「選択理論」を世の中に広め、
世界最高峰の人材教育コンサルティング会社へ

アチーブメント株式会社

青木仁志さん

「犬付き」で、ブリタニカに採用される

 若くして、大変な苦労をされたのですね。

そうなんです。当時、私は犬を飼っていたのですが、会社をたたむことになり、犬も手放さなくてはなりませんでした。その時に、また新たな出会いがありました。百科事典販売で知られるブリタニカという会社のトップマネジャーだった木村さんという方が、犬を譲り受けにいらっしゃったのですが、私と話しているうちに犬よりも私のほうに興味を持ってくださったのです。私は自己啓発書をたくさん読んでいて、今津さんの会社で営業の基本を教わっていたので、セールスパーソンとして必要なセンス・スキルがある程度備わっていたことと、会社経営をして借金を抱えるという苦い経験をしていた点に興味を持ってくださったのだと思います。

当時、かなりの借金が残っていましたが、木村さんは「ブリタニカに入って結果を出せば、借金はすぐに返せる」とおっしゃいました。さらに「犬と別れなくてもいいから」と、犬付きで私を採用してくれたのです。赴任した関西で一軒家を借りてくださり、そこで私は愛犬と一緒に新たな生活をスタートすることになりました。

初めてブリタニカの組織を見た時に、「これだ!」と思いました。学歴や性別・国籍など、あらゆる要素が関係ない。自由競争の世界で、「売れる人間が一番優秀だ」という社風です。今まで私は負債を抱えていて、コンプレックスの塊でした。この会社ならそれを解消できると思い、必死で頑張ろうと決心しました。徹底して営業活動を行った結果、トップセールスマンになり、さらにはトップマネジャーになることができました。

ところが29歳の時、大きな転機がありました。恩師の一人である夏目志郎先生という方との出会いです。夏目先生はクリスチャンで、能力開発のコンサルタントでした。ブリタニカでは伝説的なセールスマンとして知られ、ブリタニカから独立してからは、SMI(サクセス・モチベーション・インスティテュート)という能力開発の教材で6年連続で世界一になったトップセールスマンです。私は夏目先生が作った能力開発のプログラムをユーザーとして購入していました。夏目先生が東京にいらっしゃった時、「青木君、面白いセミナーがあるから行ってみないか」と連れていってくださったのが、キリスト教プロテスタント伝道の大会でした。その頃の私はと言うと、「トップマネジャー」という自負と虚栄心があり、営業こそが全てであると信じていました。

青木仁志さん インタビュー photo

会場に入ると、牧師が「疲れた人、重荷を負った人、前に出てきなさい」「神様があなたを、休ませてあげます」「人間はどんなに努力をしても、罪深い存在なので、自分の行動では救われないのです」とおっしゃっていました。すると、皆がぞろぞろと前に出ていくのです。

私は「前に出ていくものか」と思っていましたが、その一方で心の中に何か「穴」があいているのは自分が一番よく分かっていました。そのとき一番欲しかったもの、それは「愛」です。ストレスの高い職場の中、結果を出せばそれが正義であると思っていましたが、牧師のメッセージを聞いて心の中に強く響くものがあり、自然と足は前に。宴台の前でひざまずいて、「神様、私は罪深く、本当に弱い人間です。もし、あなたがいらっしゃるのなら、助けてください」と懺悔し、祈りました。そして、そこから私は本当に変わりました。

 そこで、人生観が大きく変わったのですね。

そうです。会社経営のピラミッドでは、まず土台となる「理念・ビジョン」があり、その上に「目標」があり、そして「計画」と「日々の実践」があるわけです。ブリタニカで私は、「目標」から上の「計画」と「日々の実践」だけに執着していました。私には、その土台となる理念やビジョンが抜け落ちていたのです。目標を達成さえすれば、それが勝利である、と。勝利することだけに、生きていました。

しかし、このキリスト教の大会で、「自分を愛するように、あなたの隣人を愛せよ」という聖書の御言葉を知り、私は変わりました。「何事でも人々からしてほしいと望むことは、他の人々にもそのようにしなさい」というマタイによる福音書7章12節の言葉。この「黄金律」が私の土台に入ったことで、私の人生観はこれまでと全く違うものになりました。29歳でブリタニカを辞め、夏目先生の会社に入りました。そして3年後、私は役員になっていました。この間、売上は7倍になりました。

その後、もっと自分なりの理想の人材教育があるのではないかと考え始めました。一般的にアフターフォローに時間をかけることよりも、売ることに力を入れてしまいがちですが、私には「人は人によって磨かれる」という考え方があり、行動が変わるところまでケアしなければならないと思っていました。だから、信念を持って研修を続けたかったのです。私はその信念を貫きたいと思い、32歳のときに代理店として独立させてもらうことになりました。営業教育に強みを持つ会社、有限会社TBRアチーブメントトレーニングセンター(現・アチーブメント)としてスタートしました。

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