月間分析レポート[2025年5月]

2025年4月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「気象病」「WBGT値」「介護離職」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

気象病

「気象病」とは、気象の変化によって、頭痛や肩こり、だるさといった症状が出現する疾患などの総称です。正式な病名ではありませんが、特に梅雨時や台風シーズンなど気象の変動が激しい時期に症状を訴える人が増える傾向にあります。

「気象病」は、5月中にコンスタントに検索されました。5月中旬以降、気象庁から九州南部や沖縄の梅雨入りが発表されるなど、気象の変化が大きくなり始める時期であり、体調不良を感じる人が増えたためと考えられます。

気象病の主な原因は、気圧の変化を感知する内耳にあるとされています。気圧の変化を感じた内耳が脳に指令を出し、自律神経に影響を及ぼしているのです。対策としては、適度な運動、規則正しい生活とバランスの取れた食事、十分な睡眠など、自律神経のバランスを整えることが重要です。また、耳の血行を促進するマッサージも有効です。

サジェストワードでは、「気象病 症状」が検索されました。気象病の代表的な症状としては、頭痛、めまい、倦怠感、関節痛、古傷の痛み、気分の落ち込みなどが挙げられます。人によって症状の現れ方はさまざまです。日本人の約1000万人が気象病であるという推計もあり、企業においてもリモートワークの活用や休暇取得のしやすい環境づくりなど、気象病による不調を感じる従業員への配慮が求められつつあります。

このほかには「気象病 対策」「気象病 薬」が検索されました。気象病の対策としては、生活習慣の見直しに加え、日記などで体調と天候の変化を記録し、自身のパターンを把握することも有効と考えられています。

市販薬では、頭痛があれば鎮痛剤、めまいや吐き気に対しては酔い止め薬が用いられることがあります。また、体質改善や自律神経の調整を目的として漢方薬が処方されることもあります。ただし、薬の使用については自己判断せず、医師や薬剤師に相談しましょう。

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WBGT値

「WBGT値」(WBGT=Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)とは、熱中症のリスクがある「暑熱環境」による熱ストレスを評価する指標のことで、一般に「暑さ指数」と呼ばれます。熱中症の予防を目的として、1954年に米国で提案されました。単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目し、人体の熱収支への影響が大きい気温、湿度、日射・輻射熱(ふくしゃねつ)などを加味して算出されるのが「WBGT値」です。

全国210地点で真夏日を記録した5月20日に検索数が急増し、その後もコンスタントに検索されました。気温の上昇とともに熱中症への関心が高まったことに加えて、2025年6月から改正労働安全衛生規則が施行され、事業者の熱中症対策が義務化されたことも背景にあると考えられます。

同改正では、熱中症を生ずる恐れのある作業(WBGT値が28度以上、または気温31度以上の環境下で連続1時間以上、もしくは1日4時間を超える作業が見込まれる)を行うときは、熱中症の自覚症状やその恐れがある人を見つけた場合の報告体制の整備と周知、熱中症の症状の悪化防止のための準備と周知が義務付けられました。対策を怠った場合は、6ヵ月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金が科されます。

サジェストワードでは、「WBGT値 基準値」が検索されました。WBGT値はISOなどで国際的に規格化されています。環境省や厚生労働省は、「日常生活」「運動」「作業者」それぞれに応じた指針と基準値を示しています。例えば、「日常生活に関する指針」では、WBGT値が28度以上で「厳重警戒」、31度以上で「危険」とされ、外出を控えるなどの対策が推奨されています。

作業場所のWBGT値の実測は、JIS規格に適合した測定器を設置して、作業中の変動を測定評価することが望ましいとされています。特に直射日光下や高温多湿、通気性の悪い場所ではWBGT値が上昇しやすいため、基準値を超過する場合は作業内容や場所、時間の変更、WBGT値を低減させる工夫など、管理者による熱中症予防対策が求められます。なお、専用の測定器がない場合でも、環境省の熱中症予防情報サイトでWBGT値の予測値や気象観測の最新観測データである実況値を確認できます。

また、「wbtg値 計算」「wbtg値 測定器」が検索されました。WBGT値は、屋外では「0.7×湿球温度 + 0.2×黒球温度 + 0.1×乾球温度」、屋内では「0.7×湿球温度+0.3×黒球温度」という計算式で算出されます。

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介護離職

「介護離職」とは、家族の介護を理由に仕事を辞めることを指します。団塊世代の高齢化などで親の介護に直面する子世代のビジネスパーソンが急増する中、介護離職を企業の深刻な経営リスクと捉え、支援制度の整備や職場環境の改善に乗り出す動きが広がっています。

「介護離職」に関して、明確な検索数のピークは見られませんでしたが、4月下旬に東京商工リサーチが介護離職に関する調査結果を発表しており、関心が高まったと考えられます。この調査によると、介護離職が発生した企業のうち、介護休業や休暇制度を利用せずに離職した人の割合が54.7%に上ることが明らかになりました。特に中小企業では、制度の認知や利用が進んでいない実態が浮き彫りになっています。

2025年4月に育児・介護休業法が改正・施行され、企業には従業員が介護に直面する前の段階からの情報提供や、個別の意向確認、相談窓口の設置などが義務付けられました。テレワーク導入といった柔軟な働き方への努力義務も盛り込まれ、介護と仕事の両立支援の強化が図られています。

サジェストワードでは、「介護離職 失業保険」が検索されました。介護離職は「正当な理由のある自己都合による離職」、つまり「特定理由離職者」として扱われる場合があり、その場合、一般の自己都合退職よりも給付制限期間が短縮されたり、給付日数が手厚くなったりする可能性があります。具体的な手続きや条件はハローワークで相談してください。

このほかには、「介護離職 統計」が検索されました。介護離職の現状は、厚生労働省の「雇用動向調査」や、総務省の「就業構造基本調査」などで知ることができます。2022年の就業構造基本調査によると、10.6万人が介護・看護を理由に離職しています。

また、「介護離職 経済損失」が検索されました。少子高齢化の進行に伴い、仕事をしながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」が増加傾向にあります。経産省の試算などによると、2030年には318万人となり、経済損失は約9.2兆円にのぼると試算されています。

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