HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

株式会社クリーク・アンド・リバー社 代表取締役社長

井川 幸広さん

唯一無二の「クリエイター・エージェンシー」として事業を拡大
ドキュメンタリー番組も、事業も、必要なのは「勇気・希望・愛・感動」

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株式会社クリーク・アンド・リバー社 代表取締役社長 井川 幸広さん

映像、ゲーム、インターネット、広告・出版などのクリエイティブ領域で活躍するクリエイターとクライアント企業をつなぐ、世界的にも珍しい「クリエイター・エージェンシー」として業界に確固たる地位を築いている、株式会社クリーク・アンド・リバー社。現在では、その事業領域を医療、法律、会計、建築、ファッション、研究、食などにも拡大し、17万人を超える「プロフェッショナル」をパートナーとするユニークな存在へと進化を続けています。クリーク・アンド・リバー社を創業したのが、代表取締役社長を務める井川幸広さん。もともとテレビのドキュメンタリー番組などのフリーランスディレクターとして活躍していましたが、ある時、「クリエイターがその能力をもっと発揮するには、ビジネス的な支援が不可欠だ」と考え、自らは裏方に回ることを決意。同社を立ち上げたと言います。かつてなかった新ビジネスが生み出された背景、2016年に東証一部上場を実現した成長の秘密、さらには現在注力している新分野や今後のビジョンなどについて、井川社長の熱い思いを語っていただきました。

プロフィール

井川 幸広(いかわ・ゆきひろ)●1960年、佐賀県生まれ。毎日映画社に入社後、23歳のときにフリーのテレビディレクターとして独立。フリーランス時代に得た経験から、クリエイターとしての自己実現よりも社会に役立つ事業を起こすことを考え、クリエイターをバックアップするための事業を立ち上げようと決意。1990年にクリーク・アンド・リバー社を設立した。当初は7名の映画監督、テレビディレクターのネットワークからスタートし、今ではキー局で放送されているテレビ番組の約45%に同社のディレクターが関わるまでに事業が成長。プロフェッショナルを支援するグループ会社を次々と設立している。

フリーランスの経験から発想した、まったく新しいクリエイター支援ビジネス

―― 御社を創業されたのが1990年。当時クリエイターを取り巻く環境は、どのようなものだったのでしょうか。

テレビ番組制作の業界は、もともとフリーランスの人が多い世界です。私自身もフリーのディレクターでしたので、組織には所属せず、自分で企画書を書いて仕事を受注していました。一般的にテレビ番組や映画の撮影は集中的に行うので、どうしても過酷なスケジュールになります。また、同じ時期に何本も重なることもあります。しかしフリーの場合、そこで断っていては次がありませんので、仕事をどんどん受けて、その結果として体をこわす人もけっこういましたね。

そんなある時、日米合作のドキュメンタリー番組を手がける機会がありました。アメリカ側のスタッフは全員クリエイターのユニオン(組合)に入っているので、最低時給、一日の労働時間、休日などがきちんと決まっていました。どんなにタイトな日程でも時間になったら切り上げますし、週に一日はしっかり休むわけです。これは衝撃的でしたね。日本にも日本映画監督協会などいろいろな団体がありましたが、そのようなルールを課したら仕事がどんどんなくなっていくのが現実でしたから。

その時に思ったのが、「個人で交渉するのではなく、ちゃんとした組織をつくって、そこに営業をまかせることができれば、みんな安心して仕事に専念できるのでは?」ということでした。フリーの場合、自分が現場に入っている間は、新規の営業がなかなかできません。どうしても一本終わってから、次を探すようになる。それでは安定しないし、そもそも「仕事をとる力」とクリエイターとして「良い作品をつくる力」はまったく違う分野の能力です。日本には世界的に評価されるフリーのテレビディレクターがあまりいないのですが、その背景には「まず仕事をとってくる」ところから始めなくてはならない、という環境の問題もあったと思いますね。

―― それが現在のクリーク・アンド・リバー社につながるヒントになったのでしょうか。

株式会社クリーク・アンド・リバー社 代表取締役社長 井川 幸広さん インタビュー photo

クリエイターが良い作品をつくるためには、まず仕事があることが大切です。私には信頼できる助監督が三人いたので、現場と営業のバランスをとりながら、うまく仕事をコントロールできていました。でも、業界全体を見るとそれができていない人の方が多かった。そこで、まずはクリエイターとクライアントをつないで、仕事を供給していく「クリエイター・エージェンシー」というビジネスをスタートさせたわけです。

クリエイターは仕事が安定してくると本来の能力を発揮できますから、クライアント側にとってもメリットになります。良い作品を創るクリエイターは、スケジュールや条件面の交渉でも有利だし、さらに新規の仕事にもつながっていく。いいことばかりです。まずそこから出発して、一人ひとりのやりたい仕事やチャレンジングな仕事を提供することでクリエイターの成長を促したり、個性の強いクリエイターとクライアントの間のインターフェースとなってプロジェクトをまとめたり、と会社の役割もどんどん広がっていきました。

―― 会社を立ち上げて軌道に乗るまでには苦労されたこともあったのでしょうか。

もともとフリーランス、個人事業主としてやっていましたから、会社もその延長線上のイメージでした。人と人のネットワークを作って付加価値を生み出していくという意味では、フリーランスのディレクター時代に手がけていた「ヒューマン・ドキュメンタリー」を、今度はビジネスというフレームワークの中で創っていくという感覚。大上段に構えて会社を立ち上げて、という気負いはあまりなかったですね。

ただ、大きく違っていたのは資金繰り。フリーの場合、番組の制作費はクライアント負担ですが、自分の会社ではそうはいきません。受注して仕事が入れば入るほど、まず資金が出ていきます。それをどう回していくか。また、テレビではスタッフを集めて、一つの番組が終わったら「はい解散」ですが、会社は永続的なものですから、就業規則や賃金制度なども必要です。逆に言えば、大きな違いはこの二点くらいだったかもしれません。


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