない側面があることや、適性と実績は必ずしも相関するわけではないことを認識することが重要です。

適性検査の対象者と使用場面

新卒採用対象者

適性検査が最も活用されているのは、新卒採用の場面です。大手企業の多くが導入しており、中小企業でも実施している企業は少なくありません。能力検査と学力検査の両方を実施するケースが一般的です。

合否判断

応募者が多い企業などで、「学力検査のスコアが基準以下」「ストレス耐性値が極端に低い」といった適性検査の結果を受けて合否を判断するケースがあります。エントリーシート提出に合わせて実施することで、採用効率を上げることができます。

面接の参考情報

とくに性格検査の結果からは、応募者がどのような人なのかが浮かび上がってきます。応募者の大事にしている価値観を踏まえたうえで「どのようにその価値観が形成されてきたのか」を聞いたり、協調性の値が低い応募者に「どのようにしてチームで困難を乗り越えてきたのか」といった質問をしたりするなど、応募者の特性に応じた深掘りが可能です。

選考の要素

エントリーシートや面接は、これまでの経験やいまの考え方を把握できる一方、潜在的な可能性については見極めが難しいものと言えます。そこでエントリーシートや面接に加え、適性検査の結果を踏まえて総合的に合否を判断する企業も多くみられます。面接前に実施する場合もあれば、面接での評価と適性検査の結果に齟齬がないかを確認するために最終面接前後で実施する場合もあります。

内定者フォロー

内定を出しても、辞退されてしまうケースがしばしば発生します。適性検査の結果を活用し、内定者一人ひとりに合わせたフォローを行うことで、内定者の安心感や企業に対する愛着へつながることが期待できます。

人材配置

メンバーシップ型の雇用が主流の日本では、内定段階で配属先が決まっていないケースが多く見られます。適性検査の結果をもとに最適と考えられる配置を行うことは、新入社員の満足度向上につながり、早期戦力化も期待できます。

採用活動の振り返り

適性検査の結果と、その後の従業員の活躍を併せて分析することで、現在の人材要件が適切であるかを振り返ることができます。その結果を次の採用活動に反映することで、よりよい採用を行うことが可能です。

中途採用対象者

中途採用においてスキルや経験がマッチしていても、入社後、企業風土や人間関係が合わず早期に離職してしまうケースが増加。そのため中途採用でも、適性検査を実施する動きが加速しています。能力はこれまでの職務実績で見極め、性格検査のみを実施する企業もあります。

従業員全体

人事・人材をデータで分析する「データドリブン人事」や、人材を資本として捉えて積極的に投資する「人的資本経営」を実践する企業が増えています。そこで既存の従業員に対しても適性検査を実施し、そのデータを活用する動きが活発化しています。

人材ポートフォリオの作成

人的資本経営を推進するうえでは、自社にどのような人材がいるのかを見える化した人材ポートフォリオの作成が不可欠です。適性検査を実施することで、 客観的に従業員の持つスキルや興味・関心・価値観を定量的に表すことができます。

配置転換

適性検査を実施することで、現在の職務とは別の業務に適性や興味・関心があることが示されるケースがあります。適性検査の結果を配置に生かすことで、従業員のモチベーションや企業全体のパフォーマンスの向上が期待できます。業務をこなすうちに、価値観や仕事に対する考え方が変化することも珍しくないため、定期的に適性検査を実施することが重要です。

組織診断・開発

従業員に対して使用することで、「コンピテンシーが高い従業員は、どのような価値観に基づいて仕事をしているのか」「コンピテンシーが高い従業員と低い従業員には、どのような違いあるのか」といった項目を抽出することが可能です。その情報をもとに、個人とチームを伸ばしていくための施策を検討することができます。

昇進・昇格

適性検査の結果を昇進・昇格の要件として活用している企業もあります。とくに経営幹部やグローバル人材を選抜する場面で用いられるケースが多くみられます。

キャリア支援

上司が部下との1on1のために適性検査のデータを活用したり、部下に結果を提示することで部下が自分自身を振り返るきっかけにしたりするなど、上司が部下のキャリア支援を行うためのツールとして活用することが可能です。

退職者分析

適性検査の結果をもとに退職者を分析することで、「どういった傾向の人間が退職しやすいのか」といった傾向を知ることができます。

適性検査の受検形態

回答方法

回答方法については、「紙かWEBか」「会場か自宅か」で分けられます。現在はWEBが主流になってきています。

ペーパー (紙×会場)

ペーパー方式で一般的なのは、該当する箇所を丸く塗りつぶすマークシート形式です。WEBテストと比べて、回答や分析に時間がかかる傾向にあります。

インハウス (主にWEB×会場)

企業内あるいは企業が用意した会場で受検してもらいます。同日程に面接や会社説明会を行うことも可能です。

テストセンター (主にWEB×会場)

適性検査を提供する企業が全国各地に会場を用意し、受検してもらう方法です。受検者は会場内に用意されたパソコンで受検します。

WEB(WEB×自宅)

適性検査を自宅のパソコンやスマートフォンで行う形式です。居住地に関係なく受検できるため応募者にとっては楽な形態ですが、なりすましなどの不正受検のおそれがあります。そのため近年は、オンライン環境でも監督者やAIが監視するケースも増えています。

