英会話スクールの運営を通じて思いついたアイデアを具現化して起業
夢とアイデアと情熱で、ネット求人事業に道を拓いたベンチャー魂

ディップ株式会社

冨田英揮さん

起業を決断、英会話教室の生徒募集がアイデアのきっかけに

大学を出て、不動産業界などで営業の仕事を経験した後、父が新しく始めた英会話スクールの運営を任されることになりました。ところが、その矢先にバブルが崩壊。みるみるうちに資金繰りが悪化し、スクールの経営は赤字に転落してしまったのです。一転して自己破産寸前まで追い込まれた父は、スクールの身売りを決意。私は売却相手を探しました。そしてその新しいオーナーと交渉するうちに、引き続き現場の経営責任者として働いてほしいという話になったのです。26歳のときのことでした。

 いきなりスクールの再建を託されたわけですか。積み重なった赤字を減らすために、どのような努力をされたのでしょうか。

とにかく業界に関してまったくの素人でしたから、スクール経営のノウハウを知るために、成功している同業他社で働いたこともありました。そこで得たノウハウを、自分のスクールに戻って社員たちに教えたわけです。そうこうするうちにわかってきたのは、成功のカギは生徒募集にあるということ。当時は折り込みチラシなどに広告を掲載して生徒募集を行っていましたが、一人の生徒を獲得する費用が年間授業料を上回ることも少なくありませんでした。もっと効率のいい募集方法はないか。考えに考え抜いて気づいたのが、名古屋市内の国際センタービルの中に設置されている、英会話スクールのパンフレットコーナーでした。さまざまなスクールのカタログ類がまとめて置いてあり、そのラックを月々いくらで借りるシステムですが、実はそこからの入学申し込みや問い合わせの件数がダントツに多かった。広告効果がずば抜けて高かったわけです。こういう情報提供の仕組みを量産し、いろいろな場所に設置すればヒットするのではないか。そう思いついたのが、起業の直接のきっかけでした。

冨田 英揮さん インタビュー photo

 「無料カタログ送付サービス」のアイデアですね。

はい。英会話教室だけでなく、各種スクールの生徒募集やブライダル、自動車購入など、さまざまな分野のカタログを専用の情報端末から取り寄せるシステムをつくろうという構想です。情報端末を使えば、ラックのように場所を取ることもなく、カタログ類を補充する手間も要りません。アクセスした利用者には無料でカタログを送付する代わりに、入手した顧客データを企業に売り、見込み客情報としてマーケティングに使ってもらう。そんなサービス展開を考えたのです。思いつくや否や、私は、この新しいアイデアにほれ込みました。一方で、英会話教室のほうはようやく黒字に転じたものの、経営方針を巡り、オーナーと意見が合わなくなってきていたんです。それもあって、起業に専念することを決断。スクール経営から退き、会社も辞めました。そのころにはもう、継ぐはずだった父の事業もありません。頼れるものは何一つ残っていなかったんです。

 ベンチャーにはリスクがつきものとはいえ、そこまで思い切った決断はなかなかできません。夢とアイデアと情熱、本当にそれだけでスタートされたのですね。

リスクなんて、考えもしませんでした。新規事業の成功を信じて疑わず、このアイデアを形にさえすればすぐに収入に結びつくはずだと、ほれ込んでいたのです。何しろ、失業保険の申請もしないまま、突き進んでいったくらいですから(笑)。もちろん、事はそう簡単には運びませんでした。資金の壁が立ちふさがったのです。会社をつくろうにも、まず資本金がない。ならば、アイデアを買ってもらおうと、いろいろな企業に事業プランを売り込んで回りましたが、面白いと評価はされるものの、具体的な商談には至りません。当座の生活費を借金で工面しながら、起業の金策に走り回る日々が2年ほど続いたでしょうか。そのうち借金も膨れ上がり、当初は理解を示していた父からも、「いつまでそんなことをやっているんだ。いい加減に目を覚ませ!」と激しくなじられるようになりました。

HRソリューション業界TOPインタビューのバックナンバー

関連する記事