ソリューション協創型ビジネスを新たな柱に
グローカリゼーションのスイッチを押し続けていく

SAPジャパン株式会社 代表取締役社長

福田譲さん

タレントマネジメントをはじめ人事分野が秘める限りない可能性

 現在のビジネスソフトウェア市場、特に人事関連のマーケットをどう捉えていますか。

今後のポテンシャルという意味でとりわけ注目すべきなのは「タレントマネジメントシステム」でしょう。人材についてはどの企業も課題を抱えています。特にグローバル企業では、世界中の何万人もの従業員の中から、あるポジションに最適な人材をどう見つけて育成、配置していくか、重要かつ難しい問題です。従来のような、日本人・本社・国内が中心の、目の届く範囲の人材活用とは根本的にレベルが違うわけです。

SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 福田 譲さん インタビュー photo

そこで威力を発揮するのがIT、タレントマネジメントシステムです。私自身、SAPジャパンという現地法人に入社した一社員だったわけですが、社長就任の二年くらい前から、グローバルの経営トップ層が、めったに会わない私の近況やキャリアの志向、取り組んでいる能力開発のことをしっかり把握していることに驚かされていました。その背景にはタレントマネジメントシステムがあったわけです。私が日本を任されることになったのも、タレントマネジメントシステムを通じた現地人材の育成・活用の成果の一つと言えるでしょう。人事はアナログな世界ですが、逆にITを使うことで人の想いや理想を現実のものにできる。多様性に富み、一人ひとりが違っているタレントを、きめ細やかに配置・育成し、人材リソースを真に「人財」として生かせるようになるわけです。

SAPのタレントマネジメントシステムは「SAP Success Factors」というブランドで展開しており、この分野では世界でNo.1です。私自身もその力を痛感しましたし、自信を持って顧客にお薦めしています。日本で、もっとグローバル化を進めたい顧客、人の力をさらに活用していきたい顧客の人材ビジョンの実現に貢献したいと思います。

 日本の人事部門がより良くなるには何が必要だとお考えですか。

私が人事の役割として大切だと思うのは、個々人が「自分の成長スイッチを押す」ことを手伝うこと。私自身の経験の中でも、自分で成長のスイッチを押すことで意識や取り組み方が変わり、結果として自分の能力や視点が広がったように思います。そうすれば仕事が変わり、人生が変わります。しかし全員が、自分でスイッチを押せるわけではありませんし、常にスイッチがオンになっているわけでもありません。そんなときに誰かが手伝ってあげる、きっかけをつくってあげることが大事。私も留学に関しては上司や人事部門が機会を半ば強引に作ってくれました。一人ひとりのタレントをいちばん近くから見ているのは上司であり、客観的に見られるのは人事だと思います。各部門のマネジャーとともに、それぞれの人材のスイッチの状態を常に把握し、止まっている人がいたら押してあげる。あるいは自分で押すきっかけをつくってあげる。それがきちんとできるのが理想の人事であり、そのための仕組みとして有効なのがタレントマネジメントシステムだと思います。日本、あるいは日本企業にとって未来に向けた課題が多い今、皆が背伸びして意識的に成長を加速させる仕組みと風土づくりが、人事部門にとって大きな使命ではないでしょうか。

おこがましいことですが、もう一つ申し上げるなら、人事部門に所属されている方々自身がいきいきとした目をしてキャリアを重ねられている会社は成長しているように感じます。人事のプロフェッショナルという方に加えて、多様でチャレンジングなキャリアを歩んでこられた方が人事部門に多い企業は魅力的ですね。

 最後に人事向けサービス業界で働く後輩の皆さんにメッセージをいただけますでしょうか。

日本には得意な分野もあれば、課題もあります。得意な部分はそのまま伸ばしつつ、課題をきちんと自覚し、具体的な解決策を考え、実行する時だと思います。これを個々の会社が個別に取り組むのに加えて、人事サービス業界全体で意識を上げて取り組めるといいなと思います。昔は10%以上あった世界に占める日本のGDPは、今や世界の6.5%しかありません。それはある意味で、普通の国になったということ。もはや「日本は特殊な国だから」という言い訳は通じないし、それを言っていてもガラパゴス化していくだけでしょう。良いところは残しつつ、世界の知見を活用して自分たちを変え、課題をどんどん解決していく。これを個人・組織・社会それぞれのレベルで具体的な取り組みに落とすことが求められているように思います。人事向けサービス業界がやるべきこと、リードできることはたくさんあると思います。

SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 福田 譲さん インタビュー photo

(2017年2月3日 東京・千代田区のSAPジャパンにて)

社名SAPジャパン株式会社
本社所在地東京都千代田区麹町1-6-4 SAPジャパンビル
事業内容コンピュータソフトウェアの開発販売、教育ならびにコンサルティング
設立1992年10月

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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