少子化、産業構造の変化――
「人の価値」がより高くなる時代 
人材サービスこそが高付加価値を生むビジネスになる

ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス株式会社 代表取締役社長

渡部 昭彦さん

今、日本企業の人事は大きな変革を迫られている

 渡部社長は経営者としてどのようなことを大切にしていらっしゃいますか。

ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス株式会社 代表取締役社長 渡部 昭彦さん

言葉にすれば「コンセンサスとコミュニケーション」。この業界、とりわけ人材紹介の仕事は、個人の能力に依拠するところが大きいんです。言い換えれば、プロフェッショナルの集合体としての会社ということ。ですから、トップダウンですべてを動かしていくのではなく、一人ひとりの社員に会社との一体感を持ってもらい、専門性を発揮してもらうのがベストだと考えています。経営者は大きな方向性を示した上で、社員のコンセンサスを得るべくしっかりコミュニケーションを図っていく。これを最も重視しています。良くも悪くも当社は「緩やかな組織」です。具体的には年2回、グループの全社員を集めて会社の現状や目標を共有する機会を設けています。さらに、事業会社単位でも同様のコミュニケーションの場を頻繁につくるようにしています。

10年間の会社経営の中で「経営はすなわち人事だ」と感じています。特に当社のようなビジネスの場合、設備投資は必要ありません。良い人材を採用して、きちんと評価して、励まして頑張ってもらう。それがすべてですね。自社の採用は中途のみですが、経験者も未経験者も採用します。未経験といっても、さまざまな企業で部長級まで経験した人や、役員経験者もいます。それだけに皆、一家言持っているし、それぞれの分野での専門性も高い。人材紹介では40代、場合によっては50代の人も採用します。

 渡部社長の目から見て、現在の日本企業の人事部の課題は何だとお考えですか。

簡単に言えば、「人事の役割は何か」ということが揺れ動いている時代だと思いますね。日本企業における人事部の仕事には、大きく分けて二つありました。一つは評価や人事異動を中心とした「人事権」を行使する仕事。いわば経営機能の一部を受け持つ部分です。もう一つは働きやすい環境をつくり、給与計算のような事務処理を担う部分。こちらは「サービススタッフ」の仕事といってもいいでしょう。経営に近い機能を持つ分、日本の大企業の人事は非常にステータスが高いのが特徴でした。一方、外資系企業の場合は、必要な人材は社内の人事異動ではなく、現場が外部から採用するのが基本的なやり方。そのため、外資の人事は、主に事務処理を中心としたサービススタッフという位置づけです。

この20~30年は、新卒一括採用や長期雇用といった日本型の雇用環境が揺らぐ中で、日本企業でも人事権が、徐々に人事部から現場へと移っていった時代だったと思います。かつてのような中央集権的な人事を続けることは難しいし、かといって外資系企業のようにサービススタッフに徹するだけでいいのか、という思いもある。これからの人事が担うべき業務とは何なのか。そこにまだはっきりした答えが出ていないところが、人事の一番の悩みどころかもしれませんね。

 環境の変化の中で、これからの人事に求められるものは何だと思われますか。

これからは人手不足の時代ですから、人材は貴重なものだという大前提で考えなければなりません。戦後ずっと人は余っていて、安い賃金で人を使えるモデルだったわけですが、それが今後は180度変わる、ということです。人事の仕事は、その貴重な人材のリソースをどう最適配分していくかを考えることでしょう。当然、高付加価値でなければなりません。さらに重要な仕事になると思います。

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