回答時間

1検査につき10~60分程度と、検査によって所要時間には幅があります。中には100分を超えるものもありますが、能力検査と性格検査を合わせて1時間~1時間半程度の検査が一般的です。

適性検査の提供形態

従来型(紙/ソフトウェア/WEB)

一人の回答に対し一つの分析結果を提供する形式で、多くの場合、受検ごとに費用がかかります。用意された質問に回答する「質問紙法」を用いた形が主流であり、WEBで実施されるケースが多くみられます。

クラウド型(SaaS)

近年販売されはじめたのが、インターネットを介してオンライン上に構築されたサーバーを利用する「クラウド型」の適性検査です。受検人数に制限のない定額制のものや、受検者全体のデータの比較・分析など、従来型と一線を画した機能を持つものもあります。

適性検査を提供する全国のソリューション企業

主適性検査の主な項目である「能力」「性格」と、「職場適応性(コンピテンシー、対人関係能力)」「ストレス耐性」をピックアップし、ソリュ―ション提供企業をまとめました。

能力

企業名 サービス名
株式会社 アドバンテッジ リスク マネジメント アドバンテッジインサイト
株式会社イー・ファルコン eF-1G
株式会社イー・ファルコン eF-1G
エン・ジャパン株式会社 3Eテスト
株式会社CUBIC CUBIC
株式会社グロービス GMAP
株式会社ダイヤモンド社 PURE
DBIT
DATA-OA
DATAシリーズ
DII
株式会社トランジションホールディングス  不適性検査スカウター
株式会社日本マンパワー PBT・CBT
株式会社 日本・精神技術研究所 内田クレペリン
日本エス・エイチ・エル株式会社 GAB
玉手箱III
株式会社日本経営協会 SCOA
日本経営協会総合研究所 SCOA
株式会社日本文化科学社 TAP
株式会社ビジネスパスポート BPASSサーベイ
株式会社ヒューマネージ TG-WEB
株式会社ヒューマンキャピタル研究所 HCi-ab
株式会社ベネッセi-キャリア GPS-Business
株式会社マネジメントベース HRベース
株式会社リーディングマーク ミキワメ
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ SPI3
株式会社レイル MARCO POLO

性格

企業名 サービス名
株式会社アッテル アッテル診断
株式会社 アドバンテッジ リスク マネジメント アドバンテッジインサイト
株式会社イー・ファルコン eF-1G
Institution for a global society株式会社 GROW360
エン・ジャパン株式会社 3Eテスト
株式会社CUBIC CUBIC
グラム株式会社 Jobgram
株式会社グレート・ビーンズ CIY適性検査
株式会社コラボプラン iWAMプログラム
株式会社ゴンドラ 面接くん
G-ソリューション株式会社 ProfileXT
株式会社シンカ tanθ
株式会社ダイヤモンド社 DATA-OA
株式会社タギル ビジョニングサーベイ
株式会社トライアンフ 適性検査「CUBIC TRIUMPHver.Ⅱ」
株式会社日本マンパワー PBT・CBT
株式会社 日本・精神技術研究所 内田クレペリン
日本エス・エイチ・エル株式会社 GAB
玉手箱III
株式会社日本文化科学社 TAP
株式会社ネクストエデュケーションシンク NET-HCAS™システム
株式会社ビジネスパスポート BPASSサーベイ
株式会社ヒューマネージ TG-WEB
株式会社ベネッセi-キャリア GPS-Business
株式会社マネジメントベース HRベース
株式会社リーディングマーク ミキワメ
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ SPI3
株式会社レイル MARCO POLO

職場適応性(コンピテンシー、対人関係能力)

企業名 サービス名
株式会社イー・ファルコン eF-1G
Institution for a global society株式会社 GROW360
株式会社エイムソウル CQI
株式会社エスユーエス ICP人材力診断
HQ Profile
株式会社CUBIC CUBIC
株式会社グレート・ビーンズ CIY適性検査
有限会社グローイング GROW MATCH
Thinkings株式会社 Compass
株式会社ダイヤモンド社 DPI
株式会社タナベ経営 PAT
株式会社トライアンフ INSIGHT
株式会社ネクストエデュケーションシンク NET-HCAS™システム
株式会社ビジネスパスポート BPASSサーベイ
株式会社ヒューマネージ Another 8
株式会社ベクトル PET-Ⅱ
株式会社ミツカリ ミツカリ
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ SPI3

ストレス耐性

企業名 サービス名
株式会社イー・ファルコン eF-1G
Institution for a global society株式会社 GROW360
株式会社エイムソウル CQI
株式会社エスユーエス ICP人材力診断
HQ Profile
株式会社CUBIC CUBIC
株式会社グレート・ビーンズ CIY適性検査
有限会社グローイング GROW MATCH
Thinkings株式会社 Compass
株式会社ダイヤモンド社 DPI
株式会社タナベ経営 PAT
株式会社トライアンフ INSIGHT
株式会社ネクストエデュケーションシンク NET-HCAS™システム
株式会社ビジネスパスポート BPASSサーベイ
株式会社ヒューマネージ G9
株式会社ベクトル PET-Ⅱ
株式会社ミツカリ ミツカリ
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ SPI3

企画・編集:『日本の人事部』編集部