ソリューション協創型ビジネスを新たな柱に
グローカリゼーションのスイッチを押し続けていく

SAPジャパン株式会社 代表取締役社長

福田譲さん

39歳で日本法人のトップに。「グローカリゼーション」を推進する

 社長就任時には、「SAPジャパンのグローカリゼーション」など、いくつかの目標を掲げられました。これまでの進捗状況をお聞かせいただけますか。

SAPは人材に関しても顧客に関しても、グローバルにネットワークを持っていて、世界の知見を日本に注ぎ込めることがバリューの一つです。それを顧客の期待通りに実行できる個人、組織になろうという思いを込めた目標設定が「グローカリゼーション」。「グローバル化」ではなく、あえて「グローカリゼーション」としたのは、会社としてはまだ日本に合わせた最適化ができていないと感じていたからです。「グローバル」という国はありませんから、企業は必ずどこかの国でビジネスをしています。そして全ての国は違う。それぞれの国の違いをきちんと理解して、どこまでグローバルで筋を通し、逆にどこからはそれぞれの国(ローカル)に合わせていくべきなのか。それをバランスよくできるのが、真のグローバルカンパニーでしょう。

例えば人材の交流、海外のSAP社員を日本に呼び寄せたり、日本の人材をグローバルに出したりしています。まだ母数は多くはありませんが、そういう意識を持った人が手を挙げ、フェアに選考して動かす仕組みを回し始めました。マネジメントメンバーも多様で、SAPジャパンのCOOはイギリス人の女性。CFOはブラジル人、サービス部門の責任者はドイツ人、業界戦略の責任者はインド人、と意図的にグローバル化した布陣を敷いています。

英語力だけがグローバル化ではありませんが、やはりコミュニケーションツールとしての英語は重視しています。全社員でTOEICを受験して継続的な向上を図っています。会議でも日本語を話さないメンバーが参加する場合は、英語を使うので、日本人でないメンバーが活発に発言できます。多様性を生かす視点からも、共通言語である英語でものごとを進めるほうが効率がいいし、新しいアイデアも出やすいように思います。もちろん、全員がすぐに話せるようになるわけではないのですが、それはやり方、学び方の問題でしょう。「スイッチ」が入れば、たいていのことはできます。それは、私自身が身をもって経験しました。学生時代、あんなに英語が苦手だったのは何だったのかと思うくらいですから。

ただ、こうした取り組みはずっと続けていかなくてはなりません。現状ではまだ目標に対して「六合目」くらいです。

 「グローバルインダストリービジネスユニットの実現」「ERPへの再フォーカス」なども目標として掲げられていました。

SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 福田 譲さん インタビュー photo

海外の知見を積極的に取り入れていく、という動きは着実に進んでいます。特に自動車業界、電力業界では成果が計画通りに出ています。日本の顧客の意識もかなり変わってきていて、昔は英語の資料を持っていくと「日本でやる気があるの?」と叱られたものです。ところが、今は日本語に訳していくと、「翻訳している時間があるならもっと早く持ってきてほしかった」と言われます。業種にもよりますが、アジア、インド、アフリカ、南米などの成長地域にフォーカスしている日本企業が増えています。その意味でも、SAPのグローバルでの知見を日本の顧客に届けることは、より重要になるでしょう。

ERP(基幹業務統合システム)は、私たちSAPの祖業ですが、世界と日本のトレンドには差があると思っています。世界的な大企業ではERPの導入はほぼ終わっていますが、日本ではこれからです。ERPは導入自体が目的ではなく、「何を変えるためにどのように導入するか」が鍵です。これからグローバルで成長するためのマネジメントシステムとしてERPを適切に使いこなしている日本企業はまだ限られています。日本のERP市場の成長はまだ続くと思いますので、今後も引き続き注力していきます。

 「クラウドへの取り組み」も強調されていました。

今やクラウドは、特別なものではなくなりました。大企業のシステムでも、当たり前のように使われています。当然、私たちも注力していきますし、高い成長が期待できる分野です。背後では、さまざまな技術の変革や提案にあたっての目線、顧客の期待値など、多くの要素が「激変」と呼ぶレベルで変わっています。人材の意識、スキル、ビジネスモデルなど、適切に変化させる必要がある、と考えています。

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