ベトナムで人材サービスを立ち上げて人生が変わった
――創業70周年で社長に就任。
「100年企業」への礎を築く

株式会社廣済堂 代表取締役社長

根岸 千尋さん

社長就任――「100年必要とされる企業」になるための礎を築く

2019年6月、廣済堂の代表取締役社長に就任されました。これから廣済堂をどのような会社にしていきたいとお考えですか。

廣済堂の社名にある、「廣済」とは広く救うという意味。この社名には、「広く社会に貢献したい」という志が刻まれています。廣済堂グループでは、印刷やIT・BPOを手がける情報コミュニケーション事業、求人メディアや人材紹介・派遣・海外人材サービスを手がける人材ソリューション事業、葬儀やエコビジネスを手がけるライフスタイルデザイン事業の三つの柱で事業を展開していますが、いずれのビジネスにおいても、根底にあるのは「広く社会に貢献する」という共通理念です。人の生活や消費、ビジネスのあり方が大きく変わりつつあるなかで、どのように社会の役に立っていくかという視点がとても重要です。時代に合わせて、時には大胆な改革を断行しながら、理念を体現していきたいと考えています。

同時に、当社の従業員やその家族が心から安心できる会社をつくることも大切です。そのためには、必要があれば本質的な事業改革を行い、一人ひとりの生産性を向上させ、会社の売上や収益性を高めていかなければなりません。当社のビジネスの核となっている三つの事業に加え、現在手がけているITやBPOなどの、時代に求められる新サービスをコア事業へと育成することが、ステークホルダーのためになると考えています。

廣済堂は今年で創業70年。この節目に、社長に就任した私に委ねられた役割は、これから100年企業になるための礎を築くこと。廣済堂が100年必要とされる企業であり続けるためには、ユニークで質の高いサービスを提供し続けるとともに、新たなサービスを世に送り出して行く努力を重ねていくことが重要だと認識しています。

長年、HR業界にいらっしゃる根岸さんから見て、現在の日本企業における「人や組織」「HR業界」にかかわる課題には、どのようなものがあるとお考えですか。

少子高齢化によって多くの企業や組織が人手不足に陥るということは、ここ何十年もずっと言われていることです。その課題に対する有効な策として、女性活躍やシルバー層・外国人の積極登用が挙げられています。しかしながら、彼らをうまく活用できている企業は少ない。大手企業で取り入れられているダイバーシティも、中小企業にはまだまだ浸透していません。

女性やシルバー層・外国人材を積極的に活用していくには、まず、人材を雇用する企業側の意識改革が必要です。一方、サービスを提供する人材会社は、人材不足のリスクや多様な人材を雇用することの意味と価値を、もっと啓発しなければならないと感じています。

女性を採用するために、女性が働きやすい環境をどのように整備していくのか。外国人を単なる労働力として捉えるのではなく、外国人が日本で幸せな就職をして活躍できるように、どうサポートしていくのか。もっと本気になって議論し、実践すべきです。

ベトナムで人材サービスを立ち上げた経験から申し上げると、外国人を採用するには、日本人の求職者を採用するとき以上に丁寧なコミュニケーションが求められます。外国人にとって働く場所は日本だけではありません。アジアの国々や欧米諸国の企業がライバルとして台頭しています。日本よりも魅力的な環境を用意している海外企業が増えているのです。日本企業も、外国の方々に働きたいと思ってもらえる環境づくりに力を注がなければ、人材不足はさらに深刻になっていくでしょう。

最後に、人材ビジネス業界で働く若い皆さんにメッセージをお願いします。

最近、「人材ビジネス業界は若い人たちのあいだで不人気になりつつあるらしい」と聞きました。約30年前、私が人材業界に飛び込んだころは、市場が急拡大する時期だったこともあり、とても人気がありました。学歴も経験も関係なく、懸命に努力をすれば、マーケットをけん引でき、高い給料をもらえる職業として認知されていたからです。現在は人材マーケットにおいてサービスが固定化し、市場の不透明感や人と向き合う仕事のハードさが否めないなかで、閉塞感や将来の不安を覚える若手が増えているのかもしれません。

ただ、人材ビジネス業界に面白さや将来性を見出せないと感じているのであれば、それは誤解です。人材業界は、大きな変革期を迎えています。既存のサービスだけではもうからなくなってきているからこそ、変化をつけた新サービスが生まれ始めている。20代・30代の若い経営者を中心に、新しいビジネスを仕掛けるプレイヤーが増えています。自分の考え方や行動次第で、業界に一石を投じることができるし、変化の波に乗っていくこともできるのです。

人材ビジネスは今、とても面白い市場になっていると感じています。企業の人事も、HR業界に関わる方々も、人の人生を左右する重要なミッションを担っています。そのことに誇りを持って、新たな時代をつくるべく、仕事をぜひ楽しんでほしいですね。

根岸 千尋さん(株式会社廣済堂 代表取締役社長)

(2019年7月24日 東京・港区の廣済堂本社にて)

社名株式会社廣済堂(KOSAIDO Co., Ltd.)
本社所在地東京都港区芝浦1-2-3 シーバンスS館13F
事業内容情報コミュニケーション事業/人材ソリューション事業/ライフスタイルデザイン事業
設立1949年1月

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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