ソリューション協創型ビジネスを新たな柱に
グローカリゼーションのスイッチを押し続けていく

SAPジャパン株式会社 代表取締役社長

福田譲さん

デザイン思考によるソリューション協創型ビジネスの確立を目指す

 現在、御社が注力されている分野、事業などについてお教えいただけますか。

冒頭、SAPのビジネスは、顧客の課題に対してソリューションを提案するスタイルと申し上げました。もちろん、そうした従来型のビジネスも祖業として継続していきますが、その一方で「顧客と一緒に課題を発見し、ソリューションも一緒に考えていく」、いわば「ソリューション協創型ビジネス」の割合を高めつつあります。

昨年、軽井沢でスキーバスの大きな事故がありました。再発を防ぐために何かできないかと、NTTとSAPで共同開発したクラウドサービスが「CTS(コネクテッド・トランスポーテーション・セーフティ)」。東レが開発した特殊な服地素材とNTTの発信機・回線を組み合わせて、着用しているドライバーの心臓の鼓動をリアルタイムでクラウドにあげていくシステムです。人の鼓動は一回ごとにすべて違っていて、そのゆらぎから緊張状態や体調がわかるんです。異常を検知したらすぐに運転者を交代させたり、車を停止させたりするなどの対策がとれる。福井県の京福バスなどですでに使われはじめています。

SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 福田 譲さん インタビュー photo

こういう個別の課題に最適のソリューションを新しい発想と方法で考えていく「デザイン思考」に積極的に取り組んでいます。コラボレーティブに、オープンに考えていくことで今までにない発想を導き出す。この誰もがイノベーターになれる手法を、私たちはSAPの社内にも普及させ、また顧客にも提案してビジネスを共創しています。それに対応できるイノベーション偏差値や感度の高い人材、組織を育てていくことが、現在の当社の最も重要な注力ポイントです。

 そのための新たな組織、部署なども立ち上げているのでしょうか。

もちろんチームはつくっていますが、そこに全て任せてしまうということがないように注意もしています。例えば、海外事業統括部門がある日本企業では、ほかの部門が「海外のことはあの部署の担当」と、考えなくなってしまう傾向があります。海外展開しているのに、会社全体としてはグローバルに物事を考えられていない、といったように。

このデザイン思考、ソリューション協創型ビジネスに関しては、SAPジャパン全体がそれを常に意識している組織にしていきたいと考えています。専門部署をつくり、リードする人材も置いていますが、あくまでも全社で推進します。2020年までの日本法人の中期プラン「JAPAN2020」にも、はっきりと組み込みました。この中期計画自体も、上から一方的におろすのではなく、各部門のマネジャー約40名が集まり、デザイン思考の手法を取り入れながら、異なる意見や新しい視点を統合して作りました。ビジネスだけでなく組織運営にもデザイン思考、ソリューション協創型の手法を浸透させていきたいと考えています。

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