HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

株式会社パソナグループ 代表取締役グループ代表

南部 靖之さん

人に対する「思いやり」なくして、人材ビジネスは成り立たない

(2012/10/5掲載)
1976年に人材派遣会社を設立、日本の人材派遣のパイオニアとして常に第一線を走り続けてきたのがパソナグループ代表の南部靖之さんです。近年は、派遣法の改正やグローバル化の急速な進展など、経営を取り巻く環境が激変していますが、常に新しい事業へとチャレンジし、雇用創造に取り組んできました。また、新卒未就労者の就労支援、障害者の職域開拓など社会貢献を積極的に行っている姿勢が、多くの方々からの支持を集めています。日本人の働き方に対して強い問題意識をお持ちの南部さんに、これからの日本の雇用のあり方や人材ビジネス業界に対する思い、雇用問題を解決するために行っている施策などについて伺いました。
プロフィール

南部靖之(なんぶ・やすゆき)●1952年兵庫県生まれ。1976年関西大学工学部卒業。「家庭の主婦の再就職を応援したい」という思いから、大学卒業の1ヵ月前に起業し、現在のパソナグループを設立。以来、新たな働き方や雇用のあり方を社会に提案し、誰もが自由に好きな仕事に挑戦できる雇用インフラの構築を目指している。2001年12月に大証ヘラクレス、2003年10月には一般人材派遣会社としては初めて東証第一部に株式会社パソナを上場させた。 2003年からは新たに「農業分野」への就農支援を開始し、地方自治体と連携して農業研修「農業インターンプロジェクト」を実施。また2008年には、独立就農を支援する農業ベンチャー支援制度「チャレンジファーム」を兵庫県・淡路島で開始し、農業分野に新しい発想と知識を持った人材が参入することで農業全体を活性化し、周辺産業も含めた雇用の創出と新しい働き方の提案を行っている。 リーマンショック後、急激に悪化した大卒新卒者の就職を支援するため、2010年から「人材創造大学校/フレッシュキャリア社員制度」を開始し、独自に若者のキャリア形成の支援を行っている。 パソナグループは、「社会の問題を解決する」という創業以来変わらぬ企業理念の下、“人を活かす”をキーワードに、年齢・性別・経験を問わず、誰もが夢を持って活躍できる社会の実現を目指している。
南部靖之オフィシャルウェブサイト

会社経営において、最も重要なことは何か?

―― 長く人材ビジネス業界にいらっしゃいますが、近年の業界の状況をどう思われますか。

まずはじめに、我々のような人材サービスに従事する会社の経営者から末端の社員まで、プロフェッショナルとして芯の通った揺るぎない「心構え」を持つべきです。経営資源の「ヒト・モノ・カネ」の中で、我々が扱う「ヒト」(人)は、国家や企業の財産です。人は、気持ちの持ち方、やる気次第で大きく変わります。そのことをまず念頭に置くべきです。ところが、人材サービス会社であっても、会社の規模が大きくなるに従い、いつの間にか売り上げや利益、株価などを重視するようになってしまいます。しかし、一番大切なのは、我々のサービスは人を扱っているという事実。その本質を見失ってはいけません。

パソナは、家庭の主婦や障害者、中高年、若者など、社会的に立場の弱い人たちに対して、企業で働く場を紹介する、能力・スキルの開発を行う、あるいはメンターとして相談に乗る、というサービス提供を通じてビジネスを行っています。結果的にこの人は派遣に向いている、斡旋に向いている、あるいはもっと能力開発を行ってから働いたほうがいいという支援をしており、必ずしも人材派遣に特化して事業を行っているわけではありません。パソナには「社会の問題点を解決する」という、創業以来変わらない企業理念があります。雇用という点から社会に起きているさまざまな問題に対して、メスを入れていこうとしています。

ですから、パソナの社員には常日頃から「我々にとって一番大切なもの」を言い続けています。それは人に対する「思いやり」です。例えば、営業の数字を上げていて、メンターとしても完璧で、コンプライアンスの知識もあり、仕事のノウハウを持っている。そういう優秀な人がいたとしても、「思いやり」がなければ人を扱うサービスでは、プロフェッショナルな人材ではありません。

―― なぜ、「思いやり」が第一になるのでしょうか。

株式会社パソナグループ 代表取締役グループ代表 南部 靖之さんPhoto

日々の仕事をしていく中で、人材サービスを単純にビジネスとして考えてしまうと、思いやりよりも効率が大切であるとか、その人の将来のキャリアよりも、今その人をどこに派遣するのかとか、目標を達成するためにとにかく数字を上げようなどと考えるようになり、ややもすると、最初の目的である創業精神や企業理念を忘れがちです。

なぜなら、ビジネスは常に競争原理の中に置かれているからです。「絶対価値」の創業精神を抱いて始めたことが、同業他社が増えてくると、競争に勝ち抜かなければならないという「相対価値」に左右されます。そうすると、第一に考えなければならない大切なことを見落としてしまいます。経営者も、株価対策、M&A対策などの企業拡大の方向に向かいます。しかし、我々のような人を扱う業界において、そのような論理は違うと思います。儲かるからやる、利益が出るからやる、ということではないのです。

―― 今、問題となっている日雇い派遣について、どのようにお考えですか。

パソナは日雇い派遣を行っていませんが、この問題もしっかり考えなければなりません。日雇いとは、1日精一杯仕事をこなしても、次にまた仕事がいつ来るのか分からない、ということが問題なのです。そこで、金銭的な支援や教育を行うなどして、1日しか仕事のない人が3日間仕事をできるようにする。さらにいろいろなサポートをすることで、1週間、1ヵ月といった一定期間、働くことができる仕組みを作っていこうということです。こういうことを考えなくてはならないのに、とにかく労働者保護の観点から、日雇いはダメだと一方的に結論を下す。しかし、例外として世帯年収が500万円以上の人は、日雇い派遣を可能とするなどの例外が認められていますがルールがあいまいです。このままでは、派遣就労の機会自体を減らしたり、短期労働者が低所得のまま固定されたりする状況を助長しかねません。

日雇い派遣の問題に限らず、人材を扱う会社である以上、人が喜んで働けるような仕組みづくりを考えなくてはなりません。働く人の九十数パーセントは中小企業で働いていますが、そこでは働く人の立場は弱くなりがちです。サービス残業も少なくありません。しかし、そこにパソナが介在することによって、就労環境は一変します。サービス残業がなくなるだけでなく、産業医が置かれたり、スキルアップのための教育も受けられるようになります。安心して働くためには、きちんと福利厚生や教育制度などが保障されていることが大切なのです。派遣という仕組みの中で、我々がその部分を担保しているのです。

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