「人と組織のソリューション」を提供することで、
個人と組織が相乗的に価値を高め合っている社会の実現を目指す

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

奥本英宏さん

日本企業の現地化に貢献する「グローバル対応」と四つのテーマを置いた「研修サービス」

「グローバル化への対応」については、海外で次々に拠点を設立し、Webサイトでも「グローバルサービス」のコーナーを設置するなど、力を入れられていますね。「グローバル」事業に力を入れる理由や「グローバル」における「人・組織」のトレンドについてお感じになっていることをお聞かせください。

現在、日系企業の海外進出が非常に加速しています。生産拠点が海外に出ていくという段階から、東南アジアを中心にそれらの国々をマーケットと見て、経営戦略からマーケティング、営業、生産、アフターメンテナンスに至るまで、全てのバリューチェーンを事業として現地で行うという段階に進んでいます。今まさに、経営の現地化という段階に入ってきたのです。経営の現地化とは、ローカルのマネジメント、リーダーの現地化を意味しており、現地マネジャー・リーダーの育成が喫緊の課題となっています。

そうなると、我々の出番です。現地の管理職の育成、選抜、評価に関して、日本企業の現地化に貢献していこうと、グローバル展開を図っています。2013年にシンガポールに支店を設置し、今年2014年には上海に拠点を設立するなど、海外への進出はここ3~4年の大きな動きです。

先日、上海でマネジメント研修を行いました。タイ人やシンガポール人、中国人のマネジャーが参加していたのですが、「権限委譲は難しい」といったことを、皆が同じように口にしているのです。そんな様子を見ていると、どこの国でもマネジメントの本質は変わらないことを強く感じます。

我々は個人と組織が生きることをミッションに掲げており、日本企業の強みはチームワークや組織力にあります。チームワークや組織力に関するコンテンツがマネジメント研修などに多く含まれており、現地でも「組織力が大事だ」と皆が言ってくれます。当社のビジョンが、外国人にも強く響くように感じます。これから日本企業が現地での競争力を高めていく上で、日本的なマネジメントが一つの解としてあると思っています。日本企業のプレゼンスの向上とともに、日本的なマネジメント・経営が受け入れられ始めているのではないでしょうか。

 グローバル化について課題と感じていることは何ですか。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 奥本英宏さん インタビュー photo

グローバル化については手探りなところがあります。我々が持っている商品やサービスを現地でそのまま適用しているわけではありません。中国であれば、中国のマネジメントに合うように調整して提供します。その際、仮説を立てて検証することを繰り返し行います。手間暇がかかり、大変な作業ですが、メリットもあります。シンガポールで作った研修のスタイルを日本で実施すると、良い効果が得られたことがあります。現地でブラッシュアップされたコンセプトやツールを日本に持ち帰ってくる、さらにそれを日本企業にも提供できるといった動きが、徐々に起こり始めたところです。ユニバーサルなサービスが構築される可能性を秘めており、日本のメソッドを、グローバルに展開していける機会になると思っています。

現在、貴社で力を入れている「研修サービス」はどのような内容ですか。

今、四つのテーマを設定しています。一つ目は「個人のキャリア」に関わること。二つ目は「オーガニゼーション・トランディション」。企業の事業の成長ステージに従って、人・組織の課題が現れます。それらの課題に対して早めにお客様と一緒に取り組んで解決することで、企業の事業成長をよりスムーズにしていきたい。三つ目は「リーダーシップ開発」。次世代リーダーと言われる経営人材の育成や、グローバルリーダーの育成、イノベーションをけん引するリーダーのリーダーシップ開発です。四つ目は「顧客接点における営業革新」です。

一つ目の「個人のキャリア」について言えば、今後、雇用の流動化が構造的に進む中で、キャリアの軸を持てない個人は周囲の環境に踊らされ、しっかりとした職務経験やスキルを身に付けられないままに転職を繰り返す可能性があります。逆に言えば、企業におけるマネジャーが個人のキャリアを含めてマネージしないと、働く人がすぐに辞めてしまいます。パフォーマンスや成績を上げることだけではない意味合いが出てくるわけで、その点からもこれからの時代に合った新しいマネジメントの体系を作らなくてはなりません。

二つ目の「オーガニゼーション・トランディション」。例えば、ベンチャー企業が非常に良いアイデアを持っていても経営やマネジメントがうまくいかずに世に出ていかないとか、途中のフェーズで終わってしまうことがあります。またはカリスマ的なリーダーが率いて会社が大きくなったけれど、組織の体系、マネジメントの仕組み、またはそれを担えるマネジャーの育成がうまくいかないために、さらなる発展に苦しむケースがあります。そこを突破できるような支援をするのが、オーガニゼーション・トランディションの試みです。

三つ目の「リーダーシップ開発」ですが、特に現在は新たな成長分野・領域を見出すために、イノベーションを起こすリーダーシップの開発が大きなテーマとなっています。

そして四つ目の「顧客接点における営業革新」は、営業スタイルが変化してきたことへの対応です。お客様に対する課題解決力を高めることが、非常に重要となっているからです。

今後、産業構造がサービス産業へとシフトしていく中、あと10~20年の間に数百万人が製造業からサービスや情報産業へと移るという予測が出ています。ただ、サービス産業は低習熟、低熟練になりやすい傾向があり、さらに人の定着もあまり良くありません。サービス産業で働く人たちに対しては、「現場で一緒に働く仲間が好き」「その組織に所属していることが楽しい」というように思ってもらうことが必要。「組織依存型」でモチベーションを高めなくてはならないのです。そうすると、マネジャーは業務オペレーションを着実に行うだけでは務まりません。メンバーに対する働きかけ、組織における知識の共有、改善のためのアイデアを引っ張り出す力など、組織に働きかけて全体の活力を高めていくマネジメントがとても大事になると思います。

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