他社にない事業を手がけ、
困っている顧客に寄り添い続けて40年
絶大な信用を誇る朝日新聞との提携で次のステージへ

株式会社学情

中井清和さん

“リクルートがやらないことをやる”が結実した「就職博」

 就職情報事業に進出されたのは1981年、創業6年目のことです。広告代理業から一転、人材ビジネスに大きく舵を切った経緯についてお聞かせください。

赤字こそ出なかったものの、広告はあまりもうからない。それが一番の理由でした。一方で、取引先の新聞社や放送局などの媒体社を見ると、多くの会社が高収益を上げている。やはり代理店では限界があります。自ら商品を開発し、自ら値付けをして売っていかなければダメだな、と痛感したわけです。そこで何がいいかと考えたのですが、ちょうどリクルートが関西へ進出し始めた時期と重なったこともあり、それなら弊社も人材関連にチャレンジしてみよう、と思い、舵を切ったのです。

 新しい事業が軌道に乗ったきっかけ、中井社長が「これはいける」と確信した転機はいつ、どのように訪れたのでしょうか。

中井清和さん インタビュー photo

「他人のまねをしない、オリジナリティーを最優先する」が私の信条です。だから私は、このビジネスの先行者であるリクルートが出していない商品を出す、ということを徹底して追求したいと思っていました。その一番手が、30年前に大阪で始めた「就職博」。弊社が日本で初めて開催した合同企業説明会です。当時の企業は、学生宅に送られる就職情報誌に新卒の求人を掲載し、学生から資料請求のはがきが帰ってくるのをひたすら待っていました。ただ、学生がはがきを送るのは一部の有名な企業だけ。多くの企業には返ってきません。私も、企業の採用担当者の方から「学生が来ない」という切実な悩みをよく聞いていました。そこで「学生が来ないなら、逆に企業の皆さんのほうから出向いて行かれたらどうですか。弊社が学生を集めますから」と提案したのです。それが「就職博」誕生の瞬間。弊社にとって、最大の転機だと言えるでしょう。どこにもないサービスで、あっという間にヒットしました。現在、就職イベント関連市場は日本全体で約100億円ですが、弊社の売上は約21億円でシェア20%を超えています。

 他人のまねや二番煎じの商品では、お客様が本当に困っている問題を解決することはできないという好例ですね。御社のサービスには、新卒採用向けの就職情報サイトの他に、「Re就活」という中途採用向けのサイトがありますが、これも日本初だそうですね。

そうなんです。今から13年前に、ある有名私立大学の就職部の部長さんから「大学では、現役の学生の就職支援はできるけれど、卒業生の支援はできない。だから、いわゆる“第二新卒”を対象とした就職情報サイトをつくってくれないか」という相談を受けました。私が「他社さんには相談されましたか」と聞くと、相談はしたけれど、第二新卒には企業のニーズがないということで、断わられたとおっしゃったんです。他社がやらないからこそ、弊社がチャレンジする価値がある。私は即決で引き受けました。「Re就活」は現在、20代の第二新卒専用サイトで日本一の実績を挙げています。競争相手もほとんどいません。

 「他社が手を出さないのには、そう判断するだけの理由があるのかもしれない」とはお考えにならなかったのでしょうか。

私はそうは考えません。手を出さないのは、出せないだけ。問題を解決するための知恵が出ないのだと思います。大手人材会社で、優秀な人材をたくさん擁していても、思いつかないことは思いつかない。その証拠に、弊社が最初に立ち上げたインターネットによる新卒ナビにも、合同説明会にも、大手は後から参入してきましたからね。大手が手を出さないことでも、知恵を絞れば、やり方は必ずあるんです。むしろ同じ商品、同じ土俵で大手と勝負していたのでは、競争に勝てませんし、最後は値引き合戦になって体力のないほうが倒れてしまう。だから、私は常に他社と違うことを手がけてきました。同業者には「学情は変わった会社だ」とよく言われていました(笑)。

 中井社長は、子どもの頃からそういう性分だったのですか。

別に親から教育されたわけではありませんが、とにかくまねをするのが大嫌いで、人より変わったことがしたい。そうでないと競争に勝てないし、目立てないという思いは、子ども心にも強かったですね。みなさん、頭ではそうしたほうがいいとわかっていても、実際に行動に移す人は少ないでしょう。変わったことをやろうと思っても、思いつかない、どうしていいかわからない。ちょっと考えただけであきらめてしまう。若い人たちを見ていても、そういう部分に歯がゆさを感じることは少なくありませんね。

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